コミュニケーション
P-01 自団体の強みと課題を知る:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
そろそろちゃんとファンドレイジング始めたいんだけど
何から始めたらいいのかな?
一番多くいただくご質問のひとつで、これは、具体的な施策 ―広告を出す、DMを送る、クラウドファンディングのプロジェクトと立ち上げるなど に取り組むことをイメージして質問されることが多いようです。
「ファンドレイジングを始める」と言っても、その時の状況は団体によって様々ですので、次の一手が広告出稿という場合ももちろんあります。でももしこの時点で、あなたの団体を「支援する理由」と「支援しない理由」が明確になっていなければ、まずは自団体の強みと課題を知るところから始めていただくのが良いと思います。
ご支援くださる方の想いに、いつでも応えられるわけではないから。自団体は、どんな想いに応えられて、どんな想いには応えるのが難しいか、具体的な施策を考える前に整理しておくと、迷いやブレを少なく進めることができます。
組織の強みと課題を知る
組織の強みと課題を整理して考えるには、SWOT分析のフレームワークが使いやすいです。下図のように、強みと弱みを、外的環境と内的環境に分けて整理していきます。
S・W・O・Tの要素を書き出す
まずはS・W・O・Tそれぞれの要素を書き出してみます。Strength(強み)とWeakness(弱み)には、組織の人材、資金、拠点、事業実績や技術、情報などを入れていきます。
経済状況、法令や規制、IT等の技術革新、支援者や他団体との関係などは、Opportunity(機会)とThreat(脅威)に入れていきます。
下図は、子ども支援の団体(架空)を想定して作成した事例です。
要素をかけ合わせて「支援する理由」と「支援しない理由」を考える
ここまでで、組織の具体的な課題と強みが見えてきたと思います。ここからはもう一歩進んで、各要素をかけ合わせて「広報やファンドレイジングに活用できる情報や取組内容=支援する理由になる点」と「支援者の想いに答えられないポイント=支援しない理由になる点」を考えてみます。
SWOT分析は、組織の戦略を考える時に使われることが多いフレームワークですし、広報戦略と事業戦略は切り離せないものですが、ここではできるだけ広報・ファンドレイジングに関係することに絞って考えます。
ソーシャルセクターの良いところは、弱い部分や困っていることについて、支援者や関係者を巻き込むことで、改善や克服ができる可能性があるところだと思います。
脅威と弱みをかけ合わせた「防衛・撤退戦略」=「支援しない理由」と捉えることもできますが、工夫すればむしろ「支援する理由」になる場合もあります。
機会と弱みをかけ合わせた「改善戦略」、脅威と強みをかけ合わせた「差別的戦略」も同じく、ポジティブなメッセージや新しい支援の形を考えることで「支援する理由」を提供することにつながります。機会と強みをかけ合わせた「積極的戦略」は、そのまま「支援する理由」の一番のアピールポイントになります。
例えば上記の事例から考えると、こんな感じで整理することができます。
- 積極的戦略
- 学校や行政と連携して、地域の課題に応える事業を柔軟に行っていることをアピールする
- 行政と連携してふるさと納税制度を活用した寄付の仕組みをつくる
- 改善戦略
- 広報が得意な支援者にアドバイザーになってもらい、広報・ファンドレイジング担当者を育成する
- 子どもだけでなく家族で参加できることをアピールし、関心を持ってくれる層を広げる
- 差別的戦略
- 自由に使える施設で、十分な感染対策を行って活動を継続していることを伝える
- 子どもたちだけでなく、支援者、関係者も参加できるオンラインイベントを企画する
- 防衛・撤退戦略
- 在宅時間が増えた家族の方々に、オンラインイベントのサポートボランティアをお願いする
- マスクや消毒液など、感染予防対策に必要な物品の寄付をお願いする
- 現状では子どもたちが高齢の方々と自由に関わる機会を設けるのは難しい(オンライン交流会等を企画したいが今は手が回らない →寄付しない理由)
ここで見えてきた「支援する理由」は、今後(多分#05あたり)ご説明する予定の「キーメッセージ」の設計にも役立ちます。また、意識していなくても外的・内的環境が変化したことで自団体の強みや課題が変化している場合もあります。昔やったことがあるという方も、新しい発見があるかもしれませんのでやってみてくださいね。
次回は、ドナーピラミッドについてお伝えする予定です!
※本文中では「支援者」を、寄付やボランティア等で団体を支援する方という意味で使っています。
Point-01のまとめ
施策を考える前に、自団体の強みと課題を整理する。
弱みや脅威も、強みや機会を組み合わせて「支援する理由」にできないか考える。
広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
P- 00 ひとつずつ始める
P- 01 自団体の強みと課題を知る
P- 02 ファンドレイジングの注力点を決める
P- 03 他団体の事例を知る
P- 04 コミュニケーションの相手を知る
P- 05 キーメッセージを考える
P- 06 ドナージャーニーマップを考える①
P- 07 ドナージャーニーマップを考える②
P- 08 ツールのゴールと導線を整理する
P- 09 ツールの改善作業と継続的な見直しの計画をたてる
P- 10 社会的インパクト評価の視点を取り入れる
P- 11 プロセスの可視化と広報
P- 12 モニタリング結果の可視化と広報