経営/マネジメント
中間支援組織に必要な機能は?:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第7話
Q7・地域で活動している団体だけでは、うまく県域全体をカバーできないので、中間支援組織をつくりたいと思いますが、どんな仕事がありますでしょうか。
A7・いいところに目を付けられましたね。またその覚悟がひしひしと伝わってきます。自分のところの団体が伸びたら良いと自分のところだけを考えるだけでなく、全体が克つことが大切なのだと思いを馳せられていて、その志向自体がもう中間支援になっているかと思います。
中間支援組織は、よく「NPOのためのNPO」という表現がされたりする通り、ひとつの団体だけでなく、その地域や分野全体を発展させていくために、或いはセクター全体の底上げを図ったり、ひとつの団体だけではできない基盤整備や全体の制度や仕組みづくりを担ったりします。
具体的には、例えばファンドレイジングに関わる、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会は、「ファンドレイザー」という資格制度を創り出し、組織に関わるみんなが守るべき「寄付者の権利宣言」や「ファンドレイザーの倫理規定」を呼び掛けて、日本のファンドレイジングが正しく浸透して発展していくために、必要な制度や基準をつくっています。
またさらにそれぞれの分野や地域において必要なファンドレイザーが自然に促され、かつ持続可能に生み出されていく(エコシステム)となるように、分野別チャピター、地域チャピターなどを設けて、まさに中間支援として役割を果たしています。
ちなみに、業界全体の底上げやしくみを創り出す「日本ファンドレイジング協会」に対して、当社、「株式会社ファンドレックス」は、特定の組織が力をつけてファンドレイジングに取り組みできるよう基盤整備や戦略設計、伴走支援を行っています。従って、同じような取り組みをしていたとしても、基本スタンスが違うのだと理解していただけるかと思います。
さて、中間支援組織は、ひとつひとつの団体と対話して全体に大きく寄与していきますが、個別に社会課題を解決する現場を持っているわけではないので、いっけん目立たないかもしれませんが、実は大きな仕事をしているのだという言い方ができます。
それぞれの団体が活動しやすいように行政や地域と掛け合う社会的基盤整備や、担い手を量的にも質的にも増やしていく人材育成に取り組み、資源を提供したい企業や個人と必要としている団体を資源仲介して繋ぎ、取材や連携をしたいという申し出をコーディネートします。こうしてみていくと「繋ぐ役割」というのがまず必要かと思います。
ひとつひとつの団体が取り組む社会課題からサービスを受け取る「受益者」と必要な資源を提供する「資源提供者」を繋ぐ際に、時としてそれぞれの立場に立って、意見代行をして話を進めることもあり、仲介者という意味合いから「インターミディアリー」と呼ばれることもあります。
その次には、ひとつずつの団体や全体の底上げ、育成に関わる一方、資源を提供する側に対してもサポートが挙げられます。中間支援組織を「団体を育てるインキュベータ(孵卵器)」と形容されるのは、まさにこのような立ち上げサポートのイメージですね。さらに経営マネジメントをサポートする目的からMSO(マネジメント・サポート・オーガナイゼーション)という言い方もあります。
さらに資源提供の側、受け取る側と区分けするだけでなく互いに立場を越えて話し合いをするなどネットワークとしての場をつくり、地域や分野の活動を促進させることもあります。
このようにして繋がりが深まっていくと、個々の団体のことがさらにより把握できるようになり、さらなるニーズを発掘したり、個別だけではできないネットワークならではの働きかけ、例えば共同で社会的課題について理解を求めたり、共有したことを外部に発信したり、資源の提供者も一緒になって話し合うなどして、結果として今までなかった新しい解決方法を生み出すことのあります。
こうしてみると中間支援組織としてまず、資金、人財、ノウハウといった「資源の仲介」としての役割に取り組み、それによって団体と団体、団体と提供者といった「ネットワークの促進」が進んでいき、結果として「新しい価値創出」を生み出すことになるかと思います。
その中で最も大切なのは、「資源の仲介」。ここには、社会的基盤の整備やそのコーディネート、人材育成も伴ってきます。かなり具体的に書き出すと以下のような仕事があるので、まずそれぞれを実現していくために、どうしたらよいかを検討されると良いのではないかと思います。
中間支援組織として持ちたい機能
1.働きかけ(社会的基盤の整備)
行政へ予算化、行政計画への反映、アドボカシー、提言
2.新規相談(人財育成)
団体を立ち上げたい、経験を積みたい
3.資源獲得相談(人財育成)
助成金、事業収入、寄付等を集めたい
4.企業連携(資源仲介)
企業からの支援相談、申し出のコーディネート
5.資源分配(資源仲介)
企業連携の結果を調節、独自の寄付集めや支援受付
6.取材対応(コーディネート)
取材依頼がはいった際の現場コーディネート
7.問い合わせ対応(コーディネート)
記事を見て支援(寄付・ボランティア等)の申出
本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。
ソーシャルセクターのお悩み相談BOX
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?