コミュニケーション
P-07 ドナージャーニーマップを考える②:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
寄付者にどんな情報を届けて、団体に関するどんな体験を提供するかを時系列で設計する「ドナージャーニーマップ」。前回はの記事では、 ドナージャーニーマップの基本と、初めて寄付してもらうためのドナージャーニーマップについてご紹介しました。
今回は次のステップとして、寄付してくれた人にファンになってもらうフェーズのドナージャーニーマップの考え方についてご紹介します。
寄付してくれた人にファンになってもらうためのドナージャーニーマップ
ドナージャーニーマップを作成する時最初に行うのは、「目的とゴールの設定」と「主役(ペルソナ)の設定」です。このフェーズのドナージャーニーは、ドナーピラミッドをベースに考えると戦略がブレにくくなります。ドナーピラミッドの入り口の階層にいる人をペルソナに、ドナーピラミッドの目指す階層に上がってもらうことを目的に設定します。ドナーピラミッドについては、 P-02 ファンドレイジングの注力点を決めるで詳しく説明していますので、参考にしてみてください。
今回は、下記の設定でドナージャーニーマップを考えてみます。
- 目的:継続寄付者になってもらう
- ゴール:マンスリーサポーターの申し込み完了
- ペルソナ:クラウドファンディングの寄付者(具体的には:梨沙さん ー新卒で都内のIT系企業に就職後、営業部に配属されて5年目。大きな会社ではないが仕事は楽しい。昨年から週に2日は在宅ワーク。外出が減ったのでNETFLIXで映画をよく観るようになった。友人とは、LINEでのやり取りは増えたが直接会う機会は減って少し寂しい。何かひとりでもできる新しいことを始めたい。)
目的とゴールは決まっているので、まずは「A:寄付する」の行動と接点を埋めましょう。
次に、クラウドファンディングに寄付をした梨沙さんが、団体やマンスリーサポーター制度を知ることができる接点を考えます。この接点は、団体が「つくり出す」必要がある接点になることが多くなるだろうと思います。そこで、まずは既にある、用意されている接点を書き出します。
さらに、その時の寄付者の気持ちも考えて書き込みます。
最後に、まだ用意できていないが用意した方が良い接点があれば、書き足します。
接点を見直す
ここまできたら、ドナージャーニーマップ全体を見わたして、次の2点を確認します。
- A:認知するからA:寄付するの間で、寄付者の気持ちの動きに無理はないか
- すべての接点に、A:寄付するへの導線が入っているか
※導線というのは、目的地にたどり着くための最短距離が用意されているということです。例えばリーフレットに、ホームページの寄付案内ページのQRコードを入れるのも導線です。
1の、寄付者の気持ちの動きに無理があるように見える場合は、どんな接点を追加すれば無理がなくなるかを検討します。接点を増やすのではなく、接点で提供する情報の出し方・呼びかけ方を変えるだけで調整ができることもありますので、ペルソナの気持ちになって考えてみてください。
2の、導線が入っていない(または弱い)接点がある場合は、追加や強化することを計画に取り入れてください。例えば、印刷物は次の増刷のタイミングで、SNSは1ヵ月以内にというように、ツールや媒体によって改善できるタイミングは異なると思いますが、徐々に、すべての接点でしっかり導線がセットされている状態にできるよう、段取りを決めておいていただくと良いでしょう。
足りない接点を埋める
ドナージャーニーは、「マップ」として完成させることが目的なのではなく、最適なコミュニケーションを寄付者目線で検討するためのツールです。そのため、ドナージャーニーを作る過程で「用意できていないが用意した方が良い接点」が見つかった場合は、より良いコミュニケーションにアップグレードできるチャンスです。新たなその接点を用意することも、ぜひ計画に入れ込んでください。
今回は、クラウドファンディングの寄付者にマンスリーサポーターになってもらうためのジャーニーを簡単に描きました。ボランティアの方に1回寄付をしてもらう場合でも、マンスリーサポーターの方に大口寄付をしたもらう場合でも、考え方の順番は変わりません。自団体のドナーピラミッドに合ったドナージャーニーを作ってみてください。
Point-07のまとめ
ドナージャーニーマップは、完成でなく作成のプロセスにおける気づきこそが重要。
ドナーピラミッドとドナージャーニーマップで、コミュニケーションの「穴」を見つけて埋めていく。
広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
P- 00 ひとつずつ始める
P- 01 自団体の強みと課題を知る
P- 02 ファンドレイジングの注力点を決める
P- 03 他団体の事例を知る
P- 04 コミュニケーションの相手を知る
P- 05 キーメッセージを考える
P- 06 ドナージャーニーマップを考える①
P- 07 ドナージャーニーマップを考える②
P- 08 ツールのゴールと導線を整理する
P- 09 ツールの改善作業と継続的な見直しの計画をたてる
P- 10 社会的インパクト評価の視点を取り入れる
P- 11 プロセスの可視化と広報
P- 12 モニタリング結果の可視化と広報