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小さなお店ができる社会貢献とは:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第20話

Q20・おかげさまで永年、小さいながらも地域の方々が立ち寄れるお店をやってきました。多くの方々から支えてもらっていることに感謝して、私たちの身の丈に合った社会への還元を考えていますが、どんなことをしたらよいでしょうか。

A20・周囲の人々とともにお店にもできる社会貢献はいくつもあります。

離島の支援へ行っていた時に、人口が少なく商圏も限られているのでそのお店が無くなってしまうと、その地域みんながいわゆる「買い物難民」となってしまうことがよくわかりました。一事業の拠点というよりは社会的資本(ソーシャルキャピタル)として、地域に無くてはならない場所であるこということ。お便りを伺って、そんなお店の地域の人びとに広く愛される姿が目に浮かびました。

都市化が進み、人口集中と衰退、またコロナでさらに急加速した少子化のなかですが、実は地域の中で駄菓子屋が復活していっています。商店街の空き店舗を利用してとか、人がいなくなった村でもほかの商店の一角でとか、夜はお酒を出しているところが、昼間は駄菓子で子どもが集まり、夜は大人たちが居酒屋に集まり「大人の駄菓子屋」として、駄菓子片手に一杯やるとかもありました。

これらも本業を通じて、人と人とのつながりの場、地域に貢献されている場を創り出している事例だと思います。

子ども食堂はみんなの食堂

最近の事例としてコロナ禍で、多くの事業がお休みになったり、中止になってしまったのが、逆に数多くなっていったものがあります。それは「子ども食堂」です。名称から子どもたちの居場所の印象がありますが、実際には子ども食堂の約8割は多世代が集っています。まさに地域食堂、みんなの食堂ですね。

全国こども食堂支援センター・むすびえの調査では、昨年個所数として1万か所ほどまでに増えて日本の公立中学校の数を超えたそうで、このままでいく数年のうちに、小学校の数を越え、地域のなかでこどもが自分だけで歩いて参加できて、地域のみんなが孤立孤独を解消する場になりそうです。

こども食堂数が日本で初めて10,000箇所を超え、公立中学校数を上回る「10,866箇所」に~ 2024年12月 こども食堂全国箇所数調査(速報値)~(https://musubie.org/news/10825/

こうした地域で活動されている子ども食堂は、支えている人々がやむなく、何とかしたいと思い立ってはじめられたところが多いので、それらへ対しての物的、金銭的、人的支援をするということも大変喜ばれて、地域みんなに貢献出来ていくかと思います。そして、お店の一角に駄菓子をおいてみんなが集う場を作っていかれること自体も、こども食堂の一歩手前、地域のなくてはならない居場所を生み出していることにもなっていくかと思います。駄菓子を選んで買い求めるだけでなく、いろんな話をしていくなかで自然と支えや話ができる存在となること自体が地域みんなで「大きなつながり=大きな家族」と言えます。こんな風に社会還元というと何も寄付ばかりではなく、地域になくてはならない存在=ソーシャルキャピタルになることも大きい貢献だと思います。

みんなで協力して「欲しい未来へ寄付を贈ろう」

これは「12月は寄付月間」で語られているキャッチコピーです。

自分でこの一年を振り返ってみて、寄付する、というだけでなく、募金箱をおいてみんなで寄付する、その時にどこへ贈るかは自分たちで決めてみるというのも、ひとりだけでは小さな一滴ですが、みんなの力を繋ぎ集めることで、やがて大河となる「寄付の力」を実感することができます。

寄付月間(https://giving12.jp/

沖縄県那覇市公設市場での事例「みらいチケット」

募金箱の設定の仕方で「ペイフォワード」というやり方もあります。これは次のひとの代金を予め支払ってしまうやり方で、コーヒー代を誰かがおごってくれるのです。日本でも先輩が新人に対して「おごる」ことがありますが、その際に先輩にお礼として「おごる」のではなく、その先輩も「自分も新人の時におごってももらったから」と直接は知らない先代の先輩から脈々と続く「恩送り」であったことがわかり、自分もいつか後輩ができたときにそんなエピソードとともに「お返しにおごる」というものです。

ペイフォワードは映画にもなっていましたので、こちらも楽しめます。

ペイ・フォワード 可能の王国(https://eiga.com/movie/1144/

タイでコロナ渦の影響を受けた人を気軽に支える仕組みとして、幸せをわかち合う棚=「トゥーバンスック」の設置が、盛んでした。路上に棚を設置して、食料などを周辺住民に提供してもらい、並べて、必要としている人はまたそれをとって無償提供を受ける。みんなのちょっとずつを促し、支えあうことを当たり前にする、素敵な仕組みです。

日本でもキリスト教の教会などが「どうぞの棚」として、同様の取り組みをされていたのを知っています。こういう設置自体もできるかもです。

コロナ禍によって 生まれた「幸せを分け合う棚」!(https://blog.goo.ne.jp/nagaichi_1950/e/a37c1a649a873587c9e319f7ed6d7414

アメリカでは様々な寄付の習慣がありますが、ある大学通りのパン屋さんでは、パンの売り上げで学生2人分だけの「小さな奨学金」を設けているそうです。また外部のマルシェへ出店してその売上から寄付するなど、小さいけれどもコツコツと継続して応援し続けていくというのも、長い目で見れば大きな貢献です。

なぜならば小さく積み上げた寄付をもとにして学ぶ学生たちがやがて明日を動かしていく存在になっていくので、いわば未来の社会づくりに貢献していっていると自負できるかからです。

まだまだこんなやり方もあります

またどうせ同じようなものを買うのであれば自粛ではなくあえて被災地のものを買う「応援消費」経済を動かすことが実は貢献そのものなのだとみんなが気付き始めました。
能登地震で被災した輪島塗を引き取って展示即売されていた和菓子屋さんなど異業種の方が被災地支援として開催された「応援ギャラリー」、昼間は空いている居酒屋の店舗と食材を活用して先ほどの子ども食堂をするといったような、昼間と夜の時間帯で違う顔を持つ「二毛作営業」なども、小さなお店で取り組める事例です。

またこれはどちらかというと「寄付のマイルール」なのかもしれませんが、アルバイトの方で今日一日は「誰かの為に働く日」と決めてその分の給金を寄付してしまうという方もいらっしゃいましたし、「最初のお客様の代金を寄付」すると決めたラーメン屋さんもありました。またそうした事例を集めるために「応援ボード」をつくって、例えば「マラソンをサブスリー完走したのでその喜びを誰かと分かち合いたい」その方からのメッセージを掲示されているお店も(おすそ分け寄付)ありました。それを見た人が、そんな気持ちになれるのならば「次に今度は私も」と競うように分かち合いを始めていく事例もありました。

大きなことでなくてもいいんです。「ええ格好しい」と思われても、ないよりましで、つながりが生まれていくこと自体が小さいけれども、実は大きな社会還元になっています。
これは面白いなと思ったものをぜひ実践してみてください。

当欄のQ&Aは今回でおしまいになります。長い間にわたってご愛読ありがとうございました。
次回からは新しく「ファンドレイジングの教科書」シリーズを公開していきますのでどうぞお楽しみに。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第20話:小さなお店ができる社会貢献とは
▷ 第19話:感謝の集いと寄付者銘板を教えてほしい
▷ 第18話:「地方には成り手がいない」に、どう対応するか
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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