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地域おこし人の条件から「共感の集め方」を学ぶ

日本で初めてのG20サミットが大阪で開催されている頃、東京・永田町の全国町村会館では全国各地から地域おこしのキーパーソンか集う「地域おこし人(じん)サミット2019」が昨年に続いて開催された。2日間にわたり、6つの分科会と交流会、全体会で構成されたサミットでは、まさに工夫と知恵を積み重ねた地域おこしの達人たちが、その苦難の姿を紹介して、参加者と一体となって新たな結合・融合・協働などの化学反応をみせていた。

イベントの速報版の報告は、主催者である、一般財団法人 未来を創る財団(國松幸次会長、石坂芳男代表理事)のサイトに掲載されている。

キーパーソンが全国各地から大集結! 地域おこし人サミット2019

日時:2019年6月29日(土) – 30日(日)
場所:全国町村会館 帝国ホテルグループ
主催:未来を創る財団 後援:Wedge

地域おこし人の共感の集め方

地域おこしのエッセンスを濃密なシャワーを浴びたような二日間であったが、分科会を伺って幾つか「なるほど」「そうきたか」と思った点がある。

  • 人口減少社会の中で、人は増えないため人口移動の移住施策には無理があるが、だからこそ地域に居住していない地元民を巻き込んで、そこにいる人だけではできないことを実現している(関係人口の拡大)。
  • 「よそもの、ばかもの、わかもの」とよく言われるが、地域の中での異端(変人)がブレイクスルーを生んでいる。それはこれまでの歴史・経験・しがらみや前提にとらわれないからだ。
  • イデオロギーの対立では実行力を伴わない。自らをアピールするために反対の立場を表明してもダメで、それを乗り越えて地域連携等、自分たちだけでは足りない力を他から補って、もっと大きな力として取り掛かっている(協働)。
  • 地方では人材が限られているので、幾重にも兼職、団体への加入が当たり前で、だからこそのレバレッジ効果がある。個々に様々な立脚点がある人が加わることで人的ネットワークが活きてくる。

これらの点は実現したい事業がある際に、困難を乗り越えてやり遂げていくための秘訣であり、まさに周囲を同じ気持ちにさせていく「共感の集め方」としてリアルなモデルをいくつも拝見した思いであった。共感はまず互いの共通点から生まれ、ココロの距離を縮めたような感覚から始まり、共感性の連鎖で広がっていく

本物は本物を知る

イベントには年々に規模的拡大を目指していくものと、一定の規模を保ちながら参加メンバーのクオリティを保つものとがある。今回は後者で、魅力あふれる講演者とともに参加者自体も大変魅力的であったのでセッション以外の時間で交流が進んだ。

こうしたイベントてはセッションの登壇時間だけであとは帰ってしまう場合もあるが、今回の講演者は他のセッションに顔を出して意見を述べ、交流会では新しい出会いの当事者としてプロジェクトの融合が進む原動力となっていた。本物は本物を知り、本物によって磨かれていく。これまで脚光を浴びたところがダメになっていくのを幾度となく見てきているが、それは辛辣な意見ではなく、あまりよくわかっていない評論家や有名人にちやほやとして的外れな言葉に浸り、自分のことを見失って、世間のことが見えなくなってしまうからだ。地域おこしを進めていく上で、講演されている内容以外にもきっとうまくいかないことも数多いのではないかと思うが、いろんなことがあっても落胆することなく自分を高めていく術をもっているように感じた。それは一見、わがままで横柄にも映りがちだが、実は自分にプライドをもっていて、いざとなったら自分の弱みまでも恥ずかしげなくさらすことができる潔さを兼ね備えているからだとも思った。

持続可能な社会づくりの中では、今回のイベントの在り方そのものもひとつ参考になった。以前、京都の老舗へおじゃました際に、いくつかの信条のようなものを伺ったことがある。そのひとつに「お店には行列をつくったらあかん」というのがあった。

行列ができるラーメン店などがメディアで話題になっていた頃だったので詳しく伺うと、周囲の方に迷惑をかけては商売がうまくいかない。自分だけが良ければよいのではない。また分相応というか、そうならないように配慮すべきで身の丈以上にやってはいけないというものであった。同様の理由でそこは自分のところ以外には委託で出さないといい、何故かと伺うと物産として土産物に出すためは保存料などを添加する必要があり、またたくさんつくると味のクオリティが保てないからとこだわりをあげられていた。これが千年企業の秘訣かと感心した。同じようなことが今回のイベントにも感じて、またそれは人口減少社会の中での地域おこしを考えたときに持続可能であるためのひとつの在り方を示しているようであった。

医師、中学生、地域を耕す新しい担い手たち

参加者が特に刺激を受けたのは、講演者のひとりで三重県志摩病院の江角院長だ。38歳で公立病院院長に就任して、廃止の危機から病院経営を立て直しただけでなく、地域の活性化を考えた場合、医療・教育・産業の3つが衰退すると人がいなくなるため、そのすべてに関わっていると語る。医師が関わる地域おこしというところがとても興味深かった。

またもうひとつは中学生の参加である。冒頭のG20では大阪市の学校を休校にして遠ざけたが、本当はせっかくの機会なので彼らと各国首脳との対話の機会などがあればと思った。こちらの地域おこし人サミットでは、大学生・そして中学生を歓迎して参加してもらった。しかも彼/彼女たちは単に興味があり、将来の参考にというのではなく、すでに地域おこしに取り組んでいるのが素晴らしく、その実践に参加者は大いに刺激を受けた。

ファンドレイジングや地域おこしの現場で私たちが伴走支援する際には、まず

1)活用可能な資源の棚卸し、
2)他地域や過去の事例に学び、
3)その上で新たな魅力を創造し、
4)体制やネットワークを整備して、
5)その準備ができた上でのキャンペーン展開
といった手順で進めていくが、地域おこし人それぞれの話を伺ていると、まさにそうしたプロセスを徒手空拳で取り組み、価値を生み出してきた感があった。だからこそ、それぞれのプロセスで接点を持った人々が共鳴して事業の片棒を担いでくれているのだ。

地域で周囲を巻き込んでいく秘訣は

ファシリテーターとして担当した分科会で複数の講演者に対して「地域おこしを進める上で、周囲の人々を巻き込んでいく秘訣は」と尋ねたところ、ほとんどの人の口から「地道な努力」と答えられたのがとても印象的であった。たくさんの予算や派手な演出はないかもしれないし、立派な人材も多くはない。経営資源が不足する中で、ない分、知恵を絞って、汗をかいて、ただひたすら一所懸命にがんばっている。だからこそ接点を持った人に共感が広がっている。これが地域おこし人の条件であり、共感を集める理由なんだと改めて実感した

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