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これからの寄付について考える-5.吉田富士江さんに聞く大学の寄付

新型コロナウイルスの感染拡大は、寄付者やソーシャルセクターにも様々な形で影響を及ぼしています。寄付者とのコミュニケーションの最前線にいる人たちは、今どんなことを考えているのか。ゲストをお迎えしてインタビューさせていただく、「これからの寄付について考える」シリーズ。

第5回目は、株式会社福笑楽美( https://fukuwarabi.co.jp/)代表の吉田富士江さんに、これからの大学の寄付についてお話を伺いました。


吉田富士江(よしだふじえ)さんのご紹介

株式会社福笑楽美 代表/日本ファンドレイジング協会大学チャプター共同代表
国立大学法人 大阪大学連携ファンドレイザー
私立学校法人
奈良学園ファンドレイジングアドバイザー
私立学校法人 関西学院大学非常勤講師

1961年生まれ。山口県山口市出身。山口大学卒業後、大手化粧品会社グループで30年間、営業から管理職・人材教育・商品プロデュースに携わる。学びなおしのため関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科を修了(MBA)し、転職で、国立大学法人 大阪大学 未来基金のファンドレイザーとして5年間活動。この経験を活かし、2020年に独立。学校法人を中心にファンドレイジングアドバイザーとして活動中。

日本ファンドレイジング協会認定 認定ファンドレイザー/日本ファンドレイジング協会認定 社会貢献教育ファシリテーター/米国CCE Inc.認定 GCDF-Japan キャリアカウンセラー/終活カウンセラー上級/健康管理士一般指導員

コロナ以降の仕事の状況について

吉田さんは、これまで大阪大学の職員として、未来基金のファンドレイザーをされていましたが、今年からファンドレイジングアドバイザーとして独立されました。おめでとうございます。独立後、どのような形でお仕事をされているのでしょうか。

ありがとうございます。株式会社福笑楽美(ふくわらび)の代表として、現在は、大阪大学と私立奈良学園それぞれから、業務委託でお仕事をお受けしています。大阪大学の方は、これまでの渉外部門に加えて、工学研究科の渉外活動のお仕事もしています。ざっくり一週間でいうと、大阪大学渉外部に2-3日、大阪大学工学研究科に1日、奈良学園に1日という感じの時間配分でやっています。

お忙しいですね。大阪大学の方のお仕事は、独立される前と内容的に変わりはないようですが、どのような思いで独立されたのか伺えますか。

国立大学法人の多くは、正規の職員以外は任期付の雇用契約になるのが一般的です。教授や研究職なら10年、事務職だと5年。ファンドレイザーも5年です。

5年間ファンドレイザーをしていると、先生方やOB・OGの皆さま、大口寄付をしてくださる企業の方々にも顔を覚えていただけるようになりますし、引き続き担当したいなと思っていました。でも、仕組み上5年で辞めないといけないということに、問題意識を持っていました。

大阪大学での雇用期間の満了が近づいていた中、雇用期間に縛られずにファンドレイザーとして様々な団体のお手伝いができないかと考え、思い切って独立しようということになりました。
独立後、私立奈良学園のお手伝いや、これまでの関係性もあったことから引き続き大阪大学からも業務委託という形でファンドレイジングアドバイザーとしてお仕事をいただけることになりました。

ファンドレイザーという職種の業務委託をするのは、大阪大学としては初めてのケースだったのですが、これが事例になって、他の大学や団体のファンドレイザーの方々にもこういう形が、ひとつの選択肢として認知されていくといいなと思っています。

パイオニアですね。独立されて、私立奈良学園のお仕事も始められたということですが、国立と私立での違いなどはありますか。

奈良学園の理事長は、大阪大学の名誉教授でもいらっしゃって、名誉教授会や工学部の同窓会でお目にかかっていました。そこで、ファンドレイザーの活動もご覧になっていたようです。奈良学園では、まだ寄付の仕組みが導入されていなくて、仕組みづくりのところからお手伝いしてもらえないかとお声がけをいただきました。

私立大学のファンドレイジングは私にとっても初めてなので、国立大学とはやっぱり色々違うなと感じています。税制優遇もそうですし、組織の中での意思決定プロセスなど、違いを知ることはとても勉強になっています。国立、私立それぞれに、当たり前だと思っているけど、こういうやり方もできるなという気づきもありますし、楽しいですよ。

大学に関しては、授業がオンライン化されたり、飲食店の営業自粛でアルバイトできない学生さんが増えたり、コロナの影響を大きく受けた印象があります。ファンドレイザーとしても、大学のファンドレイザーは、寄付者に直接お会いしてお話しされる機会が特に多いように思います。実際、コロナの影響というのはいかがでしょうか。

はい、以前は直接お目にかかってお話するのが当たり前でした。でも、コロナ以降はそう気軽にお目にかかることもできないので、メールや電話、お手紙、お葉書などでコミュニケーションをとるようにしています。メールは、多分みなさん受け取る件数が多いので、埋もれてしまうこともあるのかなと思いますが、お手紙やお葉書は喜んでくださって、ご寄付のお願いはむしろしやすくなったように感じています。

大阪大学では、全国で新型コロナウイルス感染者が増え始め、緊急事態宣言が出されてからは、コロナ対応の情報をホームページやメールマガジンで積極的に発信していましたし、5月1日には、新型コロナウイルス感染症緊急対策基金( https://www.miraikikin.osaka-u.ac.jp/corona/)が設立されました。学生支援、医療対策支援、ワクチン等研究開発支援、コロナ対策全般の4つの分野で寄付を募っていますが、特にワクチン等研究開発支援には多くのご寄付をいただいており、ご寄付者のみなさんの期待と関心の高さを感じています。

参考)※11月6日(金)現在の新型コロナウイルス感染症緊急対策基金お申込み状況内訳
・件数 :2,509件 
・金額 :227,389,834円
 (金額内訳)
 学生支援        29,379,754円
 医療対策支援      32,419,603円
 ワクチン等研究開発支援 150,627,477円
 全般          14,963,000円

同時に、初めてのご寄付には、クラウドファンディングが効果的だということを、改めて実感しました。コロナ関連のクラウドファンディングプロジェクトが複数立ち上がりましたが、予想を超えた、本当に多くのご寄付をいただきました。また、直接コロナに関する内容ではありませんでしたが、コロナ禍でクラウドファンディングそのものに関心が高まったのか、社会課題に関するプロジェクトには、多くの関心が寄せられました。

参考)※達成率、寄付総額は、いずれも2020年11月4日現在
▼ 新型コロナウィルス関連 ▼
新型コロナ:命を守るフルフェイスシールドをいち早く医療現場へ
(終了:達成率741%、寄付総額37,063,000円)
信頼できる情報で正しい知識を!感染症・免疫のWEB虎の巻制作
(終了:達成率137%、寄付総額2,058,000円)
新型コロナ:入院中の赤ちゃんと24時間会えるシステム構築を!
(進行中:達成率241%、寄付総額24,122,000円)
▼ その他 社会課題関連 ▼
子育て世代が知っておくべき、日常に潜む危険を伝えたい
(終了:達成率 403%、寄付総額4,031,000円)
プラスチックとどう共生していくか。みんなでエコを考える場を!
(終了:達成率298%、寄付総額3,578,000円)

これからの大学の寄付について

大学の存在価値に、多くの人が注目したんですね。

そう思います。私自身も、研究分野こそ、今後もっとクラウドファンディングが活用されていくべきだと改めて思いました。地域活性や産業の発展につながることはもちろん、人の命とか、宇宙とか、本当に幅広いテーマの研究が大学にはあります。

若い世代が希望を持てるような、世の中の役にたつような研究がたくさんあって、今大学に関わっていない人たちも、知りさえすれば、興味がわくこと、面白いこと、わくわくすることに出会えるはずだと思っています。先生や研究者の側からすると、大学だからこそできる研究なのに、法人化以降、運営費交付金の削減による研究費用の削減が続いており、みんな疲弊気味です。クラウドファンディングを活用すれば、応援する気持ちとお金が、そこに集まります。だから、もっとたくさんの人に知ってほしい。世の中の人の関心が、研究に向くお手伝いをしていけると良いなと思っています。

大学の寄付で課題だと思うことはありますか。

そうですね。クラウドファンディングで多くの方からご寄付をいただいたのはありがたいのですが、実はそのあとの事務作業は大変です。大阪大学では今回初めて、領収書や感謝状の発送作業の一部を、業者に依頼しました。事務作業の最適化というか、情報のセキュリティを担保しつつ、内部でおこなう必要がある作業とそうでない作業の切り分けは必要だと思います。

データベースの整備も課題の一つだと思います。大阪大学では、10年以上エクセルで管理をしてきましたが、これからはデータに基づいたコミュニケーションが重要です。どうやら、念願かなってデータベースの導入が決まりそうです。

これからのソーシャルセクターについて

大阪大学でも、クラウドファンディングなどでこれまで以上に多くの方が寄付をくださったということで、私も個人的に、一般の方の寄付やソーシャルセクターへの関心は強くなっているよう感じているのですが、コロナとソーシャルセクターについて、吉田さんが感じておられることがあれば、お伺いしたいです。

そうですね。コロナの影響で、たとえば旅行業界など、人員削減のニュースをよく見るようになりましたよね。私は、そういう人たちには、ぜひ大学のファンドレイザーとして入ってきてほしいと思っています。

大学のファンドレイザーは、これからもっとニーズが増えていきます。それに、これは個人的な意見ですが、NPOのファンドレイザーに比べて良くも悪くも業務の幅が狭い分、入ってきやすいと思っています。必修研修の赤バインダーの中でも、ドナーピラミッドや7つのステップなど、実践的なところをしっかり押さえて、自分なりに得意な形を見つけていけばいい。やりがいもあって、ありがとうと言ってもらえる仕事なので、本当におすすめです。

ただ、私もこの世界に入るまでは、そもそもソーシャルセクターのことをよく知りませんでした。利益を出してはいけないんじゃないかとか、収入が安定しないんじゃないとか、そういうイメージもありました。だから、ソーシャルセクターの方は、もっとそれぞれの接点で正しい情報とか楽しさとかを伝えていかないといけないと思いますし、ソーシャルセクターのことをよく知らない人たちは、もう一歩、自分の関心の幅を広げて世の中を見てもらえると嬉しいなと思います。

吉田さんは、社会貢献教育ファシリテーターもされています。寄付の教室は、寄付を知らなかった人が関心を持つきっかけにもなりますね。

はい。大阪大学の学生で、OBさんからご支援をいただいている課外活動に所属している学生を対象に、「寄付の教室」の大学版をさせていただいています。社会貢献教育は、NPOの取り組みも知ることができるし、寄付をする側の体験もできるので、入り口としてはとても良い。小・中・高・大すべての学校で、もっと実施してもらいたいと思います。

実際に、部活で寄付を集めている学生が、寄付をする側の体験をしたことで、「ありがとう」をちゃんと言えていないと気づきました。そこからご寄付をくださったOBの皆様に「ありがとう」の気持ちをきちんと伝えるようになり、OB・OGからもっと寄付がもらえるようになって、今は2,000万円を超える寄付が集まっています。

今、力を入れていることについて

最後に、今吉田さんが特に注目していること、力を入れていることを伺いたいと思います。

大阪大学としては、遺贈寄付ですね。現在、相続・遺贈寄付の専任ファンドレイザーがいるのですが、彼女が取り組みを始めたことで、大阪大学では、遺贈寄付が大きく増えました。金融機関との業務提携も積極的に行い、金融機関からの紹介でご寄付のお問い合わせをくださるケースもあります。遺贈寄付に関しては、約7割は、ステークホルダーピラミッドの外から、ご紹介で入ってこられる方々です。こういった方々とのコミュニケーションを、今後しっかりしていきたいです。

終活アドバイザーとしては、今はちょっと活動できていませんが、新しいご縁の中でお役に立てることもあるかと思うので、個人的にも遺贈寄付は注目しています。

吉田さんのお話を伺っていると、仕事を楽しんでおられる感じが伝わってきて、すごく元気をいただきました。今日はお忙しい中、本当にありがとうございました!


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