ICT / テクノロジー
ファンドレイジングを加速させる指標の押さえ方 -基本-
一般的な企業では、経営状況や組織の成長具合を判断するために、資本利益率などの収益性や安全性、効率性といった財務的な観点からの数字を見ることがあります。しかし、非営利組織では寄付収入などがあり、一般企業と同じ手法が馴染みにくいという声も聞きます。そのため今回は、非営利組織でのファンドレイジングで活用できる指標について、最低限押さえたいポイントを見ていきます。
STEP1.まずは押さえたい『基本の「現状」把握』
まず、月次で下記のような「現状」の収入情報を押さえておくと便利です。
総収入(A+B+C):○○円
A.寄付収入:○○円(△△人)
a1.単発寄付:○○円(△△人)
a2.継続寄付:○○円(△△人)
B.助成金・補助金:○○円(○○件)
C.事業収入:○○円
あくまでも全体の概要をおさえておく程度で良いかと思います。
ワンポイント
- 一桁まで正確でなく、千円単位か万単位にまるめるぐらいでよい
- 総収入は、雑収入を割愛するなど、手間をかけなくてもよい
- 事業収入がない、またはすごく金額が少ない場合は割愛してもよい
STEP2.確実に押さえたい『組織成長の種と後退の兆候』
組織が成長している、または停滞ないし後退しているかを早めに確認すると、対応策がとり易くなります。
1.比較して見る
例えば、下図のように寄付金額の月次入金額をグラフ化してみます。
一見すると増加傾向にあり、ポジティブに捉えることができます。しかし、前年対比として昨年度の数字を合わせて見てみます。
すると、今期全体としての収入減に繋がる予兆として捉えることもできます。この後の行動としては、その原因を調べることで、実施した施策の修正や、新たな施策を講じられます。
このように、収入減の兆候を早期に発見でき、それに対して手を打つかの判断ができるようにしておくことがポイントになります。
2.因果を考える
比較して、良い結果である場合は、その因果関係まで考えてみても良いかもしれません。
グラフを見て、実施した施策が上手くいったのか、それても別の理由があったのか、その因果を調べて事由を見つけ(ないしは想像し)、それを仮説として、再度施策を実行して、同じように効果をあるかを確かめることができます。
STEP3.ぜひとも押さえたい『支援者の特徴と関係性』
非営利組織にとって、支援者は組織のミッションに共感し、課題解決を応援してくれる大切な仲間でもあります。
1.支援者の特徴
彼ら支援者がどんな人たちなのか、またどんな層が多いのかを把握しましょう。最初は、下記の切り口で見てみると良いかと思います。
- 新規既存別の割合
- 支援種類別の割合
- 金額別の割合
- 地域別の割合
- 年代の割合
見えた数字から、例えば、スタッフ個々が感覚で抱いていた支援者層と同じかどうかを話し合ってみると、意外な意見や気づきが得られたりします。
2.リピート率
継続寄付であれば「継続率」や「平均継続期間」を、単発寄付であれば「リピート率」といったように、支援者がどのくらい継続的に関わっているかを見れるようにします。
指標には、金額が多い、期間が長い、ということがわかり、団体と支援者との繋がりの強さを見ることもできます。
しかし、忘れてはいけないことがあります。それは『数字からは支援者の一面しかわからない』ということです。特に、数字に表れない「想いの強さ」があることは、常に意識しておくと良いでしょう。
こうした指標は、他組織や業界平均など外部の数字と比べられると良いのですが、ソーシャルセクターにおいては、まだまだ得られる情報が少ないことから、基本的には組織内のデータを揃えて、それを中心に考えると良いかと思います。
最後に
今回紹介した指標は基本的なものになります。組織の成長段階や収入の方法、また経営層と現場のファンドレイザーといったポジションごとに、見るべき指標が変わってきます。そのため、どんな指標が良いのか吟味した上で、それが常に見えるような仕組みを作ると良いでしょう。