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支援者拡大のためのツールを作成する:ファンドレイジングの教科書 第10回

ファンドレイジングの教科書

▷ 1.まずはステークホルダーを分析、そこからステップアップ戦略を
▷ 2.そのつぎに、自団体の強みを認識するSWOT分析する
▷ 3.業界をみて他との区別できるか、ポジショニングを分析してみる
▷ 4.ステップアップ戦略をとるために、各階層にはどれぐらいの支援者が現在いるか
▷ 5.過去の寄付額はどれぐらいの金額かをドナーレンジチャートで
▷ 6.支援者のペルソナをしっかりと把握する、ヒアリング、その先のドナージャーニーも
▷ 7.支援者に応じた基本メッセージの発信する
▷ 8.ドナーレンジチャートから支援者が応援しやすい寄付メニューを構築する
▷ 9.広報ツールを棚卸して、支援者コミュニケーションの頻度も検討する
▷ 10.支援者拡大のためのツールを作成する


先日、対面での交流イベントがあって、初めての方々とどんな取り組みをされているのかについてお話ししていたところ、たくさんいる参加者の中で、筆者をわざわざ探しだして訪ねてきてくださった方がいらして、「惜しみない具体的なノウハウについて教えていただけて、これが無料で知ることができ、とても貴重である」と本シリーズについての感謝をお伝えいただいた。大変ありがたい。

そして、本シリーズもいよいよ最終回となる。初めてファンドレイジングに取り組みする団体・組織向けに[ファンドレイジングの教科書]として10回シリーズで連載してきた本シリーズであるが、後半部分はかなり具体的な取り組みを解説しているが、あまり細部にとらわれすぎないようにして、何のためにこれを行っているのか、何度もこのシリーズの1回からを読み直してもらいたい。

ツールの改善にはゴールを設定する

このシリーズ前回で「広報ツールの一覧」で棚卸したところから始めていこう。団体・組織としてどのようなツールを使っているかを改めて把握してみて、実はそのツールを使用する対象が少しずつ、違うことも認識できたかと思う。同じようなツールであっても、外部へ向けた対外広報、例えばこれから支援者になってもらう人を対象とする場合のリーフレットと、一度以上ご支援いただいる支援者へお届けするニュースレターとでは、同じような記事(例えば団体の紹介や寄付金控除についてなど)を取り扱うにあたっても、対象の理解度に応じて、書き方が異なってくる。

前者が「初めて接した団体のことへ興味関心を持ってもらい、さらにすでに支援している多くの仲間と共に、一緒に課題解決へ参画してほしい」であるに対して、後者は「お預かりしたご支援によってこんなことが実現できて課題解決の現場にもこんな変化が生まれている」に力をいれて説明するなどの違いがある。言い方を変えると、そのツールを使ってみた結果、対象にどんな風な状態になってもらいたいかを目指して構成を検討していくということだ。

参考)広報ツールを棚卸して、支援者コミュニケーションの頻度も検討する:ファンドレイジングの教科書 第9回

初めて団体に接点をもった対象が、支援をしようと決心して実行するまでのプロセスは、「AIDTA (アイデタ)の法則」AIDTA (注意:Attention→関心:Interest→要求:Desire→信用:Trust→行動:Action) として、以前にも本シリーズで紹介した。

図1:AIDTA

「Ask」についていえば、寄付のお願いをしていくことは、単なる資金的な援助を求めていくだけでなく、そこに社このプロセスが、実は初めてツール類をみたときに、ページ構成を読み進んでいくうちに「注意・興味関心・要求・信用」と進むと、「実行」へと突き進むことになる。

参考)ステップアップ戦略をとるために、各階層にはどれぐらいの支援者が現在いるか:ファンドレイジングの教科書 第4回

支援者拡大のツールを作成するためには、こうした個別のツールでも支援者となるための道筋を検討しておくとともに、ツール全体でとらえて、それぞれがどんな役割を担っているかを検討しておくことが必要だ。以下のページには、具体的な事例が記載されているので、こちらも参考にしてもらいたい。

参考)既存コミュニケーションツールを強化する見直しの5つのステップ

ゴールからさかのぼって検討してみる

なりたい状態に至るまでにステップアップ戦略として、支援をしようと決心して実行するまでのプロセスは、「AIDTA (アイデタ)の法則」 を紹介したが、ゴールからみてその状態になるためには、どんなステップ(流れ)になっていればよいかとも検討することができる。ツールを見た人がどんな状態や気持ちでそれに接するのかを把握したうえで、なりたい状態にいたるまでに「どんな情報」や「必要な導線」は、何かを検討して、無理なくそれらをつなげていくのだ。

以下のページには、そうした取り組み方について詳しいので、こちらを参考にしてもらいたい。

参考)P-08 ツールのゴールと導線を整理する:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント

法人向けパンフレットを作成する(展開例)

例えば、法人営業に際して、ドアノックツールとして活用できるものを作成しようとすると、基本的な構成要素としては、以下のような項目が挙げられる。

法人向け寄付依頼パンフレットの構成要素

  1. 組織概要と理念(活動方針・特色)
  2. 寄付の使い道(目的と使途、活用の具体例)
  3. 寄付の種類と制度(寄付メニュー)
  4. これまでの寄付社の声・受益者の声
  5. 寄付以外の協働事例(企業コラボの寄付付き商品、ボランティア、社内講演会)
  6. 寄付の流れと手続き方法(申込書の記入手順、振込口座、書類の提出先、領収書発行タイミング)
  7. 税制上の優遇措置(損金算入など)
  8. 寄付者特典(感謝を込めたアイテム、寄付者名の公開、寄付者銘板など)
  9. 連絡先情報(担当部署名、メールアドレス、電話番号、QRコードなど)

これらをもとにして、具体的に、ページを読み進むうちに、現状の気持ちが高まって、なりたい状態に導く道筋(導線)が描けるように整理してみる。

図2:パンフレットの構成例

これを参考に、あなたの団体ツールで支援者拡大をはかっていってもらいたい。

以下に、ツールの改善を引き続き行っていくために、具体的な計画をたてることが紹介されているので、あわせて参考にしてもらいたい。

参考)P-09 ツールの改善作業と継続的な見直しの計画をたてる:広報的ファンドレイジングを強くする12のポイント

本シリーズはこれで終了となる。はじめてファンドレイジングに取り組む団体にとって、進めるうえでのチャートとなれば幸いである。最後までお読みいただいた皆さんに感謝をささげたい。

次回からは、ファンドレイジングを進める上での秘訣「ファンドレイジング成功のためのヒント20」のシリーズをお届けする。こちらもぜひお楽しみに。

本稿で取り上げたい「ご質問」「ご相談」がございましたら、ぜひお聞かせください。

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