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(変わります!)魅力ある地方創生に向けて新しい「企業版ふるさと納税」がスタート!!

東京圏への人口流入を留め、転出入を均衡化させる政府の目標年が2020年、今年であったが、歯止めはかかっていない。総務省の2019年人口移動報告によれば、東京圏への転入者から転出者を差し引いた転入超過は3年連続に拡大の14万8,700人に及び、東京一極集中はさらに進んでいる状態だ。
人口過密が災害時のリスクを高めることは、今回のコロナウィルス対応で、満員電車を避けて時差出勤やテレワークを格段に進めざるを得なかったことをみても明らかである。子育てしにくい環境である東京圏へ、さらに多くの若者が転入すれば、少子化もさらに加速していく。

ふるさと納税

地方からすれば、人が誕生してから、教育と医療に最もお金をかけて、さぁこれから納税してもらおうと思っていたところ、地域には残らず、東京圏や他の地域にいってしまう。このような人の一生における税負担の不均衡がある事から、好きな地域を選んで納税(寄付)できる「ふるさと納税」制度が2008年にスタートした。当初は80億円程度であったが、ふるさと納税紹介サイトの仲介や返礼品の充実なども進み、2018年度には5,127億円までに拡大している。過熱する返礼品合戦を、新しい制度の導入によって封じ込め、合致しない自治体は排除するなどふるさと納税の適正な運用に取り組み、さらに個人版は拡大傾向にある。

企業版ふるさと納税

一方、「企業版ふるさと納税」は、東日本大震災の復興支援の一環として地方創生の更なる充実・強化に向け、地方への資金の流れを飛躍的に高める観点から「まち・ひと・しごと創生総合戦略」としてスタートした。個人からのふるさと納税に比べ、「企業版ふるさと納税」は2018年でも40億円程度と伸びがいまひとつであった。

そこで、5年の期限が切れることもあって、第2期の総合戦略の中で「税制・地方財政措置」として企業版ふるさと納税の拡充が諮られ、現在、国会参院で予算案を審議中である。衆院通過しているため、年度内成立が見込まれており、4月以降、日本の企業からのふるさと納税は、大きく変化を見せることが予想される。

今回の改正には、2024年度に先送りされた先の転出入均衡目標を達成するための、企業の地方拠点強化、遠隔地勤務(サテライトオフィス、テレワーク)の促進、およびそれに伴う雇用の増加、地方への資金の流れを飛躍的に高めるための、企業版ふるさと納税における税額控除割合の引上げや手続きの簡素化等、大幅な見直しが盛り込まれている。

改正のポイント

以下の見直しを行ったうえで、適用期限を5か年延長する

  • 税額控除の割合を現行の2倍に引き上げ、税の軽減効果を最大約9割(現行6割)に
  • 地方版総合戦略の抜粋・転記による地域再生計画の申請・認定を可能に
  • 地方創生関係交付金や地方財政措置を伴わない補助金・交付金に加え、併用可能な国の補助金・交付金の範囲を拡大
  • 地域再生計画の認定後、「寄附(受入れ)の金額の目安」の範囲内であれば、事業費確定前の寄附の受領を可能に
企業版ふるさと納税改正のポイント
内閣府地方創生推進事務局「令和2年度税制改正 企業版ふるさと納税の拡充・延長」)

特に認定手続きの簡素化は、自治体にとっても企業にとっても大きなメリットであり、現在「企業版ふるさと納税」導入を表明している自治体数が拡大している様子だ。

認定手続の簡素化
内閣府地方創生推進事務局「令和2年度税制改正 企業版ふるさと納税の拡充・延長」

「企業版ふるさと納税」によって、「企業」には法人住民税・法人事業税・法人税が、最大1,000万円の寄付で900万円減税されるなど、寄付のインセンティブが増大。また、寄付先の選定が容易になり、寄付しやすい時期に寄付できるようになった。これによって、人材育成、環境保護、地域の活性化に貢献して、寄付だけでなく人材やノウハウの提供もより容易に行っていくことができるようになる。

税額控除割合の改正
内閣府地方創生推進事務局「令和2年度税制改正 企業版ふるさと納税の拡充・延長」

「自治体」にとっては、企業とのパートナーシップを構築して、地域創生に効果の高い事業の企画・実施に注力できるようになってくる。今までなかなかなかった寄付の働きかけを通じて、新しい連携の創出も期待できる。地方には通勤時間が短く、自然に恵まれ、余暇の過ごし方も多様で、家賃や生活コストも安く済むなど利点がたくさんある。両者が近づくことで、都会にない地方の生活の良さが見直され、テレワークやサテライトオフィスとしての活用も進む可能性がある。

テレワーク元年になった今年、年末に「無観客試合」「テレワーク」とともに「企業版ふるさと納税」が今年の流行語として選ばれているかもしれない。

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