コミュニケーション
#18 共感性の高い主催イベントのコツ―ファンドレイジング・コンサルタントへの道
開催する様々なイベントには、社会の課題を知らせる(シンポジウムなど)、課題解決に取り組む自団体への理解を深める(活動報告会など)、関係者間の交流(会員の集いなど)、とにかく資金調達(チャリティパーティなど)などの目的があり、またこれらを「混在」させて開催する場合もある。開催目的の達成を目指して実施することはもちろんだが、極めて言えばイベントを実施する最大の目的、それは「支援者の拡大」。今まで何らかの接点を持つ人々に対して「団体の取り組む社会の課題に共感してもらい、課題解決に取組む活動を支援してもらう」あるいは「これまで以上に支援してもらう」ための場としてのイベントは位置付けられる。その視点で、捉えた場合に「支援者拡大」に繋がるイベント演出を解説したい。
イベント参加を支援に繋げる演出・5つのポイント
- 参加者の個人情報の獲得
- 会場内で「すぐに支援ができる」機会を設置
- 会場で顔と顔が見えるコミュニケーション
- イベント後のフォローを予め計画する
- イベントの報告方法にも一工夫を
1.参加者の個人情報の獲得
既存支援者の履歴が増し、新規の参加者とは新たな接点となるのがイベント。直接的な接点を持った人との関係性構築を深めていく機会となる。特に新規の参加者は支援者への第一歩を踏み出してくれた、貴重な「支援者予備軍」。
さらに関係性を深めるために不可欠なものは何か?
それは「データベース」。
彼らの情報をきちんとデータベースに入力しておくことが、今後のコミュニケーションに必須となる。事前申し込みや会場アンケートで、参加者属性(氏名、所属、連絡先、住所、電話番号、参加動機など)のほかにイベント認知ルートなどをいれておくと、次回からどこへ告知を流していけばよいかの判断がつく。なお、個人情報の取り扱いには注意する。
2.会場内で「すぐに支援ができる」機会を設置
主催者の挨拶で「ご支援よろしくお願いいたします」と申し上げても、どのように支援すればよいかが示されていないと、参加者は何も参加できない。例え「良いイベントだったなぁ」と感じていても、会場を出て、翌日ともなれば「面倒くさく、忘れてしまう」ことも。そこで気持ちが高まって、応援したいと気持ちが盛り上がったところを逃さず、すぐに支援に参加できる機会や方法を用意していくことも有効だ。
- 会場内に設置する「寄付受付」「入会受付」「会費納入(継続)」「マンスリーサポーター受付」「寄付付き商品販売」「クラウドファンディング受付」「当日ボランティア受付」「もったいない寄付受付」「チャリティオークション参加」「ボランティアツアー予約」「ボランティアデー案内」
※いろいろ窓口があることで「するか・しないか」が「どれをするか」の選択に変わる(少なくともこれだけは行う)。
3.会場で顔と顔が見えるコミュニケーション
3-1.顔見知りが互いに増える取り組み
- イベント開催当日は、スタッフ全員が役割分担でてんてこ舞いだが、せっかくの機会、参加者とのコミュニケーションを大切にして「顔と顔の見える関係」を創り出そう。
- 開始前や終了後に声をかける
- イベント用の名刺を参加者も含めて作り、名刺交換する
- アイスブレイクやバズセッションでは、スタッフも加わる
3-2.多忙なスタッフがそれを実現できる秘訣は、ほかの人の協力を得ること。
- こういうときこそ、理事に協力してもらう
- 会場運営はできるだけボランティアに任せる
3-3.参加者に「参加感」を抱いてもらう。
- 「お客様」ではなく「仲間」だと感じてもらえる機会をつくり、参加者の気分を高める
- 発言のチャンスを用意する
- 「今日はどちらからいらっしゃいましたか?」と地名ごとに手を挙げてもらう
- あえてみんなに協力してもらって、机の整備や整頓を行う
3-4.データベースを活用してみんな同じでない感謝のメッセージを
- 会員や寄付者に「いつもありがとうございます」のほかに一言を添えるため、事前に参加者名簿をもとにデータベースを活用して、支援実績に応じた対応をすることで、感謝の念を表すとともに、団体との関係がステイタス感につながることを実感できる。例えば、高額寄付者にはプレミアムシートへご案内、一定の寄付者にはアンバサダーとして記念撮影
- 参加者の優先顧客をスタッフ内で情報共有しておく
- 会員や寄付者は前列の方に席を用意する
- 参加者の誕生日などをみんなの前で祝う
- 最も遠くから来られるお客様へ「乾杯の発声」をお願いするなど、登場の場面をつくる。
4.イベント後のフォローを予め計画する
イベントでは、告知、集客、そして当日の運営の大きな労力が割かれてしまい、どうしても「イベント後」が手薄になりがち。しかしながら、参加者へのお礼や報告といった終了後のコミュニケーションが「次のステップ」へと導く。漏れないようにする秘訣は、イベントの工程表でフォローアップも計画すること。また、記録写真は思い出とともにSNSなどで拡散するのでぜひ活用を。
- 出席者へのお礼メール(翌日)
- ボランティアへのお礼メール(翌日)
- イベント報告のウェブへの掲載(1週間以内)
- スポンサーへのお礼(簡単なお礼を翌日に)
- スポンサーへの開催概要の報告をともなう協賛報告(2週間以内)
- 高額なスポンサーへの事務局長のお礼訪問
5.イベントの報告方法にも一工夫を
イベント集客や協賛獲得のため開催予告のウェブサイトを熱心に作りこむが、半面、終了後の報告がおろそかになりがち。単に「終了しました」だけでなく、いかに「良いイベントであったか」をアピールすることが、このイベントを、この団体を「応援してきてよかった」につながるために大切。そこで忘れてはならないのが「感謝の意」。自画自賛が「おかげさまで・・・」に変わる。イベントは可視化しやすいものなので、既存の支援者にとっても「がんばって良い仕事をしている」という評価につながる。また、次回予告はできる限り掲載したい。
報告がもたらせるもの
- 参加した人は、あらためていいイベントだったと満足して、次には「寄付の一つもしてみよう」と思ってくれる可能性も。団体サイトではどのページからも寄付ページへすぐ飛べるようにしておこう。
- 参加しなかった人は、「次回こそは・・」と思って、開催情報を得るためにメルマガ登録してくれる可能性も。メルマガ登録画面もわかりやすく。
- スポンサーなら、やってよかったと思っているうちに、次の話をもっていくと、また次回も応援したいと思ってくれる。
今回は団体で主催する場合を中心に解説したが、次回には、他団体の主催イベントに出展参加する場合について解説する。
ファンドレイジング・コンサルタントへの道
▷ #25 個別支援と動機づけ
▷ #24 ビジョンへ向かうアクションプラン
▷ #23 ソーシャルセクターの支援者発見と組織状態の確認
▷ #22 ソーシャルセクターの組織と役割
▷ #21 ソーシャルセクターの経営と役割
▷ #20 効果の高い事業紹介のコツ
▷ #19 効果的なイベント出展のコツ
▷ #18 共感性の高い主催イベントのコツ
▷ #17 イベント協賛のアプローチをする
▷ #16 ファンドレイジング・イベントを企画する
▷ #15 計画の進捗を管理する
▷ #14 事業計画をたてる
▷ #13 現状確認と課題解決
▷ #12 ゲームの活用
▷ #11 効果的な研修手法について2
▷ #10 効果的な研修手法について
▷ #09 研修の組み立て方
▷ #08 寄付のハードルを下げる「寄付付き商品」の活用
▷ #07 ベストプラクティクスを研究して、提案の引き出しを増やす
▷ #06 ヒアリングを通じて、前向きな機運を醸成する秘訣
▷ #05 ヒアリングの技術を磨く
▷ #04 話す前に~120%の準備で70%のチカラを発揮する
▷ #03 周囲を引き寄せていくための話し方
▷ #02 コンサルタントに必要な技能
▷ #01 コンサルタントの役割