コミュニケーション
P-03 他団体の事例を知る:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
ファンドレックスがコンサルティングをする際、類似する事例の調査から始めることがよくあります。事例を調査することで、成功事例の共通点が見えてきたり、アイデアの輪郭がはっきりしてきたり、見落としていたポイントに気づいたりすることができますし、顧客に調査結果を共有することは、新しいアイデアの誘発にもつながります。
事例調査の中でも、広報的ファンドレイジングの取り組みはデスクトップ調査で情報を集めやすいものの一つです。自団体の戦略を考え始める前に、ぜひ他団体の取り組みを調べてみてください。
検索して調べる
団体名で検索
まずは、自分が知っている団体や気になっている団体、有名な団体の「団体名」で検索してみます。固有名詞での検索を「指名検索」と言いますが、事例調査における指名検索は、その団体がどの寄付メニューに力を入れているかを知るのに有効です。検索画面の何番目に、どのように表示されているか。検索結果に広告(検索連動型広告)が表示される場合は、どのような見出しになっているかや、広告のランディングページ(誘導先のページ、着地ページ、LPともいいます)がどのような内容になっているかも参考になります。
活動の関連キーワードで検索
「子ども支援 寄付」「ホームレス支援 NPO」「環境保護 ボランティア」など、活動に関連するキーワードで検索する方法もあります。関連キーワード検索は、その活動領域で広報的ファンドレイジングに力を入れている団体を知るのに有効です。指名検索と異なり、同じ領域で活動している団体=検索に一致する団体が複数存在することになるため、検索結果の上位にホームページが表示される団体や、広告を出している団体は比較的広報に力を入れていると考えられます。
関連キーワードは、これから寄付をしようとしている人=潜在寄付者の気持ちになって考えると見つけやすいです。例えば、子どもの貧困に関心を持った人が検索するならどんなキーワードを入れるか。そのキーワードで見つからなかったら、次はどうするか。実際に検索しながら考えると気づきが多いです。
寄付のメニュー名で検索
「マンスリーサポーター」「遺贈寄付」のような寄付メニューで検索してみると、その寄付メニューのファンドレイジングに力を入れている団体を知ることができます。これから注力したい寄付メニューがある場合は、その寄付メニューに力を入れている団体を知り、その団体の取り組み内容を調べることをおすすめします。
特定の寄付メニューの専用ページ(マンスリーサポーターのランディングページなど)がある場合は、どんな情報を、どんな順番で載せているか、どんな行動(決済、お問い合わせ、電話、SNSフォローなど)をゴールに設定しているかもチェックしてみてくださいね。
事例調査から学ぶ
事例調査にはたくさんの発見がありますが、調査しただけでは自団体の取り組みに活かしきれません。調査した団体のうち、特に参考にしたい2-3団体でよいので、次のように深堀りしてみると、学びにつながります。
ドナーピラミッドを考える
どんな寄付メニューがあって、中でも一番力を入れている寄付メニューは何か。そこから寄付者とどんな関係性を築こうとしているのか。その団体のドナーピラミッドを想像してみると、「参加しやすくするためにここを入口にしているんだな」とか「ステップアップは難しそうだけど、どんなコミュニケーションをしているのかな」など、より実践的な疑問や気付きが得られます。
寄付者像を考える
各団体が想定している寄付者像を考えてみます。細かく人物像を設計してペルソナを作る方法もありますが、ここでは、次のステップで自団体の寄付者像を考える時の参考にできる程度で十分です。例えば、下図のように縦軸と横軸を決めて、調査した団体をプロットしてみるのもひとつの方法です。
言葉や写真の選び方、フォントや色の使い方から、どんな読み手を想定しているか想像してみます。よくわからないという時は、「自分が共感できるかどうか」から考えてみるといいですよ。
情報発信やコミュニケーションをフォローする
調査をして参考になりそうな団体が見つかったら、その団体の情報発信やコミュニケーションを継続してフォローします。例えば、SNSをフォローする、メールマガジンに登録する、寄付をしてみるなど、できることだけで良いです。前回のドナーピラミッドのところでもお伝えしたように、ファンドレイジングは寄付をしてもらった後も続きます。継続的な情報発信やコミュニケーションは、ホームページ以上に参考になることがたくさんありますよ。
Point-03のまとめ
これから寄付をする人の気持ちになって団体を探してみる。
魅力的だと感じる団体は、どんな寄付メニューをどんな言葉で紹介しているか。そこにはどんな戦略があるのか。継続的に情報を届けるために使っているツールや内容も参考になる。
広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
P- 00 ひとつずつ始める
P- 01 自団体の強みと課題を知る
P- 02 ファンドレイジングの注力点を決める
P- 03 他団体の事例を知る
P- 04 コミュニケーションの相手を知る
P- 05 キーメッセージを考える
P- 06 ドナージャーニーマップを考える①
P- 07 ドナージャーニーマップを考える②
P- 08 ツールのゴールと導線を整理する
P- 09 ツールの改善作業と継続的な見直しの計画をたてる
P- 10 社会的インパクト評価の視点を取り入れる
P- 11 プロセスの可視化と広報
P- 12 モニタリング結果の可視化と広報