コミュニケーション
P-11 プロセスの可視化と広報:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
前回の記事(P-10 社会的インパクト評価の視点を取り入れる)では、広報的ファンドレイジングにも社会的インパクト評価の視点を取り入れるべき理由についてご説明しました。今回からは、社会的インパクト評価のプロセスの中で特に広報に活用しやすい「3. インパクトへのプロセスを整理する」と「5. 事業改善につなげる・報告する」の2つの段階について、具体的な考え方と事例を2回に分けてご紹介していきます。
インパクトへのプロセスを整理するメリット
インパクトを生み出すためのプロセスの整理には、ロジックモデルやTheory of Changeがよく使われます。ロジックモデル等を作成することは、目指す方向がブレにくくなる等、組織・チームにとってのメリットももちろんありますが、広報的ファンドレイジングの視点からも下記のようなメリットが考えられます。
- 複数の成果指標を設定でき、具体的にどんな変化を目指しているのか、最終的な変化を生み出すまでにどのような段階が必要なのかを時系列で表現することができ、インパクトの発現までに時間がかかる場合も説明がしやすい。
- インパクト→成果→結果→活動→資金と、目指す状態と資金の使い道をつなげて表現することができるため、資金の使い道について納得感が得やすい。
- どのデータをどのような方法で収集するか、何を成果とするかを事前に決める必要があり、目指している成果・インパクトについて誤解や認識のずれが起きにくい。
プロセスの可視化は、独自性のアピールにつながる
なぜ今この活動に資金を使っているのか、今確認できている変化はどんな未来につながっているのか等、プロセスを整理して見せることは、支援者が安心して、納得して支援を続けることにつながる重要な情報です。また同時に、同じような課題に取り組んでいる団体との差別化や自団体の独自性のアピールにも活用できます。
例えば下図のように活動だけを訴求している団体が2つあった場合、この2団体の何が違うのか活動内容を見ただけではわからず、どちらを選べばよいのか判断することは難しいでしょう。
しかし、この下図のように目指すインパクトやそのプロセスを並べて見ると、支援者はどちらが自分の関心に近いか、判断しやすくなるはずです。
支援者に、「支援してよかった」と思える寄付体験を提供するためには、自団体の活動や目指す成果をしっかりと理解して「選んで」いただくことが大切です。プロセスを確認し、一部の成果は確認できるようになるまでに長い時間がかかることも理解して寄付をした支援者は、きっと長く支援を続けてくれるパートナー的な存在になってくれるはずです。
プロセスの可視化✖️広報の事例
ロジックモデル等は、作り込めば作り込むほど、一般の方にはわかりにくい複雑なものになっていきます。内部的にはそれでよいのですが、やはり外向けにはわかりやすさも重要です。ここからは事例を紹介しながら、ロジックモデルを広報に取り入れる時のポイントを考えてみます。
課題も一緒に説明する
活動の前提となっている課題も並べて説明することで、なぜこの活動をしているのか、なぜこの順番なのかがわかりやすくなります。
グラフィックを活用する
複雑になりがちなロジックモデルも、アイコンやグラフィックを使うことですっきり見やすくできますね。
SDGsと組み合わせる
ロジックモデルの各フェーズがSDGsのどのゴールに関連しているかを組み合わせて見せる方法もあります。馴染みのあるキーワードと組み合わせることで理解がしやすくなる例です。
Point-11 のまとめ
プロセスの可視化は、団体の独自性の訴求や、具体的な成果が出るまでに時間がかかることの説明にも有効。
正確でわかりやすい情報を発信することは、支援者によりよい寄付体験を提供することになり、結果的に支援者との長期的で良好な関係構築にもつながる。
広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント
P- 00 ひとつずつ始める
P- 01 自団体の強みと課題を知る
P- 02 ファンドレイジングの注力点を決める
P- 03 他団体の事例を知る
P- 04 コミュニケーションの相手を知る
P- 05 キーメッセージを考える
P- 06 ドナージャーニーマップを考える①
P- 07 ドナージャーニーマップを考える②
P- 08 ツールのゴールと導線を整理する
P- 09 ツールの改善作業と継続的な見直しの計画をたてる
P- 10 社会的インパクト評価の視点を取り入れる
P- 11 プロセスの可視化と広報
P- 12 モニタリング結果の可視化と広報