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#10 効果的な研修手法について―ファンドレイジング・コンサルタントへの道

ファンドレイジングのコンサルタントが、伴走支援の一環として研修やワークショップ等の形で、効果的な実践へ繋げるためのスキルの伝達やノウハウ養成を図っていくことがあり、その場合の研修の組み立て方について、前回解説した。

#09 研修の組み立て方―ファンドレイジング・コンサルタントへの道

今回と次回の2回で、様々な研修手法について解説する

話し手に耳を傾けている人々が数多くいたとしても、聴いているだけでは多くを学んでいるという見込みは少ない。「人々は参加せずに学ぶということはない」というのは一般的に認知されている学習の原則である。従って、講義や話のあとには、できれば小グループによる討議を行うべきであり、そのプロセスによって、自分自身の受け止めたものだけでなく、他の人びとの理解を通じて、より多くを学び、よりよく理解するのである。

このように成人である人々に対して、学習機会を提供するために、よりよい効果をもたらせるいくつかの研修手法と用具を知り、どのように利用したらよいかについての知識をふやすことが本稿の目的である。

研修の目的と手法

1)研修の主たる目的

  1. 知識と技能の習得(文献の通読ではなく、効果的に)
  2. 態度の変容(小さな自信を積み重ねて勇気を持つ)
  3. 課題の解決(具体的に問題解決に一助する)

2)グループに対する研修手法の分類

  1. 講義形式:講義法
  2. 討議形式
    1. 少人数:自由討議法 
    2. 多数:バズグループ、パネルディスカッション
  3. 体験学習形式
    1. 役割演技:ロールプレイ(少人数のほうが効果的)
    2. 事例研究:ケーススタディ、イントレイ 

3)学習目的と手法

  1. 事実や概念の教育:講義法、デモンストレーション、ドラマチゼーション、見学
  2. 問題解決の教育:ケーススタディ、イントレイ
  3. 創造性開発の教育:ブレーンストーミング
  4. 技能習熟の教育:演習、ベース
  5. 態度・価値・人格:集団討議法(自由討議法、パネル討議、フォーラム、シンポジウム、バズグループ)、集団決定法(ロールプレイ)
  6. シミュレーション(simulation):模擬的体験による訓練手法の総称。「サンドトレイ」「イントレイエクササイズ」「ロールプレイ」

4)目標達成のための研修手法の選択

明確な目標を決定したら、利用しうる様々な技法の中から、選択することができる。
表は研修手法と学習目標の関連を示す一例である。

知識技能心構え
1. レクチャー(講義)
2. トーク(話・談話)
3. デモンストレーション(例示)
4. ディスカッション(討議)
5. ブレーンストーミング
6. ラウンドテーブル
7. バズグループ
8. ケーススタディ
9. サンドトレイ
10. イントレイ
11. ロールプレイ
12. ゲーム
13. ベース 
14. エクササイズ(演習)
15. プロジェクト 
16. ワークショップ
17. カードミーティング

講義は研修の手法として最もベーシックな手法であるからこそ、知らねばならないことがある

研修手法1. レクチャー(講義)

一人の人が、話を中心に他の人々に情報を伝えることを指す。視覚用具やハンドアウト、実物あるいは模型等を併用して理解を深める工夫がなされる場合もある。聴講者は参加しないので、フィードバッグは全くない。講義は情報を伝えたり、動機づけには一番よい方法だが、技能を教えたり心構えを変えさせるためには、あまり効果を期待できない。しかしながら、好ましい状況下では、講義は人々を奮い立たせ、動機づけることができる。講義の良いところは、講師が徹底的に自分自身の守りを固めることができることで、講師は状況を充分に管理できる立場にあるからである。つまり、最も有効かつ適切な情報を注意深く選択しながら、資料を準備して、講義の下稽古を行い、正確に自分の思い通りに時間配分ができる。準備の中には視覚教材のビデオ・スライドなどの使用を盛り込むことも可能だ。慎重に選択して、入念な準備を行うことによって、講義の訓練効果を大いに高めることができる。

ハンドアウト

元々の意味は、宣伝ビラ、施し物。転じて、各種の研修等において、参加者に補助教材として手渡す印刷物や資料をさす。ハンドアウトを講師は用意することができる。それは講義の前や、講義中に理解を深めるために配布してもよい。または講義の後に配布して、質問や討論を起こさせることもできる。適切なハンドアウトを発行することで「ノートを取らせる必要をなくすべきだ」という考え方もある。
ハンドアウトは長すぎてはいけない。もし、ハンドアウトに講義の主な見出しが示されていれば、聴講者は、講義中にそれをガイドに講義について行ったり、また後に重要な点を思い出したりすることができる。

講義の進め方

もしも講義が、その内容を復習して実行する過程を取り入れるならば、例えば討議のように、学習効果を大いに高めることができる。併せて、参加者から講師への質問する時間を持つことは有益である。しかしながら、講義後の質疑応答は、小グループで行う討議の代わりにはならない。また、振り返り学習を行うことも講義内容の定着に効果を持つ。どのような展開をしたかを振り返り、記憶をその場で修正しておく。
講義を進めるにあたって、その環境を準備することの重要さは特に強調されるもので、講師は立って話し、聴講者からよく見え、聴けるようにを確認する。特に視聴覚教材を使用する場合には、映り具合、投影サイズ、位置、音量など不利益を被る参加者が発生しないように配慮する。

講義の限界

講義は、特に大勢の人々に情報を伝達する場合、適度に有効で敏速な方法である。しかし、どんなに上手く講義できた場合においても、これは講義が持つ宿命でもあるが、どんな参加者に対しても完全な満足を与えるとは言えない。ある調査によれば、講義の直後、人々は聴いたことの50%以下しか覚えていられず、一週間後には覚えていることは20%を下回るという。従って、講義の効用には限界があることは明白であり、慎重に用いらねばならない。
また、フィードバックがないことも、講義の重大な弱点である。もし、講師が聴講者について誤った判断を下し、しかもあまり早口で話したり、難しい言葉を使ったりするとコミュニケーションは失敗するであろう。あるいは、もし講師が聴衆のニーズを誤解して、すでに知っているか、または知る必要のない情報を与えたりすると、同じく失敗する。講義中に数回、質疑応答や短い討議の時間を取るならば、最初の弱点を克服し、フィードバッグが得られることになる。その結果に応じて、講師は問題の掘り下げ方を修正することができる。講義の前に、講師から質問を出して、質疑応答の時間を取るならば、その結果に応じて、講師は講義内容を修正できるため、第2の弱点を克服することができる。

<図1 講義法と討議法の利点と欠点>

談話は、もう少し少人数に対して、短時間で話しかける手法。

研修手法2. トーク(話・談話)

「談話」「訓話」ともいう。質疑応答や短い討議を通じて多少の参加やフィードバッグがある場合を除けば「講義」に似ているが、小グループや職場単位程度の規模で行なわれる。「訓話」という文字からも判るように、指導者あるいは来賓などの言葉や話の中にも、研修手法の要素が含まれている。通常、人々は4、5分程度を超えると意識の集中力が下がると言われているので、気分転換や話題の切り口に変化を持たせるなどの工夫が必要。

「話」と「講義」の主な相違は、「規模」である。

  • 「話」は、一般的に5分~20分ぐらいの短めのものである。式典の一部のように位置づけられている、しばしば30分の話という場合もあるが、例外的である。聞き手は、一度に4~5分以上は意識を集中できないと言われ、ある実験によれば15分を過ぎると、話の内容よりも学習効果そのものを失うという。TV番組が15分ごとにインターバルとしてCMを挟み込んでいる影響だという方もいるが、本来的なリズムとして長時間集中させ続けることは難しいと言える。それに比べると「講義」は、もう少し長い時間をつかって編成される。
  • 研修において、「講義」を先導し話題を提供する者(講師)を含めて参加者にも相互作用が働き、効果を発揮するのは、だいたい20-40名規模の参加者の場合である。この程度であれば、講師も一人ひとりの参加者と個人的に触れ合うことができ、参加やフィードバッグも可能となる。すなわち、講師は一人ひとりに、或いは参加者全体に質問することができ、参加者も講師へ質問できる。派生的に参加者同士での質疑応答もでき、討議のひとつの形とはいえるが、小グループ(5-8人程度の)の討議にとって代わるものではない。
  • 「話」は話し手から、聞き手に「考えるきっかけ」を与えたり、「示唆に富んだ」話題を提供し、聞き手を刺激する。そのため、講義の導入部分や2つの部分をつなぐ目的で「話」を用いることもできる。そして、締めくくりとしてグループで出した結論の要約や、重要な点を強調するために用いることができる。このように「話」は、講義と同様に情報を伝達するのに最もよく用いられているが、講義よりもかなり柔軟性がある。話は講義よりも興味を刺激し、討議を奨励し、論争を引き起こす目的としても使える。話によって参加奨励し、聞き手の理解を増進させることもできる。また、話によって研修の中で用いる方法についての説明に用いることもできる。

話の進め方

全般的に言って、話は、学習の管理者としての「トレーナー」がセッションを指導し、管理する手段の一つである。他の研修手法と同じく、慎重に立案することが必要である。しばしば陥るのはあまりにもたくさんのことを早く伝達しようとすることで、もし話し手が使用できる時間や参加者のニーズ、参加者の集中力の限界などのすべての要因について考慮することができるならば、最も効果的な「話」の進め方は、話し手が話の内容を徹底的に減らすことだ。筆者は40年前に参加した研修で所長の発した一言をいまでも覚えているが、それは、たった一言だけ述べて、自席に戻られたという印象的な紹介であったからだと思う。その一言とは「基本を学ぼうとするものは馬鹿正直である」というものだった。

話し方の専門家は、話を進めるスピードについてこう伝えている。「もしも、1つの事柄について話す価値があるならば、それはゆっくり話す価値があるのである。充分聞き取れる速度が良い。すぐに理解できるほど、容易に聞き取れるならば、なおよい。すぐに覚えられるほど、容易に理解できるならば、最もよい」。

印象的な話と出会った後で、聞き手は、話し手の一言一句について、その通りを正確に記憶しているのではない。聞き手の記憶に残るような強烈な刺激、キーワード、そこから受けたイメージなどを覚えていて、感激するとそれをまた、人に伝えようとする。そのことを話し手は意識しておくことが必要だ。

話の限界

話は研修の場面では実に数多く用いられるが、常に賢明な用い方をしているとは限らない。実は情報伝達にはよく用いられていても、コミュニケーションの手段としてはそう効果的ではない。なぜならば「話し手の伝えた内容について受け止め、理解し、フィードバッグがあったという保証」がないからである。話し手は、話をした後で、コミュニケーションに成功したかどうか、それによって目標に達したかどうかを常に確かめていく必要がある。

実演して見せることで、理解が進むデモンストレーション

研修手法3.デモンストレーション(例示)

解説

「デモ」と略す。一人あるいは何人かの人々が、みんなに対して模擬的にある情景を演示したり、ある作業の手順や技能・技術を実演したりすることを指す。またカウンセリングや会議の運営などもデモで行なうこともできる。デモンストレーションは、通常、[短い導入の話→デモンストレーション→実習]といった手順で行なわれる。講師は、参加者全員が実習できるだけの用具や時間を用意しておくことが望まれる。

デモンストレーションの進め方の例

  • 情報をカードをつかって整理する方法を学んだ参加者グループは、他の人のグループに例演することができる(実演)。
  • トレーナー2名でカウンセリングのデモンストレーションを参加者に示すことができる(ロールプレイ)。
  • 経験豊富なリーダー的講師は、スタッフに教える方法をデモンストレーションできる。

これらの全てでデモンストレーションの目的は異なっており、それに沿って実行方法も異なってくる。しかしながらも、どの場合においてもデモンストレーションの基本的な組み立て方は、次のようになる。

  1. 短い話(導入)
  2. デモンストレーション(例示)
  3. 参加者で実際に実習(デモンストレーションしたことを試してみる)

デモンストレーションが上手くいかない場合は、次のような場面が多い。

  • 何かをできるようになった人は、そのやり方を他人に伝えることが得意だと思い込んでしまうことがある。自分でできることと、他人に教えることは違い、良い職人や専門家が教えるのがうまいとは限らない。
  • デモンストレーションを行う側が準備不足のままだと、不適当な用具、不完全な技法の提示、不適当な説明などがしばしば発生してしまう。
  • 見ている側がデモンストレーションの最中、もしくはそのあとで、実際に参加者となって練習してみる時間や用具がない場合には、デモンストレーションの意味がない。
  • デモンストレーションを見ている際に、参加者からその手順が良く見えなかったり、細かいところまでわからなかったりする。

これらはいずれも、準備の段階でわかったつもりで始めてしまって、充分な試技を積んでいないことになる。デモンストレーションの装備は充分か、完全で正しく適切な手順か、よく聞き取れ、見にくくないか、参加者が復習するのに充分な資源があるかを確かめるには、誰かに頼んで試演を見聞してもらうことである。すなわち、「伝える・教える」ということを行う際には、演じ者は伝える内容について一段階、高い理解をしておかなければならず、参加者からはどんな風に見えるのか、どんな風に聞こえるのか、感じる範囲を広げ、思いを巡らせて取り組まなければならないことを示している。

デモンストレーションの限界

デモンストレーションではしばしば、導入の場面設定(シチュエーション)がなされるが、実演だけでは、参加者がその世界観に入り込めなかったり、理解できなかったり、背景説明が充分でない場合がある。その場合には、ハンドアウト及び研修資材をうまく活用することで補うこともできる。またここには黒板、図表、スライド、模型、動くしくみ図解などを始め、ネット動画などでの実演視聴も加えられる。

討議は、異なる意見に触れることで、課題が浮かび上がり、理解がより深まる。

研修手法4.討議(ディスカッション)

4-① グループディスカッション

グループワークの運営技法の一つで、グループ運営のあらゆる場面で活用される重要な手法。テーマについての討議や作業、計画などを実施するにあたり、共同意識のもとに、対等な立場で発言がなされ、グループとしての一定の方向づけを行なう。小グループであるからこそ、全員に発言の機会を与えることができ、傍観者を作らない利点がある。いくつかのグループに分けて運営する場合、他のグループの発表や作業工程などを参考に、新たな展開に導くこともできる。

4-② パネルディスカッション

討議運営の一方法で、陪審討議とも訳される。座長(コーディネーター)を含む4~6名のパネラーが、壇上で特定の論題に対して座談式に自由に討議をし、座長が意見を要約しながら聴衆に質問を促したり、意見を引き出しながら討議課程に参加させていく方法と、数人の対立する意見をもつパネラーが、聴衆の前でそれぞれの立場で、論議を交わしていく方法がある。ディベート<訓練手法4-4>とは、規模や運営の進め方に違いがある。

4-③ ディベート

賛成・反対に分かれてする討論会。自分の意見とは別に役割として「賛成役」「反対役」に徹して代弁することから、一種のロールプレイとみなすこともできる。近年、ディベート選手権などが催されるなど、教育現場で取り入れられるようになり、その効用が見直されている。

アイデアを出すために、関連したものをたくさん発想する「ブレスト」

研修手法5. ブレーン・ストーミング

ブレーン・ストーミングは、Brain(頭脳)+Storm(嵐)+ingとして、元々は精神病者の一時的な錯乱状態を示す言葉である。何人かのグループを作り、まったく制約のないリラックスした状態の中で、自由に発想、連想の連鎖反応を起こしながら、奔放なアイデアを出していく状態が、平常でない錯乱した状態を思わせるので、こういう名前がついたものだろう。創造につながる、発想やアイデアを導き出す手法。小グループでアイデアを出す発想法の一つ。議題についての十分な知識がなくてもよいから、ミーティングしてどんなに奇妙で不可能と思われることでも、メンバーが思いついた回答や見解を申し述べていく。後で全てを吟味して評価していく。

ブレーン・ストーミングのねらい

グループの持っている能力の中から、興味を引き起こし、速やかに討議させることを目的とする。この方法は1939年アメリカの広告代理店の副社長であったA.F.オズボーンが広告関係のアイデアを出すために開発したもので、初めは「ブレーン・ストーミング会議」と呼んでいた。このオズボーンの創造した、集団でアイデアを出すための方法の特徴は、普通の会議の逆をいくようなやり方「ブレーン・ストーミング」4つのルールで進めていく。このルールを忠実に守らせることにより、独特の雰囲気と結果を導き出すことができる。できるだけ焦点を絞った問題についてどうしたらよいかについて、思い切ったアイデアをまず、出し合ってみるのに有効である。

4つのルール

(1)他の人の意見、アイデアについての良い悪いの批判は、一切しない

「それはダメだ」は禁句。テーマについて、気づいていること、知っていることを気兼ねなく、どんどん出していく。まったく気軽に発言して、出てきたアイデアに評価を加えるのは最後まで控えなければならない。

(2)自由奔放なアイデアを歓迎する

良いアイデアは、柔らかい頭、柔軟な発想から生まれてくる。バカバカしいと思われていることでも歓迎。アイデアは滑稽なもの、奇抜なものほどよい。

(3)何でもよいからどんどん出す

アイデアが多ければ、多いほど、中身のあるモノ、素晴らしいモノが出てくる可能性が大きくなる。ともかく量を求める。

(4)他人のアイデアに便乗せよ

他人のアイデアへの上乗せ、改善結合を求める。他人のアイデアへかぶせて自分のアイデアとして出す。またアイデアとアイデアを組み合わせて新しいアイデアとして出す。他人の発言を聞いての便乗や悪ノリも歓迎する。他のアイデアからハッと気づいたものを、すぐに発言されたものを組み合わせや改善していく中から良いアイデアは、磨きだされていく。自由な雰囲気で、型にはまらない大量の発想、思いつき、アイデアの中から一つでも、二つでも、素晴らしいアイデアを求めようとするものである。

以上の4つのルールの中でも特に「一切批評しないで丸のみにする」「滑稽なもの奇抜なものがよい」という条件は、普通の会議では考えられないことで「頭のサビを落として」柔軟な思考の向上を促すため、ブレーン・ストーミングとよばるゆえんとなる。

オズボーンは、次のようなチェックリストを基にして、積極的な改善結合へ役立てようとしている。

  1. 他に利用できないか?
  2. 他からのアイデアが借りれないか?
  3. 変更したらどうなるか?
  4. 大きく、または多くしたらどうか?
  5. 小さく、または少なくしたらどうか?
  6. 代用したらどうか?
  7. 入れ替えたらどうか?
  8. 反対にしたらどうか?
  9. 結合してみたらどうか?
  10. 分解してみたらどうか?

(出典:「問題解決」野口音光著 ダイヤモンド社)

このような方法をとると、みんな自己防衛的な壁を取り去り、あたかも、いたずら小僧が何か奇抜ないたずらを考え出そうとしてウキウキしている時のように、リラックスした、しかもゲーム的な雰囲気が出てくる。そのうえ、アイデアが出始めると、メンバーの連鎖反応によってそれが次々と倍加され、瞬く間に30,50と増えていく。アメリカのある大学の実験によると一人ずつのアイデアの合計よりも、グループの相乗効果で出てくる合計のほうが、実に65%~93%も多いという。このようなグループでの相互促進作用を期待できるのもこの方法の特徴である。

ブレーン・ストーミングの進め方

  • リーダーとレコーダー(2名)を決める。
  • 二つの大きな白紙をみんなの見えるところに貼る。
  • レコーダーは、2名ともマジックをもって、それぞれの白紙のところに立つ。二人で交互に出された意見を書いていく。従ってリコーダーは、字が読みやすくて、早く書ける人が良い。
  • メンバーはリラックスしてすわる。お互いに見えるようにできればテーブルを囲んで座る。10人ぐらいがよい。
  • リーダーは、みんなにブレストのルール、進め方、ねらいを説明する。初心者のとときは、ウォーミングアップとして簡単なテーマで練習する。(例えば飲料水の空き缶利用法について等)
  • リーダーはテーマを示す。何について、なぜするのか、何分間ブレストをするのか等をよく知らせる。発言するときには手を挙げてもらうように頼む。あるいは順番に回していってもよい。その場合、メンバーは必ず一つのアイデアを順次、出さなければならない。
  • リーダーは、グループのメンバーに3~5分ぐらい時間を与えて、まずは各自でテーマについて考えさせる。もし可能であれば、紙に書き出させる。
  • リーダーは、「さぁ始めましょう!」と声をかける。手を挙げた人を指名して発言させる。「類推歓迎、悪ノリ歓迎」とあおる一方、ルール違反、特に「それはおかしい」等と批判する人には注意を与える。
  • 言葉によっても、態度によっても、誰もある見解に対して批判したり、嘲笑してはならない。グループの興味は、質でなく、量なのだ。
  • 参加者は、各自で最初に3~5分間、書き溜めた答えにこだわることはない。
  • 一般的には、10-15分ぐらいすると、アイデアが詰まって出てこなくなる。その場合には、紙に書き出されたものを一度、読み上げたり、みんなで黙読してもらう。あるいはこれまでの意見を整理して「この辺りはどうでしょうか?」等と着眼点をついてみて、投げかけ、あるいは刺激を与える。
  • 時間が来たり、アイデアが出なくなったら、終了する。
  • 出たアイデアを、みんなで聞きながら、実行可能なものは〇、保留は△、不可能なものは×、というふうに印をつけて整理する。〇印の中から、同類のものを集めて整理する。
  • 必要があれば、整理したものを土台にして、再びテーマを決めて、ブレストを行う。

レーン・ストーミングの例

テーマ:「計画倒れを防ぐには?」

  • 発言は二人のレコーダーが交互に白紙に書き出していく。
  • 全部出たら、〇△×で評価。
  • これらをまとめてさらに検討する。
〇1.中間点検日を決める
×3.計画なんか立てない
〇5.困ったらすぐ連絡
〇2.全員で計画を立てる
△4.あまり細かく決めない
〇6.連絡係を決める

ブレーン・ストーミングの効果的な活用

  • アイデアを出しているときに、こんなことは当たり前だというものが頭の中で浮かんできて、それ以上のモノを出そうとしているのに、それに囚われて、新たなモノが出てこなくなってしまうことがある。その時には、敢えて「当たり前」のモノを書き出すことによって、いわば蓋していたところから重しが取れたかのように、これまでそのことばかりを思い返していたのが、それが頭の中からなくなった途端に、次々と新しい発想が生まれてくるかのような時がある。
  • ポストイットなどを活用して予め、一枚のカードに1つのアイデアを書き出して、それを出しながら分類していくというカードミーティングを組み合わせることも可能。
  • オズボーンの「4つのルール」では量を求めるが、敢えて1人3つとか限定して書き出してもらうとその人らしいアイデアが出てくることがある。しかしながら、ブレーン・ストーミングの求める脳がリラックスしてどんどん活性化してくる状態は引き起こすことができないので、基本は無制限にすることが望ましい。

ブレーン・ストーミングで陥りやすいこと ―思いついたことを気兼ねなく

堅苦しい会議のやり方、あるいはお互いがよく理解しあっていない時には、創造的な意見は出にくい。その原因として、せっかく思いついたことでも、かっこよく話そうとしているうちに、その思い付きそのものがどこかに行ってしまう場合がある。あるいは、他人が発言しているうちに忘れてしまったり、他人の意見を聞いていると批判点ばかりが気になり、萎縮してしまってアイデアが出てこないことがある。そのほか、気兼ねやあの人に任せておけばよいというもたれあいなどが挙げられる。

ブレーン・ストーミングの限界 ―万能でないことを理解しよう

ブレストは、以上のルールや手順でもわかるように思いついたことをどんどん発言させる効果を持っている。そして、この方法の本来の目的は、たくさんのアイデアを出してもらって、その中から役立つアイデアを探そうとするもの。従って、ブレ・ストだけで結論を求めようとすることには限界がある。また、ブレ・ストをやってみても、参加者の持っている知識経験の範囲を出ないため、平凡なアイデアしか出ずに、なんとなく「これは役に立たない」ということを経験することもある。必ず成果が出ると期待できるものではなく、ゲーム的な要素が強すぎて、面白い時間が過ごせただけとなることもしばしばある。しかしながら、素晴らしいアイデアというものは、やれば魔法のように簡単にできるものではなく、1000個以上も出てきた場合に、いままで気づかなかったようなものが現れるので、決してブレ・ストそのものの方法が悪いからとは言えない。

ブレーン・ストーミングをうまく活用する ―限界をわきまえて活用しよう

そこで、ブレストには、ある限界があることをわきまえて、その中でこの技法をうまく活用することが必要になってくる。

  1. ブレストだけで最良の結論は、得られないことが多い。だから、討議の中での一部として活用し、まず問題を出してもらうとか、テーマを絞って行ってみる。これは討議の効果は大変高くなる。例えば「今日はクレームが多いということが問題となりました。そこでどんなクレームがあるか、これから10分間、ブレーン・ストーミングでどんどんと出してみましょう」といった使い方です。
  2. 自由奔放にやるからメンバーの構成ではアイデアが偏ることがある。専門が同じだと、同じ角度のアイデアしか出てこないということもある。そこでリーダーは、計画的にあらかじめテーマを分析しておいて、誘い水をかけてみる。例えば「人財の面から見たら」「費用の面から見たら」「時間軸に沿ってみたら」などと見方を変えさせることによって、広いアイデアや意見を求めるようにリードする。
  3. あまり難しい問題には対応しにくい。思い付きで出てくるもの、経験を振り返れば、気が付くものを引き出すときには有効だが、未知のモノやメンバーのレベルでは内容についての情報や知識を持ち合わせていないものは展開に無理がある。こうしたテーマを扱う際には、専門家に来てもらって話を聞くとか、みんなで資料や文献を研究するということが先に行われなくてはならない。
  4. この方法は、簡単な問いに対して、簡単な見解を生み出すのによい方法である。質問は難しすぎても、複雑すぎてもよくない。この方法によって、多くの良い見解を生み出すことができる。そして、できればリーダーと他の資源の助けを得て、これらの見解のうち最も良いものを発展させることができる。第一の段階では「いかに」ではなく、「何が?」が問題である。「いかに」が問題となるのは第二の段階になってからである。

次回は、研修手法の続きを紹介する。


ファンドレイジング・コンサルタントへの道

▷ #13 現状確認と課題解決
▷ #12 ゲームの活用
▷ #11 効果的な研修手法について2
▷ #10 効果的な研修手法について
▷ #09 研修の組み立て方
▷ #08 寄付のハードルを下げる「寄付付き商品」の活用
▷ #07 ベストプラクティクスを研究して、提案の引き出しを増やす
▷ #06 ヒアリングを通じて、前向きな機運を醸成する秘訣
▷ #05 ヒアリングの技術を磨く
▷ #04 話す前に~120%の準備で70%のチカラを発揮する
▷ #03 周囲を引き寄せていくための話し方
▷ #02 コンサルタントに必要な技能
▷ #01 コンサルタントの役割

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