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ファンドレイジングって、結局、何?:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第5話

Q5・いまさらながらで恐縮ながら、普段なかなか聞けないことをお尋ねしたい。「ファンドレイジング」というのは、結局、クラウドファンディングなどによる資金調達のことだと思ったらよいでしょうか?

A5・ファンドレイジングは、社会を変えていく方法でもあります。
狭義の意味あいでは、団体組織が活動するための「事業資金の調達方法」ということになりますが、非営利組織では「寄付・会費」を得ることだけでなく、そこに至るまでのプロセスやその後の展開までも範囲に含んでいます。
群衆(Crowd)+資金繰り(Funding)を組み合わせた造語の「クラウドファンディング」は主としてインターネットを使って不特定多数から資金を得る方法ですが、おおよそ1-2カ月の短期のプロジェクトであることが多く、ファンドレイジングのための1つの方法でしかありません。

組織の存在意義(ミッション)とは、社会的な課題解決によって、創り出したい未来(ビジョンの実現)、それによる新たな社会的価値の創造が目指すところ。従って「ファンドレイジング」とは単なる資金調達を超えて、寄付・会費への協力を呼び掛ける際して、取り組む社会的課題を説明して、その理解者を増やしていきます。社会的課題に「共感」してもらったら、次に取り組む方法(解決策)に「納得」していただき、それに取り組む仲間となる意思表示として「寄付・会費」に応じていだたけるということですね。

しかし、その時に「寄付・会費」に協力していただくだけでなく、実はこうした社会的課題があるんだと多くの方へ知ってもらうことにこそ、本来のファンドレイジングに取り組む意味合いがあります。こうしてみるとファンドレイジングの日本語訳としては「事業資金の調達」というよりは、組織をよく知ってもらう「広報」とか、世の中にある課題へ一緒に手を携えていこうとする「社会連携」といったほうがしっくりくるかと思います。

ただ「ファンドレイジング(Fundrasing)」という言葉のままで使っているのは、ぴったりとその言葉の表す範囲を示す用語がないことと、「ファンドレイジング」という言葉をキーワードにして世界中の叡智を引っ張り出して活用することができるからです。

ファンドレイジングでは「働きかけ」によって多くの人に知っていただくことが目的で、そのうちの何人かが「寄付」という形でより一歩参加していだたけたとイメージできたのではないでしょうか。こうして認識が変わって拡がっていくことを「社会が変わる」といえます。

このようにファンドレイジングでは「働きかけ」そのものが大切です。そうした効果が充分に発揮されるためには、ファンドレイジングでは戦略設計も必要なプロセスです。

日本で定着してきた「ファンドレイジング」

当社、ファンドレックスが創業した2008年(平成20)の頃には、「ファンドレイジング」という言葉を知っている人は日本では数少なく、いくつかの団体で名刺交換させていただくと肩書で「ファンドレイザー」と書かれていたり、「ファンドレイジングチーム」とグループ名のように記載されていることがちらほらとあったぐらいです。

その後、2011年(平成23)の東日本大震災以降で、日本では「クラウドファンディング」が急速に広がり、いくつかの災害支援や最近ではコロナ禍などを経て、NPOや公益法人だけに留まらず、一般の事業者などもクラウドファンディングで共感を軸に、多くの方から資金を得ることができるようになってきて、クラウドファンディングについては毎日のように新聞記事にもなっているように市民権を得ました。特にこれまで資金が集まりにくかった分野でさえも多くの共感が集まるようになってきたのも特徴的です。

同様にファンドレイジングも2009年(平成21)に日本ファンドレイジング協会が発足して、ファンドレイジングの優良事例をみんなで共有する「ファンドレイジング大会」の開催や、支援したい人と支援を受けたい組織を繋いでいく「認定ファンドレイザー制度」を発足させるなど、セクター全体の制度や仕組みづくりに寄与してきました。その結果、助成金の申請用紙に、あなたの組織にどれぐらい「認定ファンドレイザー」がいるかを記載する欄が設けられたり、ファンドレイザーの繋がりとして地域のチャピターに加えて、アート、大学、災害など分野別のチャピターもでき、持続可能なエコシステムとして踏み出してきています。

このような流れを受け、社会貢献教育や寄付月間などの取組みもあって、露出もあるため、一般の人びとにも馴染みのある言葉になってきました。

共感の拡大こそが、ファンドレイジングの意義

組織が取り組みしていることは、組織だけで完結するのではなく、社会との連携がとても大切であり、必要です。むしろ、他へ呼びかけせずにやるのならば、組織を設ける意義がないといえます。

「働きかけ」の実際では、課題に共感してもらい、解決策に納得してもらうことを愚直に繰り返します。これは単に「お金をください」と施しを乞うわけではありません。このようにファンドレイジングとは単なる「寄付集め」のことではなく、共感によって仲間感が高まり、同情心を超えて自分事としてとらまえ、語りかけられた自分が自分事としているため周囲に語りかけ、共感が拡がっていきます。

これは、ソーシャルセクターだけに限ったわけでなく、事業を進める企業でも最近は、ファンマーケティングなど「共感」や「自分ごと」にしてもらうことを大切にされていますし、コロナの影響の中では「応援消費」というある意味、共感性の高い資金循環も地域や特定分野などでは拡がりつつあります。「推しカツ」というのも同様に、共感性の高い消費行動だと思います。

「共感」「共感経済」「共感資本主義」が時代のキーワードのようになってきて、そのなかでいかにして支持を得ているかが、いいねの数が極端に増えたとか、寄付額が伸びているとか、共感のバロメーターになるものはいくつかありますので、それらを指標にして「働きかけ」の成果を見ていけばよいのではないかと思います。

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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