経営/マネジメント
人が続かない、どうすればよいか:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第6話
Q6・おかげさまで「ファンドレイジング」に取り組み、認知度拡大して寄付額も増えてきていますが、せっかくこれまで前進を続けてきたところでスタッフが辞めてしまいます。「手塩にかけてきた」というのは、古い言い方かもしれませんが、私なりに心を砕いてきたつもりでした。どうしたらよいでしょうか?
A6・せっかくこれまでやってきたにも関わらず、気心の知れたスタッフが抜けていって、そもそも順調な業務も大変なところ、穴埋めや他のスタッフのケアなど大変な状況であることをまずはお察しいたします。
しかしながら、まず未来永劫、人が続くということはないという前提をもたなければなりません。人材市場はさらに流動化していきスキルアップを願って、ステージを変える方はもっともっと多くなっていくでしょうし、ファンドレイジングについての求人も数多くなってきた社会的背景は理解していかねばなりません。
また私自身の経験ながら、以前に別の企業でたくさんのスタッフと一緒に仕事をしていた時に、退職の理由に「3年たったから」というのがありました。職場や制度に不満を行ったらきりがないけれども、キャリアチェンジを考えて「石の上にも3年」の期間が済んだので、だから辞めるのだという理由でした。
こうした前提の上で、人を雇用し続けていくというのは、待遇改善や働き方改革といった雇用条件や制度の向上もあるかと思いますが、以下のような観点で対応されていかれたらと思います。
人財を繋ぎとめて活性化する3つの観点
1)環境整備
まずは待遇改善、働きやすい職場、育休ライフワークバランス、フレックスなど取り入れていけるしくみはいくつかあると思いますので、検討を進めておられると思いますが、すぐにできなくても段階的にいつ頃、こうしたことを進めていくというカレンダーも有効です。
全体的な底上げ以外には、成功報酬などを設けて、やりがいをもてるようにすることもあります。またスタッフのモチベーションを保つために、評価されていることや将来のスキルアップの機会を提供するというのもあるかと思います。違う現場を見るということで例えばアメリカのファンドレイジング大会へ参加して現地の団体ツアーなどで知ったことを実現してもらう係になってもらう等もあるかもしれません。
今の職場環境で自己成長を実感できて、各自の人生ビジョンに貢献できる場であることを認識できるか、本人にとって日々を過ごすだけでなくも人生の修行と感じられるかは、対話にヒントがあるように思います。
2)意見反映
アイデアを生かして、尊重し取り入れるしくみをとるのは、事業に対して言われているからやっているのではなく、自分事として、自分たちで改善を促す文化を生み出すことに繋がっていきます。
社員参加型のイベントも実は楽しみのひとつですが、こうした機会に軸を自分に対して向けていくようになっていきます。しっかりと時間をとって定期的に行う「ワンオンワンミーティング」の実施は有効な施策の一つですが、座る位置が対峙していると立場を対立しているように感じるので、理想としては車の運転席と助手席のように進行方向へ「同じ方向」を向いて話し合うことができるとよいと思います。職場のなかで理解と協調の場や機会をもたせて、全員で実行している実感をもつことになればよりよいです。
その際に忘れてはいけないのは「熱を伝える」こと。特に代表者は、外部へ伝えている姿や顔と内部とのずれが出ることもあります。「ミッション、エモーション、パッション、アクション」、繰り返し、使命は何かを見つめて語り、思いを形に変えて語り、熱意を伝えるために語り、実行していくことで経営方針の共有に務めることです。
3)支援者との一体感
ソーシャルセクターではスタッフと共に、支援者となっていただける方との一体感も実はスタッフにとって大切。
あの方たちからの大切な思いをお預かりして、これを実現しているということを、毎日のルーチンワークの中では社会のために役立っている実感がないため、この作業がどのように社会を変えていくに繋がっていくのかを理解させていく必要もあります。
そこで最もよい影響を与えられそうなのは、「支援者からの感謝」で使命感を再確認できるということはとっても大切な機会となります。また代表者やリーダーだけでなく、現場のスタッフも総出で「感謝の集い」に出席することは支援者にとっても「応援してきてよかった」と思う機会となりますし、スタッフみんなで直接「支援者の声に耳を傾ける」経験は「何のためにやっているのか」に繋がります。
最後に
それでも辞める場合には、友愛の気持ちをもって送り出していきます。むしろ趣旨を同じくしていた仲間、繋がりをもった人物が世のなかに拡がったと考えていくべきです。
本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。
ソーシャルセクターのお悩み相談BOX
▷ 第18話:「地方には成り手がいない」に、どう対応するか
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?