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企業版ふるさと納税、成功のための9の秘訣

Withコロナが長く続く中で、ニューノーマル(新しい日常)では、在宅勤務をベースにする企業が多くなってきた。リモートワークをやってみて、案外いいなと感じ、様々な分野で使えることもわかり、後戻りするのではなく今後もリモートを基本にしていくことになったためだ。また改めて「東京一極集中を見直し、地方分散の機会に」という声も挙がっている。電通報では、自宅勤務がこれからも主流化していく中で、わざわざ行きたくなる「リゾート本社」の提案もなされている。
電通報「テレワークの普及が生み出す”リゾート本社”」

しかしながら、コロナ渦のなかで本年4月から新制度がスタートした「企業版ふるさと納税」の目指すところの一つにブランチや代替え拠点として地域での展開を視野に入れていた。
新しくなった「企業版ふるさ納税」の概略については本稿でも紹介したが、企業版ふるさと納税とは、地方公共団体が行う地方創生の取組に対する企業の寄付について法人関係税を税額控除することで、地域再生計画の進展を後押しするというものだ。
(変わります!)魅力ある地方創生に向けて新しい「企業版ふるさと納税」がスタート!!

企業版ふるさと納税の実績としては、平成30年度(2019年)34億円(1359件)と47道府県で割っても1県当たり1億円にも満たないが、逆に言えば企業版ふるさと納税で1億円以上を集めるのは難しい現状がある。しかしながら、当社はこれまで、数多くの自治体との連携から成功事例をサポートしている実績があり、その観点で見た「企業版ふるさと納税の成功の秘訣」についてここでお伝えしたい。
企業版ふるさと納税の寄付実績(平成28年から平成30年度)

【留意点】

企業版ふるさと納税として寄付の対象となるプロジェクトに関しては、自治体が作成した地方版総合戦略に位置づけられており、内閣府による認可を受けた事業に対するものが対象となる。また、三大都市圏にある交付税が交付されていない自治体、本社などの主たる事務所の立地する都道府県・市区町村への寄付は対象外となる。

【企業版ふるさと納税、成功する9つの秘訣】

  1. トップセールス
  2. 企業周りを行う人材、部署、ボランティア組織
  3. 業務委託
  4. ブランチにいくか、本店に行くか、地域の繋がり
  5. 地域のムードを盛り上げる
  6. ポータルマッチングサイトに頼らない
  7. パンフレットをしっかり作る
  8. ハレの場を設ける
  9. 長い繋がりにしていく

企業版ふるさと納税活用の流れ

出典:内閣府地方創生推進事務局「制度概要」

秘訣1.トップセールス

なんといっても、自治体のトップ、首長自らが、積極的に施策についてのトップセールスを展開すること、これに尽きる。本社などの主たる事務所の立地する都道府県・市区町村への寄付は対象外であるため、地元の繋がりだけでは活かすことができない。しかしながら、折につけて情報を発信し、足を運んだ時に一言言い添え、名刺にも協力依頼の旨を入れていると段々と、接点から変化が生み出されていく。まずトップセールスが必須でないと、成功はないと断言できる。

秘訣2.企業周りを行う人材、部署、ボランティア組織

トップセールスだけでは、また上手くいかない。トップセールスを支える事務局の機能をもった部署も不可欠で、連携に概ね合意しても、申込や手続きなどの細部を実際に整える担当部署が必要となる。経験的な印象で言えば、ふるさと納税の担当部署が「徴税・税務系」であるところは淡々としているが、シティプロモーションなどを担う「企画系」や自治体の長期戦略を担う「経営系」の部署が担っている場合には、実践的な取り組みが展開されていることが多いと感じる。ファンドレイザーとは「支援したい人と支援の現場を繋ぐことができる人」という言い方ができるが、ふるさと納税に対するコメントや反応などを受けて、実際に地域で頑張る事業者と寄付者との交流を進めているようにしているところなどもある。

そしてもうひとつの特徴として、上手くいっているところは、専門部署以外に自然発生的にいわゆる「勝手連」的なボランティア組織ができて、地域をよくするため、自発的に働きかけを行ってくれていたりする。自治体だけが旗振りしていて、地域が知らん顔しているのではなく、一体となってその実現を目指しているというのが、やはり上手くいく。実際には、有望な企業周りを担う役割を、例えば地元金融機関の幹部OBOGや地元有力者、多くの顧客と繋がりを持つ広告代理店などがボランティアとして行っていただいているのが最も効果が高い。

秘訣3.業務委託

個人版のふるさと納税では、総務省からの通達で、返礼品は3割以内、経費などを含めて5割までという厳格なルールがあるが、企業版ふるさと納税では、まだまだ黎明期で集めるのにも相当な苦労や困難を伴うため、個人版とは異なり、事業者に業務委託することも可能だ。その場合、上記のボランティアとの棲み分けが大切だ。片や「キモチで」動いているので、そんな無駄なお金を使わずにと業務委託があることでのトラブルも発生しがちになる。そうしたことに嫌気がさして、「キモチが」失くなってしまうと上手くいかなくってしまうからだ。ボランティアのほうはハレの場をもってもらったり、業務委託のほうは黒子に徹してもらうなど分野や役割などを上手く切り分けていくとよい。

秘訣4.ブランチにいくか、本店に行くか、地域の繋がり

地域に支店・営業所が進出している場合に、そこからアプローチするか、本店にいきなり行ったほうが良いかについては意見が分かれるところであるが、実はどちらの場合もあるのが現実だ。事業体としての仕組みとして、分権を進めて、予算を地域が持っている場合と、事業も地域連携もどんな案件であっても本社マターとなっている企業文化のところもある。しかしながら、実際には企業側の方は、仲立ちする地域での繋がりから拡がっていく場合が多い。また企業側も進出に当たって地元住民への説明会や所轄庁との許認可申請など地域との繋がりが不可欠であったりする。そうしたラインを、人の繋がりとして活かしていくことも重要だ。

秘訣5.地域のムードを盛り上げる

前述のボランティア組織にも繋がるが、地域のムード作りも大切だ。ただ単に寄付が集まればいいだけではなく、それをきっかけとして地域が盛り上がっていくこと、まさに「地域再生」がこのしくみをうまく活用するポイントでもある。実は、私たちがお手伝いしてきた案件では多くの場合、ここがそれまではネックとなっていて、その改善に腐心した結果、成功へと結び付いていることが多い。直接的でないので、「なぜそれが?」と言われることもあるが、実はこの要素は大切だと思っている。他にも、地元の目立つところ、首都圏などからの交通のターミナルポイント、主要拠点に関連するポスターが張られているかなど盛り上がりが目に見える形になっているか、視察した際に必ず写真に収めるので、地元を訪れた人の視点で見直してみることも効果的だ。

秘訣6.ポータルマッチングサイトに頼らない

個人版が大いに伸びたのは「ふるさと納税紹介ポータルサイト」による効力が大きく、わかりやすく整理された情報の紹介と比較、クレジット決済など居ながらにして24時間納税できる手軽さが、後押ししていることは間違いないと言えるが、企業版ふるさと納税も新制度となって、あちこちでポータルサイトがつくられるようになってきた。しかしながら、そこに掲載したからといって自動的に企業との連携が進むわけではない。企業側もどこへ寄付しようかと比較検索するほどには、まだなっていないので、全国的な市場の中で一次情報として掲載していると思って、リアルな接点の場もまだまだ大切にすることだ。実際に多くの実績を出している自治体では、ポータルサイトに掲載していなくても、直接の機会を多くつくって成果を導き出している。

秘訣7.パンフレットをしっかり作る

企業版ふるさと納税で自治体側と企業側とのマッチング・イベントなどでパンフレットなどを頂戴して拝見していると、企業版ふるさと納税のチラシやリーフレットがまだまだこれからといった印象を受ける。特に残念なのは、再生紙で印刷してコピーを切り張りしたようなもので準備されていることだ。企業版ふるさと納税の1件あたりの平均額は約250万円。中には億近い金額の寄付も発生する。それぐらい高額の依頼をしているためには、相応の備えも準備が必要に思う。逆に言えば、まだそんなにどこも準備できていないので、露出の機会があればちゃんとしたところが注目を浴びることとなる。

秘訣8.ハレの場を設ける

高額寄付に対しての感謝を表する場を設けることは、個人版と同様に大変有効だ。例えば、わざわざ代表者にお越しいただいて、住民などが数多く集まる場において紹介して、多くの方々からお礼の拍手を受けるだけでも充分に意義を感じていただけるかと思う。そして、それをまた市民しんぶんのような媒体上で紹介することもできる。そしてまたそれらをみた人の中から、うちもしたいという声が上がったりするなど新しい循環を生み出す基になったりする。

秘訣9.長い繋がりにしていく

企業版ふるさと納税をきっかけとしてできた繋がりは、例えば完成の式典へ出席をお願いして祝辞を述べてもらうだけ終わらず、長い繋がりにできるよう、さまざまな場面を用意していくことだ。一日館長や、特別に講演の機会を設けることなど地方自治に関心を持ってもらう機会をつくり、まさに地域の応援団の一人になってもらうこと。これが最も実現したい姿だ。

地域の中に入っていくことの難しさは、他拠点居住のような生活を続けていて実感する。以前に糸井重里さんの著作で、地域起こしなど新しい環境に入っていくための秘訣について書かれていたが、まず「いてもいい人を目指す」次に「いた方がいい人を目指す」というのがあったが、最終的には「いてもらわないと困る存在となる」まで、目指していくことが大切だと思っている。そうしたきっかけのひとつとして「企業版ふるさと納税」で、地域との関係を企業が深めることができれば、新しいポストコロナの在り方となってくるのてはないかと感じている。

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