
経営/マネジメント
感謝の集いと寄付者銘板を教えてほしい:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第19話
Q19・理事会で話題になったのですが、来年度で20周年を迎えるのを記念して、感謝の集いを行い、これまでの寄付者に対する感謝として、感謝状と銘板を建物前に設置しようと検討しています。実施するにあたって何か注意することはありますか?
A19・「周年事業」はどの組織においても活動を継続していければ必ず平等に起こってくる節目の行事ですね。こうした機会に卒業したり、これまで参加経験がある方などへ案内して一堂に会してお集まりいただくことで、積み上げてきた歴史の重み振り返り、生み出してきた価値を思い起こすことができます。
また、こうした機会にこれまでにご支援いただいた方やお世話になっている方々などにもご案内して感謝を伝えることも先達たちのたゆまぬ努力が現在ある活動の土台、礎となって、今があるんだということを現有メンバーと共にかみしめていくことにもなります。そして「活動の出発点」を知ることで、また新たな発見があり、今後の歩みにもよい影響を与えていくことができるようにもなります。
こうした「周年事業」の効果は、支援者にも広く及んでいきます。創業の頃にスタッフと共に活動の黎明期を支えていたボランティアや寄付者で、昔は近しく活動していたけれども、長年のうちにすこし疎遠になっているという場合でも、周年イベントなどで中心になって熱心に活動している、今のボランティアたちの働きぶりを目の当たりにして、かって頑張っていた頃の自分自身と重ね合わせて胸を熱くして、節目を記念して、今一度支援へ繋がるなどです。
さらに会場での熱気が参加者にも伝わり、支援者同志の強い結びつきを生み出して、さらなる支援の上乗せに繋がる場合でさえもあります。もともと「支えよう」と思っていた方々でしたので、そこから進んでさらに「もっと支えよう」へ前進していくのは本当にありがたい事です。
「10周年をしなければ、20周年はない」というのもよく言われることで、そうした節目がなかなか巡ってこないということと、組織や活動を永続することは簡単ではないので「よくぞ、そこまで頑張ってきた」ことを組織の内外で互いに称え合い、さらなる飛躍を決意する出発点にもなっていきます。
感謝の集いは「過去・現在・未来」を意識して構成
「感謝の集い」に参加される対象としては前述の通り、現在の支援者・関係者、過去の支援者、となりますので、会場スタッフの受け入れとしては、お客様ではあるのですが、より仲間感があるような演出をとることも効果的です。
簡単なところでは「キャンプネーム」のような名前で呼び合うような名札を用意したり、予め申し込みの際に団体との関わりの中で「忘れられないエピソード」を集めて冊子を創ったりするなどです。団体のイメージカラーに合わせて「サムシング・グリーン:何か緑色のものを着用してきてください」と呼びかけると、参加者が思い思いに緑色のコーディネートして現れるので、会場がとても華やいでそれでいて統一感がある雰囲気に包まれます。(こうした場合には、忘れた人用に緑のリボン、スカーフ、ハンカチ、ネクタイをご用意ください)
プログラムの中で、過去の出来事を振り返ることはよくされていますが、現在との対比などを行うとタイムカプセルからの出来事が現時点へ向かって放物線を描いて繋がってくることがよく理解できるようになります。そして、今日に留まることなく、今後、どの方向に向かっていくのか、希望や展望を交えて語ることもぜひイベントの結びに向けて設けたいものです。
プログラムの一例
会場:節目を迎えるのにふさわしい、いつもと違って少し豪華な会場
対象:現在の支援者・関係者、過去の支援者
プログラム:
[記念式典]
- 開式の辞、主催者挨拶、来賓あいさつ
- 歴史の振り返り
- 記念対談、テーマ講演、ライブパフォーマンス
- 寄付者/支援者への表彰式
- 公式撮影
- 寄付者銘板のご披露
- 今後の計画
[主催者パーティ]
- アトラクション
- チャリティオークション
- クイズ「歴史の証人たち」
- 記念撮影
寄付者銘板は「映える」ことを意識
神社やお祭りなどで寄付した人々を「寄進者名簿」「勧進」などとして一覧を掲示しているのを見かけることがあります。ご寄付に感謝してお名前を掲げて称えると共に、金額によってお名前の大きさに変化をつけたり、カテゴリーを表す名称で区分したりというのは、それ自体が寄付に対する権益(リターン)となっています。
設置する場所としては、多くの人々がいきかい、目に触れる場所が多いですね。人通りがないところにひっそり立っているというのはあまりないようです。
※寄進された方々の掲示の例

寄進版
ある寄付者へインタビューした時に「自分は社会的な地位があるわけでも、仕事で役職に就いているわけではないが、一市民である自分の名前がこのような公の場所に掲示されていることはとてもうれしい」と伺ったことがありました。寄付者銘板を作成する際には、こうした心持は大切に反映させていきたいと思います。
よく見かける光景として、寄付者銘板のなかで寄付者が自分の名前を探して、見つけた時に「それを指さして」記念撮影することが多いので「目の高さ」を意識して、寄付者銘板と記念撮影できる場所を確保することです。全体像を撮影するには、ある程度の奥行きも必要ですし、人通りがあるところなので、他の人々の目にも止まります。すると寄付者銘板をみていた人が自分もここへ名前を連ねたいと思う方も出てきたりもするものです。
寄付者銘板としての設置場所
[条件]
- 多くの人々の目にふれる場所(鍵・チケットがないと入れないではない)
- 掲示されている前に少し人が集まっても大丈夫な公衆たまりがある
- 目の前の高さに掲示されていて、その姿をスマホで撮影できる場所(撮影禁止ではない)
- できれば入場口に近いところで、人の流れがあるところが望ましい
- 室内の場合、室外の場合がある
[展開]
- これまでの寄付者(一定金額以上)に対しての感謝
- 寄付者銘板設置以降はどうするのか、掲載を見て「寄付するから名前を連ねたい」人はどうするか
[検討]
- 寄付額のいくら以上を掲載するかを検討。例えば、10万円以上ならば掲載、それ以下はHP掲載 など
- 寄付額の多い少ないによって名前の大きさをつけるか。全員記載する場合も(建物寄付の場合には施工に関わった人夫すべてを記載するところもある)
- 法人の場合、寄付額多い場合に企業ロゴを入れるか、その場合には各社とも企業ロゴ仕様についてレギュレーションがあるので、特に注意
本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。
ソーシャルセクターのお悩み相談BOX
▷ 第19話:感謝の集いと寄付者銘板を教えてほしい
▷ 第18話:「地方には成り手がいない」に、どう対応するか
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?