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寄付額が減っている。どうしたらよいか?:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第4話

Q4・長年、活動してきて、職員も若返りを図りたいと思いつつ、気が付けば寄付額も減ってきています。どうしたらよいでしょうか

A4・うまくいっている時には、何もしなくても拡大傾向となっていくのが、ある時から熱から覚めたようにじりじりと減少を重ね、といったように寄付という財源は、本当に不安定な動きをしますね。

つらいときほど成長のチャンス

しかしながら、つらいときほど成長のチャンス。

「ただ、逆にその大変な経験、難しかったり、困ったり、苦しかったりをくぐり抜けた経験でしか人は育たない。」栗山英樹侍ジャパン優勝監督が、北海学園大学の入学式で語られた言葉です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/dc697bc8a7e9ceb6d8527246a95c737377db6d9a?page=1

この機会をスタッフみんなでうまく回避できたならば、それは人財として上手くいくことはもちろん、失敗も次への成長の種として経験を得て、飛躍するチャンスになります。

ピンチはチャンス。この言葉を繰り返して、歯を食いしばり、あきらめずに考え抜き、手を尽くしていきましょう。

3つの取り組み方法を試して

まず今は「組織としての存在意義が問われている」と考え、何を実現したいのかを振り返り、その上で、ファンドレイジングのキホンとして「7つのステップ」に取り組み、それによって個別の施策を考えていきましょう。

1.ミッション、パッション、アクション

そもそも団体はどんな使命を持って何に取り組み(ミッション)何を実現したかった(ビジョン)のか、それはいまでも有効であるかをここで再度確認しましょう。

激変する経済環境の中で新しい社会的課題がどんどん派生していっています。組織体としての大きな方向性は変わらないけれども、少しだけチューニングが必要ということもあります。また組織がスタートした時のメンバーと今のスタッフは異なる場合などは、改めてミッションやビジョンがみんなの中でしっかりと落ちているか、それを確認していくこと自体で、原点が共有されて、実行力を帯びてくることもあります。

これは、支援者に対してもいえることです。ある団体では、創設当時を知っている方へインタビューして創設のストーリーを浮かびあがらせて小冊子にまとめました。すると、今の支援者がそれを読んで「さらに応援したくなった」と言ってもらうことができ、追加の支援も生まれました。そして単に応援するというだけでなく、さらに様々な繋がりを見つけていただくまでに至りました。

こうした方を含め、現状を変えていくためには現状の仲間だけでなく「改善するための支援者を求める」ことが必要です。そして、そのもとになっているのは「ミッション」であり、それを実現していこうとする熱意「パッション」、そして必要なことをしっかりと「アクション」することに尽きるのだと思います。

大きな流れとしては、単発の支援者に対して、働きかけをして継続的な支援者「マンスリーサポーター」となってもらえるように働きかけるというのが、多くの団体で取り組みされているところです。このようにして不安定な財源であったはずの寄付を、継続寄付者が何名いるとなると安定的な財源として「数字が読める」ようになって、最近では例えば金融機関で融資をお願いする等でも、これらを実績の一部として評価していだたけるようになってきました。

前述の継続寄付者「マンスリーサポーター」もそれがゴールではなく、最近では、さらにそこから一段階挙げて「ミッション・ドナー」として、スタッフと同じようにミッションを共有して、その方自体が周囲へ働きかけていくぐらいの心持になってくると、大変心強くなります。

これはNPOや公益法人を組織している意味でもあり、極めて言えば、組織は単なる社会的課題を解決するためのものでなく、そうした思いを持った人々に数多く参画してもらい、支援する現場とを関係づける「繋ぎ合わせ」の役割を担っているものだと言えるでしょう。

2.支援者の声に耳を傾ける。

ファンドレイジングを進めていくための最も「王道」としては、有名な「ファンドレイジングのサイクル=7つのステップ」があります。

【ファンドレイジング・7つのステップ】

ステップ1 組織の潜在力を棚卸する
ステップ2 既存・潜在寄付者の分析
ステップ3 理事・ボランティアの巻き込み
ステップ4 コミュニケーション方法や内容の選択
ステップ5 ファンドレイジング計画の作成
ステップ6 ファンドレイジングの実施
ステップ7 感謝、報告、評価

というサイクルを繰り返していきます。このサイクルの最初は、組織として内外に活用できる「ヒトモノカネ」と言われる資源や資本を棚卸することから始めていきます。その中で、最も大切なことは「支援者の言葉に耳を傾ける」こと。

ある学習系ユーチューバーも、ターゲット層によるが基本的に今後の展開についてどのように進めていくかは、視聴者からのコメントなどのやり取りを大切にしているといっていました。ユーチューブは関係ないと思いがちですが、実は投げ銭などの仕組みを持つので今までにない、寄付のコンペジターと認識していかねばならなくなってきました。

支援者とコンタクトをとって話を伺っていくと、どういった思いで寄付を託していただいたのか、数ある団体の中でどうして選んでいただけたのか、改善するとしたらどのようなところか、などが分かってきます。実をいうと、これでかなり改善のヒントは得られるかと思います。

支援者の声に耳を傾けて、団体が生み出してきた価値を確認し、時には耳の痛いことも聴くかもしれませんが、それをしっかりと受け止めることが、成長のもとになっていきます。人は考えの及ぶ範囲以上の存在にはなれないので、その枠や範囲を拡げていくために必要なプロセスだとも言えます。

聞く訊く聴く

また寄付者の現状把握については、数字的な側面でも把握することができます。数字の変化は冷静に現状を示してくれます。いくらの価格帯のところにどれぐらいの方がいて、意欲的なのは何人ぐらい、今後見込めるのはどこにいるかを調べていくことも可能になってきます。こうした整理したものは「ドナーレンジチャート」と呼ばれています。

※ドナーレンジチャートについては、こちらの記事で紹介しております。あわせてご参照ください。
#23 ソーシャルセクターの支援者発見と組織状態の確認―ファンドレイジング・コンサルタントへの道

そして、寄付者から継続して寄付してもらったり、ステップアップしてもらうためには、「寄付して良かった!」と寄付者ひとりひとりが感じているかどうかにかかっています。寄付者の期待に対して、懸念する材料はないか。これが浮かび上がってきたらしめたものです。

応援消費、推しカツ、など頼まれてもいないのに、どんどん良いことを他者とシェア・共有したり、他者へ貢献することに価値を置く発想は、インターネットで繋がっている今の時代において文化として成立していっています。こうしたことにも意識を向けて、寄付者を単なる寄付者にとどめない、次の寄付者への繋ぎ手となっていただけるように。

そのためには最初のミッションの再確認はとても大切です。

3.寄付を「するかしないか」から「どれにするか」へ

団体にとっての資源の棚卸ができ、理事やボランティア、有力な支援者までも巻き込みながら「寄付者を増やす」「寄付額を増やす」「支援を拡げる」の3軸で「寄付メニュー」を見直してみましょう。寄付は強制ではなく自由意思によって行われ、寄付額と目的については制限を受けないのが一般的ですが、いくらの寄付をするのもOKながら、それぞれの価格帯の寄付がいくつも並んでいると、あたかもレストランのメニューがごとく「寄付メニュー」として、寄付を「するか・しないか」ではなくて、「どれにするか」の選択に変化するので有効です。

具体的な施策としては、

  1. 新規支援者の獲得
  2. 既存支援者へ新機軸のメニュー提案、寄付額のアップ提案、離脱防止
  3. 過去寄付者の復活、周年記念の活用

などが考えられますので、支援者の声に耳を傾けたことを活かしながら、みんなで参加できる寄付メニューを用意していきましょう。このメニューを、誰に対して、どのようなコミュニケーション手段で、どんな時期に、誰が担当となって、どういった順番で働きかけていくか、そしてその進捗をどのような形で確認するか、等が「ファンドレイジングの計画」となります。

そして、いよいよ勇気をもってそれらを実施していくことになります。最初からうまくいくことばかりではないので、協力いただいた方へしっかりと感謝を伝えると共に、また支援者の声に耳を傾け、自分たちでも計画した通りができたか、できなかったところをどうしたらよいかを改善していきます。サイクルのよいところはそれを次の回転の原動力にすることです。こうして加速するサイクルで、同じことの繰り返しではなく、上昇した回転(スパイラルアップ)となっていくのです。

「良いとされる定義は一つではない。社会が多様化していく中で、人々の思考も多ようになってきている。特定の価値観を押し付けるのではなく多様化するニーズに多様に応える」これはトヨタの新社長となられた佐藤恒治社長の言葉です。私たちもかみしめておきたい言葉だと思っています。

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第18話:「地方には成り手がいない」に、どう対応するか
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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