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8回目:ファンドレイジングに役立つ!経営戦略フレームワーク12選ー新人コンサルタントのFR学習帳

はじめに

ファンドレイジングは、非営利団体にとって、社会を変えていくために不可欠な取り組みの一つです。ファンドレイジングの成功は、正しい戦略立案や効果的な実行が大きく左右します。

そこで、今回は、ファンドレイジングに役立つ12の経営戦略フレームワークを紹介します。読者の皆さんが、新しいプロジェクトを開始する、事業を持続させる、悩んだ時に活用していください。みなさまの明日の一助になれれば嬉しいことこの上なしです。

(1)SWOT分析

SWOT分析とは、組織の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を明らかにするためのフレームワークです。

SWOT分析を活用し、自団体の強みを強化し、外部環境を把握することで、戦略立案を描くときに自団体が進むべき方向性を見出しやすくなります。

(2)3C分析

3C分析とは、3つの対象を分析する手法です。顧客(Customers)、競合相手(Competitors)、企業(Company)です。

非営利団体の顧客(Customers)は2つ、支援者と受益者、この両者のニーズを把握し、最適な価値を提供する方法を見つけることを目指します。非営利団体において、競合相手(Competitors)とは、競争相手ではなく共創相手、ともに社会を変革する仲間ですが、同じ社会課題を持つ他団体を分析することで、自団体の強み、差別化ポイントを見出しやすくなります。

企業(Company)分析において、自団体の強みや人的リソース、資金余力、制約条件を把握することを目指します。3C分析は、戦略設計の正解を出すためではなく、ファンドレイジングを展開するための事実確認に活用するフレームワークです。

(3)企業視点の4P

4Pとは、後述する4Cとともに、E.J.マッカーシー氏(米国)が1960年に提唱したマーケティング戦略のフレームワークです。4Pは、1.製品(Product)、2.価格(Price)、3.プロモーション(Promotion)、4.プレイス(Place)のことです。

もちろん、ファンドレイジングは、一般的な商品やサービスとは異なる特性を持つため、直接的に4Pを適用することは難しいです。ここでは、ファンドレイジグにカスタマイズして、ご紹介します。

1.製品(Product)とは、受益者に提供する課題解決やサービス、支援者にとっては人的支援機会(ボランティア・プロボノなど)や金銭的支援機会(寄付、会費等)を指します。

2.価格(Price)とは、ファンドレイジングにおいて資金調達の目標に応じて適切な寄付メニューごとの金額です。

3.プロモーション(Promotion)とは、支援者に対して自団体やプロジェクトの魅力や価値を伝えることです。適切なコミュニケーション、キーメッセージを選択し、広告、SNS、キャンペーン、イベントなどで、支援への関心を喚起しましょう。

4.プレイス(Place)は、支援者の接触や関与の場所を指します。具体的には、クラウドファンディング特設ページやイベント会場、マンスリーサポーター向け説明会など、状況に応じて適切な機会・場所を選択し、寄付しやすい環境を心がけましょう。

(4)顧客視点の4C

4Cは顧客の視点に基づくマーケティング戦略です。4Pと対比することで分析しやすくなるので、4Cは先述の4Pと同時に活用することをおすすめします。具体的に、4Cとは、1. 顧客価値(Customer Value)、2. 費用(Cost)、3. コミュニケーション(Communication)、4.利便性(Convenience)です。

1.顧客価値とは、受益者と支援者が自団体の課題解決やサービスから実際に得られる価値を指します。

2. 費用とは、金銭的なコストだけでなく、時間的コスト、心理的コスト、探索コストなど、サービス提供に伴う顧客視点のすべてのコストを指します。

3. コミュニケーションとは、受益者と支援者の視点に立ち、適切な情報提供や対話の機会を提供することです。

4. 利便性とは、製品・サービスへのアクセスのしやすさを指します。

(5)チャネルマネジメント

4P・4C分析でも触れたチャネルについて、もう少し掘り下げたフレームワークをご紹介します。チャネルマネジメントとは、寄付者との接点チャネル(ウェブサイト、ソーシャルメディア、イベントなど)を適切に管理し、効果的なコミュニケーションとエンゲージメントを実現させることです。

顧客が使いやすい、わかりやすい、アクセスしやすいように、チャネルごとの目的を整理し、顧客視点で情報設計を見直したい時に役立ちます。

(6)セグメンテーション

セグメンテーションとは、支援者を特定のセグメントに分類し、それぞれに適したアプローチを行うためのフレームワークです。例えば、ボランティア経験、寄付金額、ライフスタイル等を掛け合わせてセグメントを作成し、それらに応じた適切なコミュニケーションを検討する場合に、役立ちます。

ちなみに、セグメンテーションとは、STP分析の一部を切り出したフレームワークです。これは、寄付の拡大や継続的な支援を促進することに有効です。

ちなみに、STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)です。ターゲティングとは、セグメンテーションの結果、どのセグメントに特化するか目標を決めることで、ポジショニングとは、選択したターゲットに対して、自団体の独自の立位置を示すことです。

(7) VRIO分析

VRIO分析とは、Value(価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣性)、Organization(組織)の頭文字をつなげたフレームワークです。自団体の競争優位性を明確にするために活用できます。

他団体や外部環境と比較することで、自団体の価値、希少性、模倣性、組織について、自団体の競争上の優位性を2つの顧客、潜在支援者に対して、明確に打ち出すことに有効です。

(8)バリュープロポジション

バリュープロポジションは、支援者が得られる価値を伝える手法です。支援者が、なぜ寄付すべきか、どんな社会的価値が得られるかを明示することに役立ちます。

支援者目線の価値を明確にすることで、より支援者の共感を呼び、さらなる寄付意欲を高めることを目指します。

(9)SMART目標(SMART Goals)

SMART目標は、具体的(Specific)、計測可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、現実的(Realistic)、時間指向性(Time-bound)の5つの要素で構成される目標設定フレームワークです。

ファンドレイジング戦略を成功させるためには、実行が不可活です。実行フェーズにおいて、具体的な目標を設定し、それを計測可能な数値で追跡することが肝要です。

たとえば、「1年間で寄付金を10%増加させる」という目標は、具体的で計測可能な目標ですが、さらに踏み込んで「本当に1年間で可能か、10%が可能か」とSMART目標に当てはめることで、具体的に実現可能か否かの判断、時間経過を盛り込んだ実行可能な目標にブレイクダウンすることに役立ちます。

(10)フィードバックループ

フィードバックループとは、個人、団体問わず、行動結果を分析し、その後の行動を改善し続ける考え方です。有名なPDCAサイクルは、このフィードバックループの考え方の一種です。

フィードバックループをファンドレイジングに当てはめると、支援者からの寄付やボランティア参加後の行動をアンケートや個別ヒアリングで収集し、よりよい改善のためのループを構築するというように転用することができます。実は、私は学生時代、哲学を専攻しており、卒論でフィードバックループを研究対象にしていました。

(11) RACIマトリックス

RACIマトリックスとは、ファンドレイジングの実行フェーズで役立つフレームワークです。名前の由来は、実行責任者 (Responsible) 説明責任者 (Accountable) 相談先 (Consulted) 報告先 (Informed)の頭文字を取って名づけられました。

RACIマトリックスを活用することで、ファンドレイジング実行フェーズで、誰が、何をやるのか、その役割を明確にし、クライアント、ステークホルダー、プロジェクトマネージャーの関与を明確にすることを目指します。

(12) リレーションシップマネジメント

リレーションシップマネジメントは、支援者と長期的な信頼関係を構築するために役立ちます。ファンドレイジングにおいて、単発寄付や一度だけのボランティアで終わらず、より長期的な関係を築くことが重要です。したがって、支援者とのコミュニケーション、感謝の表明、プロジェクトの進捗を通じて信頼関係を築きましょう。

支援者は、社会を変える仲間という意識が重要です。エンゲージメントといい、団体からの一方通行なメッセージではなく、支援者からイベントや寄付に関する意見をもらい、双方向な関係構築に努めましょう。こうしたリレーションシップを通して、支援者の社会参加、自団体への深い理解、社会変革をともに目指していきましょう。

まとめ

さて、いかがでしたか。

今回の記事では、ファンドレイジングに役立つ12の経営戦略フレームワークを紹介しました。SWOT分析やセグメンテーション、VRIO分析、SMART目標設定、RACIマトリックスなど、ファンドレイジング戦略の立案や実行に役立ちます。また、4Cやバリュープロポジション、リレーションシップマネジメントなども顧客価値、顧客視点において重要です。

ファンドレイジングの成功は、適切な戦略と実行によって大きく左右されます。今回紹介した経営戦略は一つの正解ではありません。これらを最適に組み合わせることで、効果的なファンドレイジングが可能となります。そして、これらの活用が、読者のみなさまの団体のミッションビジョンの実現、社会変革へと大きく前進すること、間違いなしです。


新人コンサルタントのFR学習帳

▷ #12 さようなら新人ファンドレイジングコンサルタント
▷ #11 ファンドレイジングコンサルタント1年目が読んだ8冊の必読書
▷ #10 ファンドレイジングでよく聞く横文字7選
▷ #9 ファンドレイジングに役立つ!事業戦略・マーケティング戦略7選
▷ #8 ファンドレイジングに役立つ!経営戦略フレームワーク12選
▷ #7 Chat GPTにファンドレイジングについて3つ質問してみた
▷ #6 わたしのクラウドファンディング体験記
▷ #5 ぜんぶ観ました!FRJ2023ファンドレイジング日本
▷ #4 My寄付ルール1.0
▷ #3 バースデードネーションとは?
▷ #2 私の寄付先を公開します。
▷ #1 500円から始められる毎月寄付10選
▷ #0 私は、新人コンサルタントの曽根拓也です。

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