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団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第1話

ファンドレックスは、皆様のおかげを持ちまして、創立15周年を迎え、我が国におけるソーシャルセクター向けに特化した伴走支援、とりわけ資金調達や事業開発に強みを発揮するコンサルティング会社としてご愛顧いただいております。

「社会を変える」を実現する~そのチャレンジに戦略と実行力を~

を合言葉に、顧客のミッションへ真摯に向き合い、その実現をリードしてきました。
当社のスタンスといたしまして、物語の主役としての組織を様々な側面から支える、いわば『黒子』に徹することから、具体的な顧客名や支援事業の内容等をお伝えすることを差し控えております。

社会的課題に向き合い、よりよい解決策を模索されている組織団体から、私たちの元へ日日の中でのお困りごとや悩みをお聞かせいただくことが多々あります。100の組織団体には、100の解決策があると思いますが、本稿では実際に私どものほうに対して寄せていただいた「質問事項」「ご相談内容」を題材に、私、イノウエヨシオ個人としての回答事例を紹介することで、少しでも貢献していきたいと思います。「自分たちの組織にはまったくその通りではないが、参考にはなる」とご関心を持っていだたければ幸いに存じます。こうした取り組みを通じて、組織が次のステージへ向かう一助となればと思います。

Q1.長年、NPO法人の活動を行ってきたが、ずっと代表としてやってきていて、後進が育ってきていない。私自身が息切れすると、NPOも活動が停滞してしまう。世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

A1.日夜、社会の課題解決に向けて、まさに身を削って、自らの時間も費やして、世のため人のために、尽くしてこられたことにまずは感謝と敬服を申し上げます。
そのなかで数多くの出会いや手を貸してくれた方々がいらっしゃったかと思いますが、気づいてみると、時間がたってしまっていた。目の前に困っている方がいるので、自分自身のことはさておき孤軍奮闘の歴史であったかもしれません。

親睦のための組織であれば、永続することで、喜びを享受し続けていきますが、課題解決のための組織は、活動によって課題解決すれば、初志貫徹ということで団体を解散されるところもあります。しかしなかなか、そんなに簡単なことではなく、多くは活動を続けていく中でまた新たな課題が発見され、次なる挑戦を進めていかれるのではないでしょうか。

そうした中で「世代交代」というのを進めていくのは、容易ではないと思いますが、この機会に組織団体の総点検というか、誰の為に取り組んでいるか、何の為に取り組んでいるか、どんなことを生み出してきたかについて棚卸されておかれると、だからこそ次の一歩に必要な人財と取り組みすべき方向性が明確になっていくのではないか思います。

歴史を確かめ、コアコンピタンスを描き出す

見極めのためにいくつかの観点で組織団体を振り返ってみましょう。

  • 活動を開始した時の背景にはどんなものがありましたか?
  • やむにやまれず走り初めてしまったきっかけは何だったか?
  • 資源が不足するなかで上手く軌道に乗せることができたのはどんな点でしょうか?
  • 他に比べてユニークな点を挙げるとしたら何でしょうか?
  • 組織運営の中で、特に工夫を重ねたところは何でしょうか?

などの設問を通じて独自のノウハウを明らかにしていきます。

効果的なのは関係者のインタビュー。インタビューを通じ、客観性をもって組織団体が歩んできた道のりと提供できている価値、これから何を目指していくのかが「現在」「過去」「未来」の視点で整理されていきます。

こうしていくことで、未来に向けて、組織団体として何が大切なのか、譲れないところは何か、環境の変化によって実際の取り組み内容はどんどん変化をせざるを得ないけれども、これをしなかったらその組織団体ではないというところはどこかが浮き彫りになってきます。

次に浮かび上がった事象を時系列と環境変化で整理する

そのなかで、スタート時に描いていたミッション、実現したいビジョンをみつめなおしてみましょう。

  • 何に不便不自由を感じて、どんなことを解決したいと思って活動し始めたのだったか?
  • そして、次にそのビジョンは今でも有効かつ魅力的でしょうか?言い換えると戦略的に人々の気持ちを掻き立てるものになっているでしょうか?
  • 新しい時が満ちてきているのに、それを果たして受け入れようとしているでしょうか?
    経年変化で権威的となり、自分たちは素晴らしいと安住してしまって、これ以上の成長を拒んではいないでしょうか?

スタート時に掲げてきたことから始まって、どこでどのように変化してきたかをとらえ直していくことができます。そして、組織団体を取り巻く環境は変化していきます。前提となる条件が変わり、それらに応じて取り組みを変える必要があります。

そしてその上で、もう一度振り返ってみましょう「そもそも取り組みすべき社会的課題は?」

プロセスにメンバーを巻き込むことで、担い手が浮上する

こうしたスタート時から、現在の時点を経て、未来へ至る道筋を見つめ直してみるプロセスで担い手が志を深めいくことで、次代へバトンを渡す機運が醸成されていきます。

理事会や事務局メンバーへきっかけを与えるためには、自組織団体のことばかりに終始せずに、最近の他団体の取り組みや特徴的な社会的課題の状況を提示することで、翻って状態と目指す先(ビジョン)を俯瞰し直すことができます(リ・ビジョンニング)

そうしていくなかで、これを外さなければといった、自分たちらしさの基準が再設定できるようになってきます。いわばそれ以外は思いきって変化させることができるようになる環境が整ったと言えます。そしてそれらを整理して浮き彫りにしたメンバーは、実現すべきビジョンに向け組織団体を運営していくチケットを手にしたと言えるでしょう。

世代交代だけでなく、人が去っても場が残る、それは組織団体の中にしっかりと「らしさがある」からです。

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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