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20周年でできること:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第14話

Q14・おかげさまで地域の人びとからもご支持ご支援をいただき、行政からも業務委託を受けて、年次予算も大きくなってきました。再来年に20周年を迎えるので、何か取り組みをしたいと思いますが、どんなことを進めるのが良いでしょうか

A14・最初は小さく始めた取り組みが支援者と受益者、また課題解決に一緒に取り組む方々などのご協力があって年々の成長を促し、20周年を迎えられることに敬意を表します。まさに地域の中で必要な存在だと思われた方が多かったからこそ、きょうまでの歩みを重ねてこられたのだと思います。
そこで20周年に向けて「3つの視点」をお伝えしたいと思います。

1)支援に感謝

まずはこれまでお世話になった方々へこれまでのご支援に対する感謝の機会とさせていただくことです。ご支援がなければ、団体としての活動は停止し、結果として困っていた人々に手を差し伸べることができなかったわけですから、皆さんの活動の源泉となる経済的な資源を支えるというだけでなく、支援者に参画してもらった社会の課題解決に貢献してもらう橋渡しができてきたと言えます。

ご支援に感謝することは、支援を必要としている人だけに恩恵があっただけでなく、一緒に課題解決に取り組んだ人々にとっても貢献できた、自己実現できた、喜ばしい瞬間です。互いに感謝の声を挙げていくことは、周年事業の機会にとても有効で、その際にいまはすこし距離はあるけれども創成の頃に一緒にかんばっていた方々も、この機会にいま頑張っている方々の姿を以前の自分の姿になぞらえて思い起こし、また「がんばってね」と支援を託してこられる機会に繋がるからです。

そしてそれは、いまほど支援が拡がっていなかった頃から応援してきた古参の方々にとっても晴れやかな気持ちに溢れる時となるか思います。具体的には、周年記念事業として式典、記念誌、記念事業イベントなどが考えられます。

2)社会還元

周年の機会に皆さんにお集まりいただいて、これまでの歩みを振り返り、今後のさらなる飛躍の契機とする「感謝の集い」は、とても良い機会となります。

しかしながら、あえてその費用を他へ向けていこうと考える団体もあります。

例えば、ある市民活動センターでは中間支援組織として10年間やってきたのでその記念事業として、市民コミュニティ財団を発足させました。それはこれまで10年間にわたって各方面と繋がりをつくってきたことの証として、関係性の高い一人一人に参画して(これからも関わってもらうために)寄付を集め、多くの人びとにこういう仕組みが大切で必要だと認識してもらって財団を始めました。

またある中間支援組織では、支援いただいている地元企業の皆さんに協力してもらって、助成金と伴走支援を組み合わせた新しい助成プログラムを開始、これまでの取り組みにさらに磨きをかけてより必要としているところに手を差し伸べていって、やがて自律的な組織運営ができるように仕向ける仕組みでした。

他にも周年記念イベントに無料招待枠を設けて、支援者だけでなく、特別な支援を必要とされている方に提供するというやり方も考えられます。
ちなみに当社では、創業15周年を迎えるにあたって、総額150万円の寄付を実施いたしました。(https://fundrex.co.jp/news/4039/

3)組織体質改善

もうひとつは、組織基盤の強化から進んで、組織の体質改善に取り組むことです。

ソーシャルセクターにしても、営利企業においても「売上げ(事業)規模に応じて組織改善」ということはよく言われます。それは最初はひとりまたは数人の担い手で回していけるのが、段々と事業の成長、資金の成長と共に組織の成長を迎えて、より幅広く事業運営を展開していく中で、それまでのマネジメントでは組織が上手く機能しなくなることから、よく言われています。例えば「1億円までの組織運営と1億円を越えてさらに伸ばしていくための組織運営は違う」などです。

同様に周年を重ねていく中で、特に20周年は大きく組織の体質改善を図る必要があるタイミングだと思います。それは誰にでも等しく時間は流れ、最初は同じメンバーで展開が図れたところにスタッフも増えていったかと思いますが、やはり組織の屋台骨は同じメンバーで回していっているということになっていませんか?

組織づくり、ビジネスモデルの改善、マーケティング戦略、などに加えて働くための風土、人事制度なども改善すると共に、メンバーとの距離が遠くなるのではなく、満足度やモチベーションを高める取り組みも大切です。

どんなに現場が大好きであったとしても未来永劫、同じ立場で関わり続けていくというのは無理が生じてきます。少なくとも20周年では代替わりも含めて事業承継を進めていくために体質改善を図るタイミングなのだと記銘していただければと思います。組織改善は、経営資源の最適化させて、さらなる成長を支える重要な取り組みです。規模に合わせて必要なアプローチを選択し、組織全体の潜在能力をさらに開花させていきましょう。

今から準備を始めて、20周年の機会に新しい船出を図るということも可能だと思います。さらに30周年、40周年と年数だけでなく成長を重ねていけるように取り組みをされることを期待いたしております。

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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