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IMPACT LAB

インパクトラボ

集約化された情報・データの活用がファンドレイジングにもたらす価値

「今、私たちが行っているファンドレイジングはベストな方法なのか、他にもっと良いやり方があるのではないか」

ときに、こう思うことはないでしょうか。

このように良くしたいと思ったときに、他団体・業界の成功事例(ベストプラクティス)を探ることがありますが、実はこの成功事例の扱いには課題があります。

1.成功事例(ベストプラクティス)の課題

成功事例を聞いていざ実行に移しても、思ったほど上手くいかないということをしばしば耳にします。その理由は、例えばそもそも成功していないにもかかわらず”成功事例”として紹介されている場合や、組織としての基盤や条件が異なる、例えばスタッフや予算などの違いによって再現ができない場合など、いろいろと考えられます。

こうした課題に対して、情報・データを集約化することでブレイクスルーする方法があるのではないか、と私は考えています。

(成功事例を否定するのではなく、どうしたら他団体の成功事例を自分たちでも再現できるかついて思いはせています)

ヒントは、米国の公共放送が取り入れているファンドレイジングの仕組みにあります。

2.集約化された情報・データの活用

米国には州ごとに公共放送局があり、その数は数百にも上ります。驚いたのは、放送局の収益では寄付の存在が大きく、例えばある局では寄付・遺贈・助成金が収益の半分を占めているようです(※1)。このため、多くの局ではファンドレイザーが雇用されるなど、積極的にファンドレイジング活動が実施されています。

これらの放送局のうち全米50州にある230もの局が、実は共通化された情報・データを基にしてファンドレイジングが実行されています。例えば、下記のようなマトリクスを、当該局は四半期ごとに受け取れます。

図1:Revenue Opportunity and Action Report(※2)

全体の会員維持率や収益率、初年度の同維持率など24の指標をピックアップし、平均値などを算出しています。つまり、230局の全体に対して自局の値がどうかを比較でき、これにより自局の強み弱みが見え、もっと寄付を伸ばすのはどこに注力すべきかを考えることができます。

さらに、平均に比べて高い値を出している局に対しては、その理由を分解して手法化(≒成功事例化)して、他局へ展開できるようにもしています(単純に数値が高いから成功事例としては捉えず、多角的な視点から精査をしているようです)。

〈データ集約化による効果〉

  • 自組織と他組織(または全体)とを客観的に比較することができる。その結果、費用対効果が高いポイントを決めて、リソースを集中できる。
  • 確度の高い成功事例を見つけることができる。さらに①を組み合わせることで、他組織での転用がしやすくなる。

例えば、会員維持率を高める手法が成功事例として見出せた場合に、自局の維持率と事例となった局の維持率が変わらない場合、数パーセントの差がある場合、また十数パーセントの差がある場合では、それぞれ参考にする箇所や度合いが異なってきます。そこを踏まえて初めて、事例が効果的に活用されます。

つまり、参考にできるポイントは組織の状況によって異なる場合や、事例自体が一部の限られた組織だけ参考になる(逆に汎用的となる)場合があり得るのではないでしょうか。

私は、このような仕組みを日本のソーシャルセクターでも実現できるのではないかと考えています。ただ、実現に際して日本では、上記①②に加えて、自団体内での情報・データ活用の能力がセットになってきます。いわゆる「情報・データ分析の能力」と「(情報・データ分析の結果から)意思決定する能力」が大切になります。この能力はかなりパワフルで、ファンドレイジングの成果を飛躍的に加速される可能性を秘めています(ここについてはまた実例などを通じて詳しくお伝えしていければと思います)。

3.最後に

情報・データの集約化は、実は平たんな道のりとは言えそうもありません。米国公共放送局の仕組みは35局から始まり、2年をかけてデータ集約の仕組みを整え最初のレポーティングが実現したそうです(※1)。しかしながら、それを天秤にかけても、大きな成果-先の例では、この仕組みから見つかった手法・事例が広まった結果4,000万ドル以上の寄付が得られたケース(※1)もあり、日本でもやり方さえ間違わなければ、ファンドレイジングを大きく変える可能性があります。

[参考]

※1 書籍『Data Driven Nonprofits』(Steve MacLaughlin)
※2 webサイト『CDP』 https://www.cdpcommunity.org/

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