経営/マネジメント
寄付目標額を立てるには?:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第13話
Q13・寄付を伸ばしたいと思い、これまではなんとなくこれぐらいと目標額をたて達成できずに終わっていますが、どうしたら合理的で達成できる目標額を立てられるのでしょうか?
A13・目標には、希望的な要素をもったストレッチゴール(達成できる目標よりもすこし高めの目標額)とコンフォートゾーンのゴール(達成が安全可能な範囲)があります。
Want目標とMust目標、日本語では「努力目標」と「必達目標(必須目標)」といわれているものです。必達目標はこれ以下だと会社が倒れてしまう等、最低限の数値の積み上げで出されているものですが、どちらも設定して、メンバー間で共有しておくのが良いと思います。
クラウドファンディングの目標額設定では、必須目標ではなく、ストレッチコールが大切といわれています。目標額は何度も立て直すことができないので、ついつい必須目標にしがちなのですが、高い目標があると、みんなで何とか達成しようという意識が働いて、広く支えを呼び込むことになります。
ストレッチゴールによって、自分たちのコンフォートゾーン (安全な範囲) の以上に目標を設定しているからこそ、真の進歩を実現できるようになります。意図的に挑戦的な目標設定によってメンバーたちがをもつ意欲を引き出してパフォーマンスを最大化できるようになります。適切なストレッチゴールは、メンバーたちの活性化につながり、能力向上させるチャンスとなります。
もしもストレッチゴールを達成できなくても安全地帯を抜け出して、一段階、背伸びができるようになり、やる気を奮い立たせることにも繋がりますし、今後においても新たなゴールを調整する優れた指標となります。
現状把握をする
過去の寄付集めの事例について解析することが次の目標額の手立てになります。総額でいくらだったというだけでなく、既存寄付者を分析するところから始め、具体的に寄付単価のレンジごとに何人がいて、いくらの額を寄付しているかを分類する「ドナーレンジチャート」がここでは有効です。
単価レンジごとに、何人が寄付していて、その累計額はいくらになるか、全体に対しての構成比はどれぐらいかを見極めていきます。これによって、今回のチャレンジに対しての目標額を積み上げるための単価レンジをいくらにすればよいのか、レンジごとにどれぐらいの寄付者が見込めるのかが推量できるようになってきます。これは個人に対しても法人に対しても、基本的には同様の進め方になります。
パレートの法則
既存寄付者の分析を行うとさまざまなことが浮かび上がってきます。今回のドナーレンジチャートでもそうですが「2割の寄付者が総額の8割の寄付をしている」というような分布になることがかなり多いです。この2割の人たち=高額寄付者層に対する特別のフォローが大事であることもわかってきます。
NPOの場合には、たいていこのような「2割の寄付者が8割の寄付額」というようなことが多いのですが、支援者が多い団体などでは「ひとりひとりの寄付額が小さくても、全体では高額になっている」場合もあります。この場合にはすそ野が広く支援者が分布しているとみられるので、全体的に安定していると同時に、一回一回は無理しないで寄付を続けてもらっているので、うまく機会を設定できれば、年間にもう一回ぐらい同様のキャンペーンをたてられる可能性があると言えます。
※パレートの法則
「全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」などの経験則。「80:20の法則」ともいわれている。
ドナーレンジチャート(現状)
経費も見直しておく
実際に寄付をお願いしたりする人がいて、受入の事務や取り扱い、御礼の案内や領収書発送などのコストもこの機会によく確認しておきます。目標額に応じて、このうちどの項目でいくらが増加するかもあわせて検討しておきましょう。
目標額を定める
ドナーレンジチャートを基にして、今回のチャレンジについて目標額を積み上げて設定することができます。目標数を達成するためには、その単価レンジに見込み数としてどれぐらいが確保されていて、そもそもその単価レンジを負担してくれそうな潜在的な候補者がどれぐらいいるかを明らかにしていきます。
具体的には昨年度のキャンペーンでは大口寄付者としては、30万円の寄付を行った人が5人だったので、今年の目標達成のためには、30万円の寄付者は8人必要と設定。具体的なアプローチとしては、まず昨年の5人に継続して寄付してもらえるかを打診します。その上で残り3名の候補者をリストアップします。実際には候補者は多めにあげておかないと実現性が低くなります。
この目標額にはコンフォートゾーンのゴールとストレッチゴールがあるので、よく考えて設定してみてください。
それでも足りない時には
他のキャンペーンや寄付商品などを新たに設定できないでしょうか?
同じく寄付してくださる方ともに、こちらのほうならば協力しますという方も出てくると、積み上げになります。そのためには、わかりやすく区別ができる内容に設定しておくことも大切です。
本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。
ソーシャルセクターのお悩み相談BOX
▷ 第18話:「地方には成り手がいない」に、どう対応するか
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?