経営/マネジメント
#11 効果的な研修手法について2―ファンドレイジング・コンサルタントへの道
ファンドレイジングのコンサルタントが、伴走支援の一環として研修やワークショップ等の形で効果的な実践へ繋げるためのスキルの伝達やノウハウ養成を図っていくことがあり、そうした場合における研修の組み立て方について、前々回に、また様々な研修方法について前回解説した。今回は、その続きとして効果的な研修手法について紹介していくが、是非とも前回までの稿についても併せてお読みいただきたい。
#09 研修の組み立て方―ファンドレイジング・コンサルタントへの道
#10 効果的な研修手法について―ファンドレイジング・コンサルタントへの道
研修手法6. ラウンドテーブル(Round table)
論題について、ある程度の知識をもった人々のグループが、順次意見を述べた後、これらの意見について討議する。テーブルを囲んで(できれば円卓がより効果的)お互いの顔が見えるように座り、年齢・経験や役職等による上位・下位の区別なく発言できるようにする。
解説
ラウンドテーブルは、通常、次の手順で進められる。
- 座長が主題について説明する。
- 順番に意見を述べる。(話し手が論点確認するために若干の質問は許されるが、できる限り話の中断は避ける)
- 主題に沿って整理を進め、討論を行なう。
進め方はブレーン・ストーミングにも似ているが、論題について参加メンバーが知識や経験を持ち、事前に準備されていたり、各人が自分なりの考えで説明を加えることができる点で異なっている。やや難しく複雑な問題についても対応することができる。
研修手法7. バス・セッション(Buzz session)
まさに井戸端会議のように任意の小グループで話し合いを継続していく。別名として「6-6法」シックス・シックス法とか「バズグループ」Buzz Groupともいう
解説
Buzz(バズ)とは、蜂のブンブンと唸るような羽音のことで、人間で言えばワイワイガヤガヤした状態のことを表して、人によっては「ガヤガヤ会議」「ワイガヤ」と呼ぶ場合もある。Session(セッション)はその場にいるメンバーで臨時に構成する状態を示す。大集団での討論の欠陥を補うための討議運営の手法の一つで、参加者が車座を組んで、ワイワイガヤガヤ、井戸端会議のごとく心置きなく自由に、気楽に発言することである。
ねらい
小グループ(バズグループ)の全メンバーの意見を聞くこと、グループの中での意見の不一致をまとめること。あるいはある議論や、疑問について新しい考えを生み出すこと。人数、時間配分等はそれぞれの内容に応じて、変更してもよい。
進め方の手順の例
- 司会者はまず全体を5~6名の小グループにわけ、各グループごとに進行係と記録係、発表係、タイムキーパー等の役割分担を定める。
- 各グループでは一人1分間ぐらいずつ、順番にグループ全員の意見などを発言してもらう。この状態のことから別名「6-6法」(シックス・シックス法:6名で6分ぐらい)とも呼ばれている(J.D.フィリップスが提唱した方法)。各グループの発言がガヤガヤとちょうど羽音(=Buzz)のように聞こえてくる。進行係は限られた時間内に、グループ全員の意見が発表できるように時間配分に注意する。
- テーマによりグループの統一見解が求められる場合には、「討議」⇒「協議」⇒「結論」の手続きの時間が必要となる。記録係は各自の意見を要約し記録する。発表係は、定められた時間内でグループの意見・結論を効果的に周知できるよう工夫を凝らす必要がある。タイムキーパーはすべての作業が時間内に完了できるように進行係を補佐する。人数、時間はそれぞれのテーマや内容によって変更してよい。
- 予め定められた時間で区切り、各グループの記録係、或いは発表係からグループ内での意見を要約して全体発表されるが、この各グループでの意見を基に再度、グループ討議を繰り返したり、または他の討議法と組み合わせるとさらに有効となる。
- 人前での発言が苦手な人が全体では発言しにくい「問題」についても、少人数のグループでの発言であるために、意外な本音が出てきたりして、楽しい有意義な会議となることが多い。
バズ・セッションを成功させるためには
- 友好的な雰囲気であること
- 「我々意識」で考え方や感情が交流すること
- 上位や忖度など格式意識を捨てること
- できるだけ全員が発言に参加すること
- 多方面な人を集めること
- あらかじめ議題について、考え調べてから参加すること
- 討議は客観的に進めること
(「グループワークの理論と方法」関 計夫著 明治図書)
バズ・セッションを活用するために
- 研修の場では、それぞれの係を全員が体験できるように、予めローテーションを支持しておくとよい。
- リーダーシップとは、進行係だけが発揮するものではないことを体感できる。それぞれの係は、その役割においてはグループをリードする。リーダーとは周りに影響を与える人である。
研修手法8. 事例研究「ケーススタディ」(Case Study)
ケースメソッドという場合もある。
解説
事例研究ともいい、一般の討議に加えて、問題解決能力を養う。ある特定の問題を含んだ事例を取り上げてグループで共同討議して解決策を見出すもので討議形式の一種。すべての事象を網羅することができない場合に一つまたは複数の事例を取り上げて、推論が当てはまっているか、傾向が確認できるかを確かめる。ある仮説が成り立たないことを示すには、反対例一つがあればよいが、仮説が成り立つことを示す場合に、どれだけの事例を示せばよいかは対象領域の制約条件による。
ねらい
実際に起こった事柄について、視覚用具やハンドアウト、トーク等によって状況(前提条件)の説明を受け、当事者となったつもりで問題の解決策を検討する。研究結果と現実に展開した結果とを比較検討することにより、人間関係や非常時における対応能力を養うことができる。ケースの提示に当たっては、参加者が遭遇する可能性のある事例や当面する出来事についての状況など、現実的なものを選定するように配慮する。より理解が深まるとともに、活用技能を高めることにも役立つ。
現実に沿った実務的な研究が進められるため、判断力、応用力が向上する。また、研究自体を各自が自主的に進めていく事も可能となる。
ケーススタディの進め方の例
1)導入
- 学習の基本姿勢について解説する。
- 直観的でなく、どこに問題があるのか、原因は何か、またその本質はどこにあるのかを十分に研究する態度を持つことが必要。
- 自分自身(あるはいメンバー)が、ケース(事例)の当事者であり、発生している事案の解決を図る責任者であるという気持ちでケースに当たることを強調する。
- ケースの問題解決のみならず、今ここでディスカッションすることによって、実際に発生しているプロセス上でのことも取り上げる。
- 時間的余裕があれば、自分たちのグループに同様・類似の事例がないかを検討して、そこから派生して互いに業務運営上のことで困っていること、悩んでいること、知恵を借りたいことなどを披歴し合い、相互啓発に繋げていく。
2)事例の提示
- ケースの事実把握に努める。ケースの音読・黙読・事前把握
- その後、ケース記述の内容に関することについての質問に回答。
- まずメンバー間で事実を明確に把握することが大切なので、ポイントを確認し合う。
3)問題発見のプロセス
- ケースから問題点をつかむ。どこに問題点が存在しているか、それに関する事実を集めて分析する。
- 問題発見の際には、できる限り広く関連情報を集め、メンバー間で多角的に煮詰め、思考・情報を組み合わせる。
問題発見プロセスでの留意点
- 問題があると思われる事柄が実に事実ではなく、意思(思っている・希望している)や推測(そうだと思われる)を含む場合があるので注意する。
- 事実が不足する場合もあるが、そうした場合にはメンバーの共通理解を得た上で必要な範囲で条件をつけてもよい。
- 条件をつける場合は、あまり仮定を多くしていくと、却って各自の創造的思考を押し込んでしまうことになるので注意する。現実の事柄を処理する場合でも完全に事実をとらえないで判断することが多いと思われるのであまり修正しないほうがよい。
- 検討を進めていくうちに「解決すべき問題点」が変化していくことがある。その場合には、原点となる「問題点」を変化させても差し支えない。
4)原因追求のプロセス
- 「原因は何か」「考えるべき事柄は何か」を討議して、原因の本質を追求していく。
- 問題の原因を調べる。問題となっているものの真の原因は何か。表面に現れない原因は何か。表面的な原因だけでなく、なぜそれが起こったのかと「なぜ」を5-6回ほど繰り返していくと真の原因にたどりつくことができる。
- 原因とその因果関係はどうか。地域、所属、風土、習慣、方針からの制約などを多角的に見つめなおしてみる。
- もう一段階「問題の本質は何か」を探ってみる。
5)対策討論のプロセス
- 対策を検討して、問題解決に繋げていく。
- いままでに出された事実を基にして、解決策を樹立する。
- 考えられる解決策は必ずしも一つではない。目的に対して、当該事案に対して、当事者にとって、他への影響に対して、等、様々な要素や要因を加味して、諸影響を考慮して最適解を選択する。また一つの原因や課題に対して一つの解決策が必要ということでもない。一つの解決策が複数の課題を解決する場合もあるからだ。
- 解決策はその後に実行することを強く意識して、具体的な解決策となるように支援する。
- 対策を実施する際に、特に配慮することについても検討しておく。例えば、時期、進め方、態度、関連部門との連絡調整等。
6)一般原則との同一化
- 運営の一般原則との関係を研究する。
- 解決策のうち「原則的」と思われるものを引き出して研究する。
- 自分たちのグループの中での類似ケースについての研究をする。
ケーススタディの限界
事例研究であるため体系的ではなく断片的なことしか学べない。また実際に即した問題解決能力は向上するが、実務的であり、理論との突合を進めていかなければ、一面的な検討に留まってしまう。
研修手法9. サンド トレイ(sand tray)
自由に書込や消去あるいは、置き換えのシミュレーションが出来ることを用いた企画や設計の手法。
解説
サンド テーブル(sand table=砂盤=軍隊で、浅い箱に固めた砂を入れ、地形・木・川・建物などをこしらえて机上の砲術や戦術の演習に用いる盤)より小規模で、砂を敷いた盆の意味を持つ。特別に用意した図表(あるいは、フェルト板または磁気板)とそれぞれ異なった項目を表示できるカードを使って、テーマに対する設計が行なわれる。必要に応じて、サンドトレイや模型も使われることもある。簡単な設計を行なう場合、地面などに配置や分担を描いてする方法もサンドトレイと言うことができる。
ちなみにコンピューターシステム運営を行っている場合、改善や試行について具体的に検討するために仮の環境を設けて、隔離された領域内でプログラムを実行し、問題発生時においてもほかのプログラムに影響を及ぼさないようにする仕組みを「サンドボックス」と呼ぶ。この場合には、外部から仕切られた環境で自由に遊べる「公園」を意味している。
研修手法10. イントレイ エクササイズ(in-tray exercise)
参加者に、簡単な問題解決の演習を行なう機会を提供する手法。
解説
イントレイ (in-tray)とは「未決書類整理箱」のことで、盆やかごに入った手紙やメッセージ、電話の応対を記録したメモ、回覧、雑誌や新聞の記事、その他出来るだけ現実を想定できる書類などをもとに、任務を分析し、どのように実行するかを決めて、後にこれらの決定について分析と評価が行う。
類似の手法に、フォト ランゲージ (photo language)がある。この手法は、示された1枚、あるいは数枚の写真やイラストから、イメージをもとに話し合い、その意味や展開を推理したり、ストーリーを組み立てて発表することで、現実を直視したり対応策を考察することができる。主題に関連する写真やイラストは、期待する結論に結びつくよう意図的に準備する方法と、出来るだけ多くの中から任意の数枚を選んで独自の結論を導く方法が考えられ、ブレーン・ストーミング的な成果も期待できる。写真やイラストから現実を推察し話し合うことにより、イメージや先入観に気づき、一方的な情報伝達にとどまらない主体的な学習ができる。企画・立案、安全対策、各種の支援や救援活動、環境問題、人権問題などの学習や行動計画の作成等にも応用できる。
イントレイの進め方
- トレイの中て、課題を想定させる資料や証拠書類をいれておく。
- 話題提供者が、その中から任意の一枚(メッセージやメモ、記事、地図など)を取り出して、読み上げたり解説する。
- メンバーは、その想定に対して、任務を分析して、どのように取り組みするかを検討する。
- 話題提供者は、また別の一枚をトレイから取り出して話題提供して、メンバーは与えられた情報を加えて討論を重ねていく。
- どのように実行するかを決定したら、そこまでの取り組みについて評価を行ってみる。
イントレイの限界
ある任務について、あまり多くの解決すべきと考えられる課題を盛り込むと、十分な成果を得られないこともある。具体的には、無差別にカードを引いて、当たったらその役割に徹して取り組む。
研修手法11-1. 演示「ロールプレイ」(Role play)
シミュレーションの簡単な一形式でもあり、「役割演技」「役割実演法」ともいう。
解説
感情移入して役になりきることで、演じる人物の体験を通じて感じ取る。参加者が自分自身を、他人の考えや感情の中に投入する能力を伸ばし、その結果から人間行動に対する理解と、人々と共に活動するときの技法を深めるものである。ケーススタディとも類似しているが、討議の最中でも、自発的に生じうるシミュレーションの一形式とも言える違いがある。よく似た技法に「11-2.ドラマチゼーション(ドラマチ)」があるが、ロールプレイは自らがその役割を演じることで感情移入して理解した上で討議を進めるが、ドラマチでは、劇化してスタッフなど他者が演示したものを見て理解を深め、討議する。
手法の特徴としては、次のようなものがある。
- 研修手法として興味深いので、積極的な参加が促されていく
- 参加者各自の弱点がわかってくる
- 実際に演じてみることを通じて「知ること」と「行うこと」のギャップがわかってくる
- 「他の振り見て、我が振り直せ」で人に対して寛大になり、自分の癖もわかってくる
- 発表力や表現力が伸ばさせていく
- モノに対する考え方そのものが幅広く豊かになっていく
ねらい
与えられた状況で、実際に動作を演じることによって、人々がどのようにふるまうかを探求することから、体験化による「態度を変容」「技術を習得」「課題解決能力の向上」を期待できる。また、役割を演じることを通じて、第三者の視点とは別に主観的な観点から深く理解することができるようになる。グループの2人以上のメンバーが、ある状況の中での人たちの役割を演ずることにより、人々がどのように振る舞うかを探求することができる。ロールプレイを通して、より現実的な状況を把握することができるが、注意しなければならないのは、娯楽や教育に名を借りた演劇に終始してしまってはいけないことだ。ともすれば、ロールプレイを演じ切ることに目標を置いてしまいがちで、それによって「研修のねらい」が達成されたわけではない
また技法を体験した結果、次のようなことが期待できる。
- 日常生活や組織活動の中で「役割」を理解して、相手の立場に立って理解できる(折衝能力や協調性の向上)
- 相手の立場が分かってくるので、積極的に自分の役割を意識した、自発活動が促される(態度の変容)
- その立場になって知るので、技能の習得にも有効
ロールプレイの進め方
- グループに対して、状況設定についての説明を行う。ポイントは「状況のあらまし」「前提として登場する人物の描写」などを解説すること。
- 想定を理解したら、2名以上のメンバーが進行に応じて「自分たちのセリフ」を創って、状況を「演じる」ようにする。
- 演技が終了したら、グループで討議して、演じた役割の行動、会話内容、演技者の感情の鍵となる特徴などを分析して、相互に評価し合う。
ロールプレイの限界
- 他の方法と併用しなければ、効果的でない。
- 程度が高い意思決定とは縁が薄い。
- うまく用いないと研修の場が茶化しただけに終わってしまう
研修手法11-2. ドラマチゼーション(dramatization)
解説
ある状況について理解しやすいように複数人によって劇化または脚色をすること。各種の会議や面接会、セレモニー等の様子をスタッフが演示して理解を求めるような場合に使われる。ロールプレイの時と同様、演劇ではないので、無意味な誇張や必要な部分の簡略化は、誤解や誤認につながりかねない。演示されるものは一例であり、絶対的なものでないことや、不可欠な場面についての解説を付け加える必要がある。ビデオなどで、実際の映像を観せる方法も考えられるが、目的や計画に応じて使い分けることが必要。ロールプレイとは別のものであることを認識しておくこと。
ドラマチゼーションの進め方
- グループに対して、状況設定についての説明を行う。ポイントは「状況のあらまし」「前提として登場する人物の描写」などを解説すること。ここまではロールプレイと同じとなる。
- 想定を理解した上で、演者がグループの前で役割に扮して、状況を「演じる」。
- 視聴が終了したら、グループで討議して、演じられた役割の行動、会話内容、演技者の感情の鍵となる特徴などを分析して、評価してみる。
研修手法12. ゲーム(game)
解説
ビジネスゲーム、マネジメントゲームとも言われる。ロールプレイの1つの展開方法で、ここでは参加者は、ゲームの管理者によって、ある程度詳細にわたって作られた想定上の状況において、様々な役割を引き受ける。いわば想定された舞台の中へ引きずりこまれ、状況を考慮した上で選択し、決定を下し、実行する。参加者による決定はゲームの進行に従って、あるいはゲームの終了後に分析され、評価される。ゲームは限られた時間内に実施されるが場合によっては数日にわたることもある。
ねらい
できる限り、現実的な状況を再現して、参加者が与えられた役割の体験を通じて、任務をもっと学び、任務の意味するところを学べるようにする。
ゲームの進め方
言わば、シミュレーションの高度な形であるとも言えるので、慎重な準備を必要とする。
例題:あるニュータウンにおけるファンドレイジング・キャンペーンの実施計画を立案する
1)グループで作業するために必要な情報のすべてを手に入れるところから始まる。
- ニュータウンの詳細を示す地図を含む資料
- 地域の課題認識
- 周辺地域におけるキャンペーンの反応と詳細
- その他
2)グループで、手に入れた全ての資料を研究し、計画を立案して、決定を下す。検討の中には、新しい条件(例えば、有益な支援者によってキャンペーンの事務局を置くことができる建物が提供される)が提供されると、参加者は状況をもう一度研究し、計画や決定を修正しなければならなくなる。
3)最後に、各グループは、自らの立案した計画を、他のグループに発表する。
注意
- ゲームは、熟練したトレーナーと経験のある参加者によって構成されたセッションで効果を発する高度な研修手法である。
- ゲームがまるまる一日かかっているような場合には、最終的な結果(計画立案)よりも、ゲーム中に参加者が役割からどれだけ学んだかということのほうが重要である。そのような場合、研修担当者は、すべての機会をとらえて、参加者が確実に学習経験を深めるようにしなければならない。
- 実施に当たっては、多くの準備を行い、実際に研修で用いる前に実験的なグループでテストすることが大切。その反応を通じて、どのような成果が導かれるか、陥りやすいことは何かを見極めて改善の手がかりとすることができる。
研修手法13. ベース(base)
研修を進めるためにいくつか設定された「基地」。
解説
参加者をいくつかのグループに分け、設けられた場所(ベース)を順次訪れ、定められた時間を過ごして巡っていく。グループと同じ数のベースを設けて運営することにより、効率よく同時進行の各ベースを順次移動するができるため、比較的短時間に、少ない器材で、技能訓練の特定面を集中的に演示したり、興味深く研究や実習ができる。
各ベースでは、[導入の話、デモンストレーション、実習]が行なわれ、ベースの運営は担当者に任されるが、事前に十分準備をしておかなければ、各グループに平等な情報提供ができない。各ベースでは同じ単位時間で修了させなければならないため、時間内に伝えきれない場合にはハンドアウト(配布資料)によって補足することも必要となる。
研修手法14. エクササイズ(exercise)
慣れるために繰り返し習うことで「演習」ともいう。ある特定の技能について、個人あるいはグループに対し、実際の情況を想定して行う訓練。説明または指示した方法で実習する機会を与え、技能の向上を図る。
研修手法15. プロジェクト(project)
エクササイズを更に発展させた手法で、例題「特定の仕事へ取り組む」にあたり、実行の方法については指示されず、どのような技能や手法を用いるかの決定は、すべて参加者に委ねられる。エクササイズ同様、個人またはグループで取り組む。企画、技能、活用技能などを総合的に実習させることができる。企画立案および実施のように、進取の気概と創造的な考えを生かすことができる機会として、重要な手法。
プロジェクトを進める上での留意点
プロジェクトを行なう場合、より多くの資料や設備、器材などを必要とする他、専門家や指導者の助言や同僚などの援助も必要になることがあり、それらに対応できないような例題は指示すべきでないことを認識しておかなければならない。
研修手法16. ワークショップ(workshop)
仕事場あるいは研究集会の意味で、参加者をいくつかの小集団に分け、実際的な仕事についての実習を行った後、その成果を何らかの形で展示する。
口頭や文書による報告ではなく、写真、掛け図(図表・グラフなど)、作品などの陳列品や、学習した技能や行なわれた仕事の実演発表などによる『展示』を通して、他のグループも学習することもできる。他のグループがどのように実習したかの説明を加えなければ、単なる発表会に終わってしまい、ワークショップの狙いは達成されない。実際には、携わった仕事について最も効果を上げることができるので、関心のある課題や課業については、事後に他のグループの参加者の助言を得て研修するとよい。
研修手法17. KJ法
解説
元東京工業大学教授の川喜多二郎先生の提唱された発想法で、そのイニシャルから命名されている。着想を呼び込むための手法。このKJ法が問題解決に寄与する意義としては、次の点があげられる。
- 個性尊重の多様性をもつ
- 少数意見を尊重する思想を持つ
- イメージの形成過程がビジュアル化されて展開する
- 無心の行動によって思考する
KJ法の進め方
第一段階・・・紙切れづくり
参加者から、ブレーンストーミングやバズセッション等の方法によってできるだけ、多くの意見を引き出し、それを一項目ごとに名刺大の用紙に記入する。次いでこの紙をカルタ取りのように広げて、内容の親近性のある項目をひとまとめにして、その内容に適した表現の一行見出しをつける
第二段階・・・グループ編成
これら小グループの表現から親近性のある小グループを近づけ、中グループをつくり、だんだんと大グループへとまとめる。これは既成の分類基準の枠に押し込める弊害を避けるためで、このKJ法の特色ともいえる。ただし、この段階でどのグループにも入りにくいモノは、無理にまとめてしまわずに、「離れサル」として一枚で一つのグループにしておく。
第三段階・・・図解化
大きなブロックから、それぞれの表札によって空間配置をして、互いの関係を考察して、これを紙に描き、関係の深い事項で結ぶ。空間配置には直観的で、象徴性を持たせることがポイント。
第四段階・・・文章化
このブロック図を説明文のごとく文章化することによって、また大きなヒントが得られる、大きな仮説が得られるようになる。文章化することによって論理的思考が働く、整然とした論旨が形成されていくことになる。
(「発想法」「続発想法」川喜多二郎著 中央公論社)
(「問題解決学」川喜多二郎著 講談社)
KJ法の手順を平坦化して、小集団活動などの現場で活用されているやり方が「カードミーティング法」だ。職場の場合には全員が揃わないこともあるが、カードだけは書き出しておいてもらい、回収することで参加を促し、少数意見も尊重することができる。
<カードミーティングの進め方>
着想
0.画題(テーマ)に関することをまず各自で黙して考える。
グループ編成
1)グループ編成をし、各々のグループごとにミーティングのできる配置づくり
2)1人5枚ずつ白ラベルカードを配る
カード化
3)1枚のカードには1つの問題点あるいは対策を具体的に書き込む(1つのカードに複数の問題点を書き込まないように注意する)
4)メンバー数が3人以下の時にはカード枚数が少なくとも20枚以上になるように木揚力して補足する
5)5枚のカードに書き込みを完了したものは、裏返して全員が書き込みを終了するのを待つ
6)カードを各自で切り離し、裏返して模造紙の中央でまぜる
7)グループの1人あるいはリーダーは全部のカードを集める
8)トランプのようにカードをよく切って各人へカードを配る
9)手元に配られたカードの中に自分の書いたカードがあるときは近くのメンバーとカードを伏せたままでそっとカードの交換をする
10)カードを自分の前に並べて黙読する
グルーピング
11)グループの1人あるいはリーダーはまず任意の1枚のカードを全員に判るようにゆっくりと読み上げ、場の中央に出す
12)他の人はそのカードと同じ意味と思ったカードがあれば、全員に聞こえるように読み上げて、メンバーが同意したら出していく。順々にカードを出して関連付けていく
13)同じ意味のカードがなければパスする
14)このように順次、カードをだしていくと自然とカードがグルーピングされていく。関連するカードが出尽くしていくまで続けていく
15)グループの1人あるいはリーダーは別のカードを読み上げ、同様にグルーピングしていく。どうしてもどのグループにも属さないカードは単独にしておく
16)全員がすべてのカードを「場」に出し終わったら、全員で全体を俯瞰して、グルーピングしたカード群に大きなあやまりがないか、みんなでチェックする。またグルーピングしたカード群とカード群との位置関係についても、例えば流れや時系列なども考慮してそれでよいかを確認する
17)その際に同様の内容でグループ化できそうなものは統合する。単独カードについては整理したカード群に含めることができないかを検討するが、無理やりどこかにいれてしまわないで、独立したカードは独立したものとして扱う。
表札づくり
18)カード群にふさわしい表現を考え、青ラベルで表札をつくる(表現は名詞形で統一する)
19)表札ごとにラベルをチェックし、補完すべき事柄がないかを確かめる
20)表現が足らないところは白ラベルで補う
21)新たな表札をたてる必要があるときは白ラベルで群をつくる
22)再度、全体を俯瞰して、整える。
研修手法18. インストラクション(instruction)
インストラクター(instructor=指導・支持を与える人、指導員、教師) は、まず口頭の指示、次に演示をした後、受講者に演技をさせて学習を進める、主に技能訓練に使われる手法。
研修手法19. オープン エンド(open-ended)
セッションのまとめ方の一つ。各種の訓練手法を展開した後、無理に<まとめ>をするのではなく、参加者に課題意識を持続させる終わり方をする場合がある。結論を出しにくいテーマや方向性を示す目的の課題の場合、自己研修やグループ研修の継続に結びつけることもできる。
ファンドレイジング・コンサルタントへの道
▷ #25 個別支援と動機づけ
▷ #24 ビジョンへ向かうアクションプラン
▷ #23 ソーシャルセクターの支援者発見と組織状態の確認
▷ #22 ソーシャルセクターの組織と役割
▷ #21 ソーシャルセクターの経営と役割
▷ #20 効果の高い事業紹介のコツ
▷ #19 効果的なイベント出展のコツ
▷ #18 共感性の高い主催イベントのコツ
▷ #17 イベント協賛のアプローチをする
▷ #16 ファンドレイジング・イベントを企画する
▷ #15 計画の進捗を管理する
▷ #14 事業計画をたてる
▷ #13 現状確認と課題解決
▷ #12 ゲームの活用
▷ #11 効果的な研修手法について2
▷ #10 効果的な研修手法について
▷ #09 研修の組み立て方
▷ #08 寄付のハードルを下げる「寄付付き商品」の活用
▷ #07 ベストプラクティクスを研究して、提案の引き出しを増やす
▷ #06 ヒアリングを通じて、前向きな機運を醸成する秘訣
▷ #05 ヒアリングの技術を磨く
▷ #04 話す前に~120%の準備で70%のチカラを発揮する
▷ #03 周囲を引き寄せていくための話し方
▷ #02 コンサルタントに必要な技能
▷ #01 コンサルタントの役割