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IMPACT LAB

インパクトラボ

PSMに基づき、アイディアを活かす場を作る

コロナ禍の中で新しい生活様式もうたわれるようになり、寄付者とのコミュニケーションや寄付のあり方も変わってきました。インパクト・ラボでもその観点の記事が続いていますが、私からは「ソーシャルセクターでの働き方」について、引続きモチベーションの観点から工夫できることを探っていきたいと思います。

モチベーション、ワークモチベーション研究

ソーシャルセクターで働くモチベーションの特性あるいは源泉になるものは、PSM理論では4つ挙げられており、私としては個人の感情を4つに分けて考えておりますが(参考:「モチベーションの4つの指向-Public Service Motivation(PSM)の4指標から考える」 )、仕事に対するモチベーションを上げる・維持する方法はまた別に考える必要があります。

PSM及び「やりがい」について日本での研究として、 長崎県佐世保市職員で実際に行われたものがあります。(水野和佳奈(2019).公的活動を職務とする労働者の 肯定的な職務認識の要因分析, 岐阜経済大学論集52巻3号, http://gku-repository.gifu-keizai.ac.jp/handle/11207/292)この論文では、 経営組織論や組織心理学で言われている職務意欲について、公務員ではどんな特性があるのかを調査しています。具体的には、①内的動機付け理論②職務特性理論③目標設定理論④PSM理論以上の4つの理論を元に仮説を設定し、アンケート調査を行いました。

アンケートを元にした統計的な分析の結果、以下の結果を挙げています。

  • 職務そのものへの関心が高い場合、内的動機付けが高い可能性がある
  • アイディアや裁量を活かす機会が多いと「やりがい」意識が高い
  • 目標設定理論と「やりがい」意識の関連は見られない
  • PSM 「思いやり」指標について 1 つの変数、「公益への関心」指標について 2 つの 代理変数で調査を行った結果、やりがい意識への関連が見られた
  • 勤続年数とやりがい意識との間に有意な関係は確認されなかった。

この論文では、PSMの「公益への関心」指標について代理変数を用いて分析した結果、「職務そのものへの関心」が高い職員ほど公的職務に対するやりがい意識が高いことが明らかにされています。さらに、公務員の職務特性と職務認識の関係では、「アイディアや裁量を活かす機会」が多いと考える職員ほどやりがい意識が高いことが示されています。

オンラインでのアイディア出し

この結果から考えると、リモートワークが多くなり個人で作業することが増えると、必然的に「裁量を活かす機会」は増え、知らずに「やりがい」につながっていたこともあるかもしれません。一方で組織内の他のメンバーとの情報共有が難しくなり、アイディアを共有する場を作ることは難しくなっています。

このような結果から見て、モチベーション向上につなげるために必要な情報共有は、目標やスケジュールよりも自分やメンバーの考えを共有することを重視した方が良さそうです。オンラインのミーティングのやり方も、工夫されている方も多いでしょう。オンラインツールは色々と増えていますので、積極的に使っていくのが良いと言えます。例えば株式会社コパイロットのリモートワークのファシリテーションの方法論が、単なるツール紹介・やり方の提示だけでなく、何を大切にすると良いのかという視点で、とてもよくまとまっていますので、参考にされてみてください。( https://blog.copilot.jp/entry/remote-facilitation

一方で、「アイディアを出すことができる場づくり」という観点も必要で、参加したメンバーが参加意義を実感できることが重要です。この観点が上手く達成できないと、場やツールを準備しても、参加者の意見が充分に出ずに終わってしまうこともあり得ます。これは組織の文化醸成につながる部分ですので、一朝一夕には難しい側面もあります。コロナ禍で制約が多い状況の中ではありますが、個人のモチベーションを意識した行動を重ねることで、組織全体の成果が上がることに影響していくので、意識してチャレンジしていく必要があると考えています。

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