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インパクトラボ

#06 ヒアリングを通じて、前向きな機運を醸成する秘訣―ファンドレイジング・コンサルタントへの道

前回の本稿で、ヒアリングは「現在」「過去」「未来」の流れを整理して聞き取ることで、相手から話してもらえる環境を整えていくことだと紹介した。加えて、これは当社の特徴のひとつとしても挙げられるが、ヒアリングを通じて相手が取り組みたいことを輪郭づけ、前向きな気持ちにさせてしまうことまでもできる。単純に話を伺うだけでなく、話し合いの内容に相槌を打ってうなづくだけでもなく、さらにもう一歩踏み込んで、一緒に未来を創り出していこうといった前向きな機運を醸成することができるのである。この結果、ヒアリングで初めてお目にかかった方と意気投合して盛り上がり、それから別な案件でも連携して取り組みが始まったことは、実は一度や二度ではない。

参考) #05 ヒアリングの技術を磨く―ファンドレイジング・コンサルタントへの道

なぜそうなるかを見つめ直すと、私たち自身が「前向き」な姿勢を持っているとか、ニーズとぴったり合った話合い内容であるとか、相手を励ますスキルが高いといったこともあるかもしれないが、何よりも相手との間に「心が通じ合い」、相互に信頼がおける関係になっていることがベースだろうなと思っている。個人的にはどちらかと言えば「人見知り」するほうだが、自分の持っている有用性が相手から必要とされ、実際に役立つことはとても嬉しい事なので、内面的な部分を乗り越えて、親和性をもった関係構築へ繋がっているのだと思う。

ラポール状態を形成する

ある人と打ち解けた状態であったり、相手のことを信頼したり、一緒にいると楽しいと感じる時には、相手との間に「ラポール」が形成されている。「ラポール」とは、心理学の用語で、主にセラピストとクライエントの相互の信頼関係を表し、フランス語での「橋を架ける」という意味あいから「親密な関係」「信頼関係」などと訳され、心が通じ合い、互いに信頼しあい、相手を受け入れている状態にあることを指している。

カウンセリングをする上で重要なコミュニケーションスキルの1つだが、最近ではカウンセリングだけに留まらず、仕事、プライベートどちらの場合でもラポールを築いて、人間関係構築・改善のために用いられることがある。とりわけ、ビジネスシーンにおいては、ラポールが形成されていないとクライエントも心を開いて悩みを打ち明けられず、真の問題解決へ導くことができない。ビジネス、会社内、家庭内においても、ラポールを築くことで関係性が良好となる。もちろん、相手の方もあなたと同じように感じている必要がある。

ラポールを築くテクニック

ラポールを築くためのテクニックとしては、次の4つが有名である。

  1. ミラーリング
  2. ペーシング
  3. キャリブレーション
  4. バッグトラッキング

1. ミラーリング

ミラーリングとは、相手のしぐさや姿勢をあたかも鏡に映し出したかのようにそっくりしぐさを真似るテクニックを指す。例えば、ラポールを築きたい相手とカフェでコーヒーを飲み話している場合に、相手がコーヒーを飲みだしたら、こちらもコーヒーを飲むといったやり方だ。もともと人は集団において、無意識のうちに人と同じ行動をとってしまうことがあり、心理学ではこのような現象を「同調行動」と呼ぶ。同調行動は、まわりの動向を見たうえで自分の意見や行動を決めようとすることから生じてくる。集団の中では「みんなに好かれたい」「人と違うことをして嫌われたくない」という心理が働き「みんなと一緒の考え方や行動をとっていれば、間違えることはないだろう」と考えるからだ。忖度(そんたく)も、目上の人などをおもんばかって意識的または無意識的にその意図するところへあわせてしまっていると言える。

気の合う友人やカップルなどのしぐさを良く観察していると、自然とミラーリングが行われている。生活のパターンですら、とても良く似ている老夫婦がたくさんいるが、彼らはもともと似ている同士が結婚したのではなく、長年連れ添った結果、相互に似てきたと考えられる。

子どもの言い分を聞いて、言葉で「ミラーリング」することで、ちゃんと相手が話を聞いてくれていると安堵感を持つ。このような会話の場合には後述の通り「バックトラッキング(オウム返し)」という。

ミラーリングの留意点

相手と動きを合わせる動作を意図的にやることで、無意識的に相手とあなたが似た存在であると伝える方法であり、「相手を真似する」テクニックであるため、相手と「意識して」同調行動(真似をしていること)をとることがバレるとラポールを築くどころか不信感を抱かれてしまう場合があるので、注意が必要だ。

2. ペーシング

相手がゆっくり話す方ならこちらもゆっくりと話し、相手が早口ならばこちらも早口でといったように、相手の話し方やリズムを合わせるテクニック。ミラーリングは「相手のしぐさ」をマネしていることに対して、ペーシングは「相手の話し方」をマネする。人は呼吸のたびに肩や胸が動くことから、相手の肩や胸の動きに注目するとリズムを合わせやすくなる。

ペーシングの留意点

相手の話し方や呼吸のリズムを把握するためには観察だけでは不十分で、相手の話を良く聞くことが大切。人は潜在的には誰かと話することを好むので、相手からできる限り話してもらい、相手とリズムを合わせていく。相手の話す時間が長くなれば観察できる時間も増えるため、しっかりと聞きながら相手を観察でき、リズムを把握しやすくなる。自ら話しすぎてしまうとこれができなくなってしまう。話し方はしぐさと違って、目に見えづらくミラーリングより難易度が高いので、このテクニックも相手に不信感を抱かれないレベルで行う必要があり、慣れるまでは親しい人にだけ行って練習する。

3. キャリブレーション

相手の心理状態を、姿勢、呼吸、表情、声のトーンなど言葉以外のサインで認識するテクニック。例えば、相手がとても疲れている時、どんなに口では「大丈夫」と言っていても、声のトーンや顔色などから疲れていることが読み取れたりする。キャリブレーションとは、このような小さなサインを読み取り、その人に「顔色がなんか悪いよ」「心配事があるんじゃないの」と伝えること。口に出さないのに、僅かな変化から相手の気持ちを汲み取ってくれることで、相手は関心を持ってくれていると実感して、信頼感を持ちやすくなる。

キャリブレーションの留意点

相手が風邪を引いているなど大きな変化の場合を除いて、多くの心理状態は外からそれほど詳しくわかるものではないので、キャリブレーションには自ずと限界がある。一度面識のある人であれば、前回会った時との比較で何かヒントが見つかるかもしれないと、相手をよく観察することができるが、見知らぬ人、初対面の人には使えない事が多い。いきなり相手の気持ちを読み取るというのは高度な技で難しいため、ある程度の訓練が必要だ。また、気持ちを悟られたくないと思っている人に対して必要以上に気持ちを探ろうとしていると、それ自体が不信を招いて嫌われる可能性もある。

4. バックトラッキング

いわゆる「オウム返し」のテクニック。相手の口に出したことを自分も繰り返して言うことで、相手の話を聞いて受け止めていると伝えることができる。特に相手が聞いてほしい内容を話す時に上手く使えば、より効果的となる。バックトラッキングには3つのパターンがあり、相手の言ったことをそのまま繰り返して言い返す方法、ポイントをまとめて要約して言い返す方法、キーワードを使って言い返す方法がある。

バックトラッキングの留意点

例えば「先週、海外旅行へ行ってきた」に対して、そのまま「へ~、先週海外旅行に行ってきたんだ!」と繰り返すことが基本だが、少し言い換えて「へ~海外に行ってきたんだ。どうだった?」と言い返すこともできる。どちらが良いということはないが、相手にマネをしていることを悟られないよう自然に言い返す必要があるので、少し言葉を変えて言い返すやり方のほうが使いやすい。その際に「語尾を同じ言い方で返す」ことが留意点。「海外に行ってきたんですね!」と返すと、こちらが必要以上に丁寧な言葉を使っている分、相手が距離を感じてしまう場合があるからだ。語尾には相手との無意識の距離感が現れることがあるので、語尾の表現を同じにしておかないと最悪の場合「話を聞いていない」と誤解を生む。

ラポールが知られてきたので、逆にラポールが築きにくくなる

ラポールを築くためのポイントとしては、相手をよく観察し、相手との共通点を見つけ、相手の考え方や性格などを否定せずに受け入れることが挙げられる。視覚に訴える方がいいか、聴覚に訴える方がいいか、触覚に訴える方がいいか、タイプ別に使うテクニックや対応方法が変わってくる。
実際、ラポールという言葉も、効果的なこの4つのやり方もよく知られてきたため、一部の人には効果がなくなってきている。いくら上手に4つの方法を使っても、相手にテクニックを使っていることを気付かれ、相手の無意識に影響を与えることはできなくなってくる場合がある。却って不信感を抱かれることさえあるだろう。

それでは相手に気付かれず、ラポールを築くためにはどうすればよいだろうか。

一瞬にしてラポールを築くやり方

それは、ラポールを築きたい人と会った時に「あなたの両手が大きく伸びて、相手の両肩へ触れる様子をリアルに想像する」というやり方だ。

なぜ、この方法が効果的なのか。それは人は相手の態度を見て、自分の態度を決めており、相手の反応は自分の心の中を映し出す鏡になるからだ。例えば、初めて出会ったAさんを「苦手な人だな」とあなたが感じた場合に、言葉には出さずとも、あなたの顔や表情には何かしらのサインが出てしまっている。Aさんと話すときにも苦手だと感じてることが言葉のトーンやテンポから相手にばれてしまい、Aさんもあなたと距離を詰めるのは難しいと感じてしまう。逆に、あなたがAさんに好意的な気持ちを持っていれば、自然とその気持ちがAさんに伝わるのでAさんも心を開いてくれやすくなる。

相手とのラポールを築くためには、まず自分を説得する必要がある。だからと言って、自分を説得するために無理やり「自分はAさんのことが好きだ。Aさんのことが好きなんだ」と心の中で何度もつぶやくことは不自然だ。本当にAさんのことが好きならば、そんなつぶやきをする必要ないため、こうすることで潜在意識では、つぶやきする事実を繰り返すことで「Aさんを好きではない」と自己暗示をかけてしまったりする。だから、まずは良いイメージとして「Aさんを優しく支えるかのように両手で相手の両肩に触れる」想像力を働かせることだ。それは相手に対して親和的な態度をみせる源泉となる。

相手と打ち解けた状態にいると何よりも一緒に居て楽しいし、もっと何かやってみたくなる。それが次に前向きな機運も醸成する。困難を打ち勝つためには、そうした自発の原動力が効果的なことはお分かりいただけたかと思う。


ファンドレイジング・コンサルタントへの道

▷ #12 ゲームの活用
▷ #11 効果的な研修手法について2
▷ #10 効果的な研修手法について
▷ #09 研修の組み立て方
▷ #08 寄付のハードルを下げる「寄付付き商品」の活用
▷ #07 ベストプラクティクスを研究して、提案の引き出しを増やす
▷ #06 ヒアリングを通じて、前向きな機運を醸成する秘訣
▷ #05 ヒアリングの技術を磨く
▷ #04 話す前に~120%の準備で70%のチカラを発揮する
▷ #03 周囲を引き寄せていくための話し方
▷ #02 コンサルタントに必要な技能
▷ #01 コンサルタントの役割

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