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インパクトラボ

「地方には成り手がいない」に、どう対応するか:ソーシャルセクターのお悩み相談BOX 第18話

Q18・何度もお便り失礼いたします。私たちは、地域の課題解決を図るために活動していますが、ソーシャルセクターだけでなく、地場産業においても地方では慢性的な担い手不足と高齢化で、10年後はこのままみんなが10歳成長してしまうのかと思うと不安で、課題はたくさんあるのにと困っています。

A18・地方創生といわれて久しいですが、少子高齢化と都市への人口集中はコロナによってさらにドライブがかかったようになってきています。そうした中で地域の課題解決へ日夜、汗して活動されていることに敬意を表したいと思います。
地方には成り手がいない、新幹線が開通したら、たくさんの人がやってくるといわれていたが、ストロー効果でかえって地方から吸い上げられて行ってしまったというのはよく伺う話です。満遍なく人口が在住しているわけではないので、地域をのべつなく維持するのは、本当に大変ですね。

他の類似団体との兼務はよくあることですが

例えば、課題がたくさんあるので、枠を超えてみんなで取り組むために、新しい枠組みとして、新団体を立ち上げることがあります。

しかしながら、意欲的に取り組む人は限られているので、「地方あるある」かもしれませんが、Aという団体とBという団体はメンバーがほとんど同じで、はたまたCという団体を見ても、さすかに代表理事は違うけれども、やはり同じメンバーということはよくあることだと思います。20年ほどの歴史のNPO法人では、特に親団体が支援して、子団体を発足させた際に、親団体の理事長が子団体の理事を務めたりする事例がしばしば目にします。

しかしながら、これは一般社団法人の場合、理事には競業行為を避ける義務があります。「競業避止義務」とは、理事が一般社団法人が行っている事業と類似の事業(競争的とみられる事業)を行おうとする場合に、社員総会の承認(理事会設置法人は理事会の承認)を受けなければならないとする義務です。理事自身が法人の事業と類似の事業を行うことで、法人の取引先を奪ったり利益を害したりするおそれがあるためで、株式会社などの事例を基に検討されたと伺います。

理事会等の承認を得ずに競業行為を行った場合は、忠実義務違反となり、解任の正当な理由となります。また、法令に違反する事実として理事解任の訴えの事由にもなりうるとされています。難しいですね。

利益相反取引では、理事会の議決に加わらない

A法人のC理事が、B法人の代表理事を兼務している場合で、A法人がB法人の契約を締結するときに、C理事がB法人を代表して取引をすると利益相反取引となります。この場合には、代表を兼務していない方のA法人で理事会等の承認が必要となります。

また別の事例として、ボランティアでC理事はA法人の理事を務めていたとしても、Cの所属する株式会社へ仕事を発注することも、利益相反取引と呼ばれます。

こうした場合には、定款などで当該のC理事が理事会での議決に加わらないで、退室などして議決されることが多いのではと思いますが、実は利益相反取引について承認を得ていたとしても、実際に法人が損害を被った場合には、損害賠償をする責任が免ぜられるわけではなく、同意した理事等にも、責任を問われることもあるようです。

こうなると、順法的に考えていくと、助成金や業務委託など繋がりが発生しそうな法人間では、完全に別の理事を取り揃えて事業運営することが必要になりますが、お悩みの通り、そんな人財はたくさんいないということですね。

助成金を活用して人財登用できないか

組織基盤を整えるための助成金や補助金が少なからずありますので、まずこの活用を考えてはどうでしょうか。具体的には、事業を進めるために、現状スタッフだけでは可能でないため、助成金申請の中で新しいスタッフを雇う費用も計上して申請するというものです。

以前の助成金は、物品購入や専門家派遣と団体に託するが領収書をしっかりと集められるものだけであったのが、段々と事業に対する助成が増えて、助成団体と一緒に伴走しながら、社会課題の解決に取り組みましょうとして、人件費にも使える助成金が増えてきました。ボランティアだけで社会課題の解決を図っていくことは難しいので、しっかりと腰を据えて取り組む土壌ができ、よい人財も集まりつつある状況ではないかと思います。

役割の裾野を拡げる

コロナ禍でいろいろな事業や団体活動が衰退化していった中で、全国の子ども食堂の拠点数はどんどんと伸びてきています。全国子ども食堂支援センター・むすびえの発表では、2023年末で9000箇所を越えて全国の公立中学校の数と肩を並べるぐらいに増大してきたそうです。

こども食堂の数、全国の公立中学校数とほぼ並ぶ「9,131箇所」に増加 ~2023年度こども食堂全国箇所数調査結果を発表~(2023年12月速報値)

子ども食堂は地域食堂として多世代が集う場所になっていて、目の前に食事をとっていない子どもが居ることから、やむに已まれない気持ちで始められたり、学習支援しているところが食事を提供したり、夜は飲食を提供しているお店が昼間の空いている時間で、老健施設で、企業の社員食堂で、など様々な主体が始めて、それを周囲の多様な人材が支えていることで拡がっていっています。家族の在り方が変化して、世帯の中で一人世帯が4割、母子だけの世帯が1割とこれだけで世帯数の半数となる中で、孤独・孤立・孤育ての状況を背景として、地縁の繋ぎ直しを求めて、子ども食堂が増えてきているのではないかと感じています。

全国的に硬直化した組織は厳しい現実で、PTAや自治会・町内会などがなくなってきていますが、役割を見直して、自由意思を保ちながら、新しい繋ぎ直しを行っているところもあることを知っておきたいと思います。

写真「町内会がなくなったら」 町内会への加入を呼び掛けるポスター

地方では成り手がいないのは現実ですが、その一方で新しい繋ぎ直しが始まってきています。

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。


ソーシャルセクターのお悩み相談BOX

▷ 第18話:「地方には成り手がいない」に、どう対応するか
▷ 第17話:「不確実性の時代」にわたしたちはどう備えるか
▷ 第16話:デジタルツールの導入で備えること
▷ 第15話:ソーシャルセクターはいつまでも清く貧しく?
▷ 第14話:20周年でできること
▷ 第13話:寄付目標額を立てるには?
▷ 第12話:寄付依頼の手紙のポイントは?
▷ 第11話:私にもできるファンドレイジング
▷ 第10話:クラファンで成功するためには
▷ 第9話:寄付先選びのポイント
▷ 第8話:ファンドレックスのお仕事カタログ
▷ 第7話:中間支援組織に必要な機能は?
▷ 第6話:人が続かない、どうすればよいか
▷ 第5話:ファンドレイジングって、結局、何?
▷ 第4話:寄付額が減っている。どうしたらよいか?
▷ 第3話:週末に活動する財団をつくりたいのですがどうすれば良いでしょうか?
▷ 第2話:どのような法人格が良いでしょうか?
▷ 第1話:団体の世代交代を進めるうえで何が必要でしょうか?

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