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クラファンで成功するためには:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第10話

Q10・クラウドファンディングへ何度か挑戦しているが、なかなか目標額に達しない。どうしたらよいか?

A10・こちらも最近、特によく伺うご相談です。プロジェクトを立ち上げれば自動的にお金がどんどん集まってくるかと言えばそんなことはありません。

毎日のように、新聞やネットメディアでクラウドファンディングの記事を拝見するようになり、NPOなどの社会貢献団体だけでなく、一般の事業者や個人の方々も数多く挑戦することが一般的になってきました。

いわばそのすそ野が広がり、数多くのチャレンジが増えたこともあり、そのなかで埋没せずにしっかりとプロジェクトが認知されることが大切ですね。

クラウドファンディングのメリットとデメリット

クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、何かを実現したいと「志」を持った人や団体が、インターネットを通じて不特定多数へ呼びかけ、少額ずつ資金を集め、それを基にして物事を実現する手法をいい、ファンドレイジングの中でも、短期的な手段のひとつです。

メリットとして、資本力や知名度がない個人や団体が、元手がなくても事業のスタートがきれ、欲しい人が集まって初めて実行可能となるため(All or Nothing方式の場合)、資金調達のリスクを回避でき、事業開始前だけでなく開業後も顧客や応援者となってくれるなどがあげられます。

また支援する側にとっても少額から気軽に参加でき、興味深い分野や応援したいプロジェクトを選択して、寄付や投資先として注目を浴びています。

SNSとクラウドファンディングの相性が良いので、支援する側も自らのつながりから周囲へ参加を呼び掛けることで、企画者だけでなく、幅広く情報が拡散できます。また、寄付や投資家は支払った金額に見合ったリターン(返礼品など)を受けとることができることも大きな魅力で、欲しい物品やサービスばかりでなく、普段であれば味わうことのできない体験価値や支援者だけに提供される特別な体験などが人気を集めています。

図1クラウドファンディング概念図

特に最近増えている事業者が新しいサービスや商品を、試験的にクラウドファンディングしてみるという傾向は、これまでは世の中に出てからでないとできなかった商品やサービスのファンが、ローンチ前から出現して、意見交換をしたりニーズの把握ができるので、商品づくりに活かして、発売後も頼んでいなくても「推しカツ」してくれたりとよいメリットが数多くあります。

支援者はそうすることによって、社会と繋がり、新しい潮流の始まりに近いところにいる実感ももつことができて、価値に見合ったリターン以外にも強い満足度を感じるようになります。

クラウドファンディングの定義や実践については数多くの知見が本やネット記事から得られると思いますので、ここでは、ポイントを絞ってご紹介したいと思います。

クラウドファンディングで成功するための5つのポイント

成功のポイント1「テーマは簡潔にビジョンを描いているか」
成功のポイント2「リターンの魅力を高めているか」
成功のポイント3「期間中に何度もピークをもってムードを高めているか」
成功のポイント4「使えるものは何でも使う姿勢で当たっているか」
成功のポイント5「ひとの成長を見越して進めているか」

成功のポイント1「テーマは簡潔にビジョンを描いているか」

しっかりとお願いしてお金をくださいと伝えているか、は最も大切なことですが、その前にプロジェクトのタイトルやテーマは、共感を集めるために、適切な言い回しになっているでしょうか?

プロジェクトタイトルという字数制限のある中で、最もよい組み合わせは「現在の状態となりたい未来を一文にする」ということです。

例えば、「からっぽになった大正から続く銭湯をお客様で満タンにしたい」(28文字)
のように、実現したいことをできるだけ具体的に伝えることです。いわば近未来に実現したい状態(ビジョン)をしっかりともって、プロジェクト本文では具体的に説明をしていくのですが、タイトルではそれを象徴的に伝えることへ注力します。

また自分たちの望みを実現したいのは当然ながら、それらを通じて社会的課題を伝え、自分たちがその解決策として位置付けて、共感と納得を得ることも大切にしましょう。

成功のポイント2「リターンの魅力を高めているか」

魅力的な返礼品リターン。たくさんの価格レンジを用意しておき、多様なニーズに応えることが基本ながら、価格だけでなく体験価値についても考えてみましょう。

普段は入れないところに入れるとか、現場の方のお話しを聴けるというだけでも効果は大きく、まさにプライスレス。ある方にとっては、あまり意味をなさないようなものでも、その道の人にとっては喉から手が出るようなと表現できるようなものを取り揃えていくと、楽しくなってきます。単にお金を出せば入手できるものでない付加価値を考えてみましょう。

成功のポイント3「期間中に何度もピークをもってムードを高めているか」

「ファンドレイジング」は「フレンド・レイジング」とか、「ファン度を高めていくこと」等とも紹介されることがありますが、まさに仲間づくりです。

ここには二つの要素があって、ひとつは「身近へまず発信」で、情報の発信をしていきなり見知らぬ人から支援が得られるということはまれで、情報の伝達としてはまず自分たちに一番近いところから、つまり家族・親族・職場の同僚・友達・知り合いといったところへ発信して、そこから徐々にその周囲へと浸透しだすイメージです。

もうひとつは「新しいニュース」で、繰り返し発信を行うためには、前回とは違う何か新しいニュースをつくる必要があります。このふたつが拡がっていくために、最近、効果的だなぁと思われるのは、「オンラインイベント」です。

オンラインでの記者会見、オンライン学習会、現場レポートなどいろんな形がとれますが、寄付のお願いだけでは、何度も伝えづらいけれども、「次こんなのがあるからちょっと聞いてみてよ」ということがあれば、気軽に伝えてもらえると思います。

もともとSNSありきのクラウドファンディングでしたが、最近ではSNS疲れもあり、オンラインからオフラインも大切にすることも視点に入れるとよいと思われます。昔ながらに告知チラシをつくったり、ホームページ名刺を配ったり、誘導のステッカーなどもあります。またオウンドメディア(自社媒体)があればそれを効果的に活用します。機関誌など関係者が目に触れる機会に情報を発信することで、ネットメディアとは違った層にもアプローチすることが可能になります。

そのためには、ある程度の時間的な期間がないと組織全体へは浸透していかないと考えています。All or Nothing方式(一定期間に目標額に到達しないとプロジェクトが中止となってしまう) ではクレジットカードの決裁を長く止めておけないことから、最近ではだいたいが1か月の期間になってきていますので、その点は特によくお考え下さい。

いずれにしても、プロジェクトの挑戦期間中に中だるみする機会が出てくるので、その時には予め決められた計画通りに進めていくというのが、大切です。

成功のポイント4「使えるものは何でも使う姿勢で当たっているか」

前述の「オウンドメディアをフル活用しているか」も同様ですが、機会タイミングやアピールできる機会には告知チラシを配ったり、ショートスピーチを実施したり、といったように「使えるものは何でも使う」ことが結局は効果を発揮していきます。

他にも「子供と動物は寄付との親和性が高い」と言われるので、何か関連付けられないかとか。「いま流行りになっているもの」になんとか乗っかって進めることはできないかとか、年末のキャンページであれば「今年の漢字」風にリレーで応援メッセージをいただきながら、実は繋いでみてみると隠れメッセージが浮かび上がってくるといった具合です。

アイデアはいろいろと試行してみること。何がうまくいくかは時々によって変わってくるので、いろいろと考え、試行して、うまくいかないところを改善するといったPDCAを高速で回していくことが結局は秘訣なんだと思います。

成功のポイント5「人の成長がなければ」

過去支援者へのアプローチは、必ず行いましょう。おおむね6割は既存客からの寄付で構成されます。普段の繋がりがないところへもこうした機会にアプローチすることで、繋がりのメンテができるのではないかと思います。

またこうしたプロジェクトを行う際に、スタッフの成長も、大きいので、経験者であればあきらめてしまうことも、新人はとにかくやってみる。失敗もあるかもしれないが何より実直に進めていくことを大切にして、結果として大きく成長していきます。

思い切って、抜擢することで、いままでにない展開も可能になってきます。

2023年に話題になった国立科学博物館のクラウドファンディングの成功の舞台裏などを紹介した記事などを外部のメディアにも執筆していますので、あわせてご覧くださいませ。

◆科博のクラファン9億円! 寄付でも社会は変えられる(WedgeONLINE)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32379

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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