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P-04 コミュニケーションの相手を知る:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント

コミュニケーションの相手によって使う言葉や態度を変えることは、無意識か意識的かに関わらず、誰でもしていることだろうと思います。広報やファンドレイジングでも「そのコミュニケーションが誰向けのものか」によって、依頼する内容、使うツール、言葉、写真、フォント、デザイン等、あらゆる事柄が変わってきます。コミュニケーションの相手を知る(設定する)ステップをしっかり踏んでおくと、情報発信やコミュニケーションをする際に迷うことが少なくなりますし、自然と一貫性も生まれてきます。

今回は、相手を知る(設定する)方法としてのペルソナについてご紹介します。

ペルソナとは

ペルソナとは、「提供する製品・サービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデル」のこと。主に企業のマーケティングで活用されてきましたが、ファンドレイジングにおいてもその活用は有効で、すでに数人のペルソナを設定しているという団体も少なくないと思います。

ペルソナを活用する際にベースとなるのは、「徹底的に1人のために作られた商品」が結果的には多くの人の支持を集める商品になるという考え方。その「1人」であるペルソナをまず設定し、そのペルソナに刺さる寄付メニューや広報、コミュニケーションを考えるという順番で活用を進めていくことになります。

ペルソナを持つメリット

ターゲットは決めているが、ペルソナまでは設定できていないという団体もあると思います。「都内在住の40代男性」のように年代、性別、職業等の属性で絞り込むターゲットに対し、ペルソナはより具体的な情報を必要とします。例えば、名前、生年月日、仕事のやりがい、家族構成、休日の過ごし方、よく使うSNS、好きな言葉等、個性や価値観がわかる情報を持った「架空の1人の人格」として設定していきます。

ターゲットとペルソナの違い

ターゲット設定よりも少し手間はかかりますが、ペルソナを設定しておくとコミュニケーションの相手をより理解することができるようになります。具体的なメリットとしてよく言われるのは次の2点。

寄付者目線で考えられるようになる

一日の時間の使い方、情報収集の傾向、よく使う言葉、大切にしている価値など、寄付者の詳細がわかると、
「このメッセージは○○さん(ペルソナ)的にはどうかな?」
「○○さん(ペルソナ)は、この日程なら参加できるかな?」
「○○さん(ペルソナ)が読みたくなるメールのタイトルは何だろう」
など、マーケティングやコミュニケーションを、寄付者目線で考え設計することが可能になります。

寄付者の人物像を組織・チーム内で共有できる

複数人の間でイメージを摺り合わせるのはとても難しいですよね。「都内で働く40代男性」のようなターゲットの共有では、そこから様々な人物像をイメージすることができてしまい、組織やチームのメンバーそれぞれが想定している人物像が実は全く違っていたということも起こります。

ペルソナなら、メンバー全員が「たった一人の個人」をイメージすることができるため、意思疎通がしやすくなりますし、何か迷った時にも共通の判断軸を持つことが可能になります。

ペルソナの作り方

ペルソナの作成については、書籍やネットで様々な方法が紹介されていますが、ここではあまり手間をかけずにできる方法をご紹介したいと思います。

①既存支援者をグルーピング

まず、既存支援者をいくつかのグループに分けてみます。ドナーピラミッドを作っている場合は、各階層をベースに考えるとわかりやすいでしょう。

例えば、「ボランティアには何度も来てくれているが寄付はしていないグループ」、「都度寄付をしているがマンスリーサポーターにはなっていないグループ」等です。

②ペルソナを作るグループを選択

①で分けたグループの中から、ペルソナを作るグループを選びます。ペルソナは複数あっても良いので、この時複数のグループを選んでも大丈夫です。ドナーピラミッドをベースにしている場合は、「ピラミッドの入口」と「ステップアップのゴール」を意識してグループを選ぶと使いやすくなると思います。

③データ収集

まずは、②で選択したグループに属する個人について、すでに持っているデータがあれば分析して傾向を確認します。例えば、「7割以上が60歳以上」「1回目の寄付のきっかけはクラウドファンディング」「マンスリーサポーターの平均単価は1,500円で平均継続率は7年」等です。

次により詳細な設定をするためにインタビューを行います。既存の寄付者(支援者)にインタビューできれば良いですが、難しい場合は同僚や友人で上記の傾向にマッチする(同じような経験を持っていたり、同じようなステータスで支援をしている)人を見つけてインタビューをする方法もあります。

データ収集は、上記のように「事実」を集めていくのがペルソナを作る基本です。しかし実際には、「分析のもとになるデータがない」というケースや「インタビューできる相手がいない」というケースもあります。私は、そういう場合は、寄付者とのコミュニケーション窓口を担当している方の肌感覚から傾向を特定したり、傾向にマッチする友人や知人を思い浮かべながら詳細情報を詰めていくという方法をおすすめしています。多少精度が粗くても、ペルソナは持っている方が良いと思います。

④ペルソナの完成

ペルソナを作る目的は、「その人にとって最適なコミュニケーションをすること」です。そのために必要な情報を中心にペルソナを組み立てていきましょう。例えば、家族構成はその人のライフステージや認知しやすい社会課題を知るのに有効ですし、移動手段は情報接点としてどのツールが最適かを考える参考になります。

必要な情報が集まったら、下図のようなシートにまとめて、イメージのプロフィール写真と名前を入れましょう。名前は意外と大事です。名前がついていると、友人のことを考えるように「〇〇さんならどうかな」と考えられるようになりますよ。

例)ペルソナ設計シート

Point-04のまとめ

コミュニケーションの相手を知ると、どんなコミュニケーションが最適かがわかってくる。できるだけ「事実」を元に、自分たちが情報や言葉を届けている先の「個人」をイメージし、ペルソナとして設定する。

元にできる事実が少ない場合は、想像や仮説を入れてもOK。ただし「都合の良い寄付者」像にしてしまっていないか、必ず複数名でチェックを!


広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント

P- 00 ひとつずつ始める
P- 01 自団体の強みと課題を知る
P- 02 ファンドレイジングの注力点を決める
P- 03 他団体の事例を知る
P- 04 コミュニケーションの相手を知る
P- 05 キーメッセージを考える
P- 06 ドナージャーニーマップを考える①
P- 07 ドナージャーニーマップを考える②
P- 08 ツールのゴールと導線を整理する
P- 09 ツールの改善作業と継続的な見直しの計画をたてる
P- 10 社会的インパクト評価の視点を取り入れる
P- 11 プロセスの可視化と広報
P- 12 モニタリング結果の可視化と広報

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