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IMPACT LAB

インパクトラボ

#02 コンサルタントに必要な技能―ファンドレイジング・コンサルタントへの道

2020年が始まった頃には、誰しもがこんなことになると想像していなかったことだろう。

年の始まりに際して、本稿で拙文がこんな締めくくりになっている。

「新しい2020の幕開けを迎えたのである。世界中が日本に注目するこの年に、挨拶するところから始めていけばよいのではないだろうか。あなたと、あなたの組織団体にとって、本年が飛躍の年となることを祈念して、この拙文をお届けしたい」
「支援者への挨拶から始めよう」2020年からぜひとも実施したい取り組み

2020年は東京五輪が開催され、世界中が日本に注目する記念すべき年となるべくエールを贈っていたのだが、コロナ禍で世界のすべてが一変してしまった。不確実性の時代と言われ、想定外の事がどんどん引き起こされていくことを、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取ったVUCA(ブーカ)として、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われていたりする。

一言でいうと「予測不能な状態」。まさに2020年は世界中がこれらに直面した。

(参考) BizHint用語解説「VUCA」

こうした時代を乗り越えていくための処方箋や定型的な正解を求めることは難しい。むしろ、まず取り組んでみて試して傾向を見つめて、刻々と変化する中で何が最善かを見つめ直して、少しずつ対応のレベルを高めていくことしかないように思える。時には思い切って引いてみたり、停めてみたり、あと送りしてみたりも組み合わせて柔軟に対応を図っていく。これらは災害対応や危機管理の要諦でもあるように思う。

しかしながら、そうした時の胆力というか、落ち着いて見通す力というのは、普段からの蓄積の上に磨かれていくものであり、これこそが、自団体に無いものだからこそ「わざわざお願いしてでも」ファンドレイジングのコンサルタントに求めたい事柄でもある。

理解者・実践者・事業推進者・援助者

ファンドレイジング・コンサルタントの能力として必要なことはまず、NPO・公益法人・学校などのファンドレイジングについて、特に原理と方法に充分な知識と理解を有し、また技能・技法についての実践実力を持ち、経験豊かな事業推進者であることが重要である。理屈だけでなく実践を重ねた上で発する言動には重みが違って受け止められる。

このことは、事業者の立場を理解するという観点と、ファンドレイジングの正しい展開を原理原則に沿って適用でき、そして事業に関わる者たちの任務遂行能力を向上させ、成果を効果測定するための援助を行うという観点の双方の面からも役立つ。また正しい知識と経験は、共通の用語で指導することができるのでコミュニケーションをより容易にさせていくことにも役立つ

次にあげられるのは人間関係技能だ。これは相手の人間性、背後にある動機づけ、置かれている環境状況、行動、興味、成人の学習について理解、および個人向上のニーズと資源を明確にすることなどが含まれる。さらには、人とうまく会話をして問題点や課題を浮き彫りにしたり、インタビューを通じてよき聴き手となって興味の分野や気づきのきっかけを与え、助言を与えて解決策へ援助する役割を果たすために大切なことである。

続いてあげるとすれば、企画技能がある。

これはファンドレイジングにつながる事業、働きかけのための集会、しかけやしくみからみんなが腑に落ちるストーリー構成などあらゆる活動を企画したり組織化したりする能力だ。ここには目標を設定して、当日の時間割だけでなくそれに向けて途中の中間点を設定して、準備と水準を保ち、計画通りに活動を順調に進行させる能力も含まれる。

実際の場面では、参加者の認識向上のための研修プログラムを提供するのであれば、指導のための具体策としてセッションの目的を達成するために「研修」を組み立て、効果的な学習のプロセスを企画し、ひとつのセッションとして構成する短期的なものと、長期的な視点で能力向上を図るための訓練計画を企画するものとがある。またこれには、実施に当たっての資料・用具などの準備物を開発する能力も含まれる。

同様に効果的なキャンペーンを成功させるためには、準備段階では実行段階で引き起こされる様々な局面を全て想定して、経路別に紐解き、用具の面でも仕組みの面でも用意を進めると共に、要員についても習熟するためのQ&A作成やリハーサルを重ねることになる。

このように企画技能とは何もないところで全く新しい創造するのではなく、できる限り状況・条件を取り揃えて、それにふさわしい手法を選択するために、いくつも手元に備えてある先行事例等から、必要に応じて組み合わせて提示していく。「引き出しの中から生み出す」と言われる所以である。

そして、それらを実践する活用技能は、企画した事柄をさまざまな手法や用具などの資源を駆使して効果的に活用して、実際にやり遂げていくことだ。実は最も大切な能力とも言え、遂行に当たって他の人々を巻き込むことを始め、適正な役割分担で効果的・効率的にチームワークを発揮していくことも含まれている。実施の場面では、計画・想定したことは異なる局面を迎えることもしばしばあり、その場合に目的・狙いに立ち返り、正しい方向へ向かうように判断して、柔軟に運用を変化させていくことも含まれる。

コンサルタントの資質はこれらの技能の習熟度にもよるが、技能のいずれか、或いは各技能のどの分野に力点をおくかは、取り組みする事案の内容によって異なる。いずれの場合も全て、自己完結するのではなく、相手があって初めて効果が確認できるので、自らが発したことで変化を生み出したかを相手の反応を手がかりにして確かめることが何よりも必要であり、その結果、自らの資質を伸ばすように取り組んでいく。

ファンドレイジング・コンサルタントとしての養成項目

「養成項目」4つの大項目

  • 理解
    • 根本原理の解釈、社会と個人のニーズ、地域社会との連携、ファンドレイザーの養成制度、コミュニケーションの原理、学習の原理
  • 人間関係技能
    • 学習経験を作り上げる、経験を分かち合う、グループダイナミックス
    • カウンセリング、スタッフの選抜と利用
  • 企画技能
    • 事業を計画する、分析する、支援する
  • 活用技能
    • 研修技法、人的、物的資源を獲得して利用すること、研修を評価する

1.理解

1-1.根本原理の解釈

  • ファンドレイジングの目的:社会で建設的なつとめを果たすために、事業的、組織的、財源的な成長
  • 潜在力と市場動向の把握×実現したい状態、目指す姿×ポジショニング
  • 中期計画として戦略化×事業・財源・組織の成長を促す
  • ファンドレイジングアクション:事業収入、寄付、会費、助成金、融資等
  • インパクト評価

1-2.社会と個人のニーズ

  • 法人と個人の寄付動向
  • ニーズと、それらはファンドレイジングを通じてどのように満たされるか
  • 支える法制度や社会的な支援
  • 国内および国際的な他団体の動向

1-3.地域社会との連携

  • 地域社会、自治体、他団体との連携
  • 地域社会におけるファンドレイジングの役割と責任 ―目的の達成(社会における建設的役割)

1-4.ファンドレイジングアクションの構成

  • 共感を獲得・拡大するための手法
  • 支援者をステップアップさせる導線
  • 周囲を巻き込むためのツール
  • プログラムを遂行するために必要な人的、物的資源の活用

1-5.ファンドレイザーの養成制度

  • 認定ファンドレイザー制度
  • ファンドレイジングスクール
  • その他の研修システムや機関

1-6.コミュニケーションの原理

  • 成人に適用される、特にファンドレイジングの場で適応されるコミュニケーションの原理
  • 概念、知識、価値、心構え、基準についてのコミュニケーション

1-7.学習の原理

  • 動機づけの重要性
  • 自己研鑽の重要性

2.人間関係技能

2-1.学習経験を作り上げる

  • 効果的な学習に影響する要因
  • 成人個々のニーズを満たす学習方法を採用すること
  • 研修コースにおけるトレーナーと参加者との関係
  • 参加者ニーズを確認して分析する
  • 様々な学習スタイルを確認する

2-2.経験を分かち合う

  • いろいろな事業計画と展開方法
  • 課題解決に役立つ事例
  • 異なる状況下についての認識

2-3.グループダイナミックス

  • 学習経験としてのグループワーク
  • グループの一員としての人々の相互作用
  • グループでの任務遂行による効果

2-4.カウンセリング

  • 成人をカウンセリングする
  • 成人が自分自身の問題解決を図れるように動議づける
  • この役割を果たすために必要な技能を開発する

2-5.スタッフの選抜と利用

  • スタッフのメンバーを選任する
  • スタッフに必要な技能および素質を確認する
  • メンバーの資源(技能・素質・経験・装備・時間)を認識して活用する
  • メンバーに役務分担して、必要に応じて指導助言を与える
  • スタッフグループに対する指導能力

3.企画技能

3-1.事業を計画する

・ファンドレイジングアクションの効果的な活用方法
・効果的な手法の組み立て方

3-2.分析する

・事業担当者の役割と責任、および実施内容についての分析
・分析結果から関りのある人々が任務に必要とする能力と心構えを得るためのニーズを認識する

3-3.研修を開発し、修正する

・研修の基本構成(セッションの目標、ねらい、内容、方法、プログラム評価)
・特定の研修における参加者のニーズを認識する
・担当セッションの学習目標を明確にする
・学習目標に合致した適切な研修方法を選択する
・研修セッションを立案し、講述要項を準備する
・研修に必要な資源を獲得する
・運営に必要な人的・物的資源の活用を考える
・評価によって学習内容を修正する

3-4.評価する

・事業者の集会、イベントを訪問して、それらの達成度を評価する
・事業担当者が彼らのファンドレイジング活動の効果を確認し、評価する

3-5.支援する

・カウンセリングを彼らの個人的役割に関連して行う
・彼らの任務に適した教育の支援を行う
・彼らがファンドレイジングを向上させる助けとなる人的・物的資源を確認する
・彼らがプログラムを遂行する際に伴走支援する
・運営のサイクル(立案する、組織する、指導する、監督する)のすべてで支援する

4.活用技能

4-1.伝達・指導・研修技法

  • 研修方法、例えば、アイスブレイク、話、ブレーンストーミング、ケーススタディ、ロールプレイなど
  • 研修用具、例えばスライド、チャート、ハンドアウト、動画など
  • これらの研修方法と研修用具の使用
  • 限られた能力、経験、資源、時間内で最大限の効果で活動すること
  • 参加者へ奨励する自己研修

4-2.人的、物的資源を獲得して利用すること

  • 参加者自身が先頭に立って率先できるようになり、グループ内で指導力を発揮するように動議づける
  • グループの有する資源を知り、活用できるようになること
  • 役立つ内外の資源を認識する
  • これらの資源を上手に利用する
  • 事業遂行のために必要な資源を開発する

4-3.研修を評価する

  • 学習目標に応じた研修セッションの評価
  • 参加者とスタッフが研修コース中にニーズを再査定する機会を提供し、新しく確認されたニーズに対応すること
  • 学習の監督者として取り組む
  • 目標達成において彼ら自身がどの程度成功したかを見るために、参加者やスタッフなどにあった適切な評価の方法を選択する
  • これらの評価によって研修、内容、方法を修正する

最後に、有名なエピソードで締めくくりたい。

中東での昔話。ある王族が17頭のラクダを3人の息子に相続させたが、遺言で長男に1/2、次男に1/3、三男に1/9とわけることになっていたが、17頭は2でも3でも割れない。兄弟はけんかをして、ラクダを切り分ける話にまでなった。そこで、村の賢者といわれる年長者のところへ相談に行った。

年長者は、私はなんの助けにならないかもしれないが、私の持っているラクダを1頭を渡そうと言ってくれた。

17+1=18頭になったラクダは、1/2→9頭を長男に、1/3→6頭を次男に、1/9→2頭を三男に訳て与えることができ、それで1頭余ったので、残り1頭を年長者へ返した。

不確実性の時代のなか、これからは、この1頭をみつけられる、その知恵が出せる人材が必要となってくる。


ファンドレイジング・コンサルタントへの道

▷ #03 周囲を引き寄せていくための話し方
▷ #02 コンサルタントに必要な技能
▷ #01 コンサルタントの役割

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