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IMPACT LAB

インパクトラボ

既存コミュニケーションツールを強化する見直しの5つのステップ

みなさんは、支援者の方とのコミュニケーションにどんなツールを使っていますか?

パンフレット、リーフレット、DM、ホームページ、SNS、メールマガジン…。使えるツールはたくさんあっても、どれも十分に活用できているとは言えない。今あるツールに満足していない。という団体が、多いように感じています。

コミュニケーションツールは、団体の現在の状況に合っていることが大切ですので、掲載情報が古くならないように、 定期的にアップデートをされることと思います。今回は、このアップデートのタイミングでどこに気をつけて改善すると良いか。5つのステップにまとめてご紹介します。

1. ツールの全体像を把握する

まずは、アップデートをかけるツールだけではなく、既存のコミュニケーションツールをすべて洗い出してみましょう。ここでは、わかりやすく①団体紹介リーフレット、②ホームページ、③Facebook、④お礼状、⑤年次報告書の5つのツールを使って考えていきます。

それぞれ、年間の配布数やアクセス数、更新頻度や送付するスケジュールなどをあわせて確認していきます。

2. 各ツールの役割を確認する

購買行動モデル

マーケティングでは、消費者が商品を知ってから購入に至るまでの行動をモデル化した、購買行動モデルという考え方があります。有名なのは AIDMA(アイドマ)、AISAS(アイサス)、SIPS(シップス)の3つ。

テレビCMで商品を見て、良さそうだな、欲しいなと思う期間を経て、お店で購入というシンプルなAIDMA。インターネットが普及しはじめると、そこに「Search(検索)」と「Share(共有)」が入ってAISASになります。

もっとも新しいSIPSでは、「認知」より先に「共感」。例えば、Instagramで見たワンピースを「かわいい」と感じてから、どこのブランドなのか知るというイメージです。

購買行動モデルを使ってツールの役割を確認する

どのモデルを使っても良いですが、ここではAISASをベースに考えてみます。

寄付者が、A認知→I興味→S検索→A購入(寄付)→S共有という行動を取ると仮定した場合、あなたの団体のツールは、それぞれどの段階で使われることを想定しているでしょうか。最適なツールがない段階や、段階の目的にあった情報が入っていないツールはないでしょうか。

例えば上図のようにツールを配置した場合、次のようなことをチェックしてみましょう。

①リーフレット:ホームページやFacebookへ誘導する記載がありますか?
②ホームページ:団体名で検索した時、検索画面の上位に表示されますか?寄付申し込みページへの導線を意識した設計になっていますか?
③Facebook:定期的に投稿していますか?シェアしやすい内容をこころがけていますか?
④お礼状:思わずシェアしたくなるような工夫ができていますか?
⑤年次報告書:寄付者の興味・関心に応える内容になっていますか?

さらに、現状を認識したうえで、この機会に改善パターンを検討してみるのもおすすめします。

例えば、上図のように各ツールの役割を拡大するには、次のような施策が考えられます。

①リーフレット:振込用紙をつけて寄付まで完了できるようにする。
②ホームページ: サイト内の原稿を見直し、団体名だけでなく、取り組んでいる社会課題に関連するキーワードでも検索結果上位表示されるようにする。サイト内に「シェアボタン」を設置して、簡単にSNSにシェアできる工夫をする。
③Facebook:広告を出して認知度の拡大に活用する。
⑤年次報告書:寄付者の名前を掲載するなど、シェアしたくなる内容を盛り込む。

3. 各ツールの主なターゲットを確認する

次に、2の結果を踏まえて、各ツールをよく使うのはどんな人たちかを確認します。

ターゲット

ターゲットとは、商品やサービスを利用する(と想定される)ユーザーのことです。年齢、性別、職業、年収、未婚既婚、子どもの有無、居住地等、いわゆる「スペック」で分類(セグメンテーション)したグループの中から、焦点を当てるべき最適なグループを選ぶ(ターゲティング)という順番で決めていきます。

今回は、現状各ツールとの接点がある人の属性を書き込んでいます。 データがある場合(アンケート、ホームページのアクセスログ、Facebookのインサイト等)はデータを元に考察しますが、データがない場合は、体感でも良いので書き入れみましょう。 また、これから新しくツールを作る場合は、そのツールを経由して寄付をしてくれる可能性がある潜在寄付者の属性を考えてみましょう。

ペルソナ

ターゲットを、より詳細にした「ペルソナ」という考え方もありますのでご紹介します。ペルソナとは、ターゲットを代表する「モデルユーザー」のことで、ターゲット層に含まれる人物像を詳細にデザインした、架空の人物です。

例えば、「都内の銀行で働く30代の未婚男性」と聞いた時、わたしたちがイメージする人物像にはばらつきがあります。しかし、次のような情報が追加されると、かなりイメージが近づいてくるはずです。

1985年7月12日生まれ。世田谷区に買ったばかりのマンションで(住居)、雑種の中型犬と(ペットの有無) 一人と1頭暮らし 。実家は名古屋、両親と弟、大型犬1頭と猫2匹が一緒に住んでいる(家族構成)。映画や美術館に行くのが好き(趣味)だが、最近は仕事が忙しく行けていない。体も動かせていないので、新しいウェアを買ってジムにでも通おうかと思っている (休日の過ごし方) 。どうせならみんなと違うウェアが欲しいので、海外の通販サイトで探している(購買傾向)。

ここに写真と名前をつければ、ペルソナの完成です。

ペルソナを構成する情報に、特に決まりはありません。ターゲットよりも詳細かつ人間的な情報を付加して、団体内や広報チーム内のみんなが「まるで知っている人」だと思えるように設計、共有しましょう。ペルソナを共有することで、広報戦略の軸がしっかりし、寄付者目線のメッセージやデザインができるようになります。

「都内の銀行で働く30代の未婚男性」よりも「村田健太さん」のことを考える方が、どんな情報、どんな言葉、どんなデザインが好きそうか、イメージしやすいですよね。

4. 各ツールのターゲット層との接点を確認する

では、3で確認したターゲットは、どのような場面で各ツールと接点を持つのでしょうか。まずは既存の接点を書き出します。

次に、現状の課題と改善できそうなポイントも書き出してみます。

5. ツールのコンテンツ(内容)とデザインを確認する

最後に、ツールの役割、ターゲット、接点、さらに、現状の課題と改善ポイントを踏まえて、ツールのコンテンツとデザインを確認します。

ツールの役割

AISAS (A認知→I興味→S検索→A購入(寄付)→S共有)の役割に合ったコンテンツの内容を検討しましょう。まだ「認知」の段階の人に、専門的なキーワードを多様したりしていませんか?「検索」をしてきた人が最適な情報にたどり着けるようになっていますか?

さらに、役割に応じたゴール(例えば、リーフレットならホームページに誘導する、ホームページなら寄付を完了する、年次報告書なら家族や友人に読むことを勧めてもらう等)を達成できるような誘導も、忘れずに入れ込みます。

ターゲット

専門的なキーワード以外にも、横文字など、ターゲットにとってわかりにくいキーワードを使っていないか確認しましょう。印刷の文字サイズや配色は、読みやすさに大きく影響します。ターゲット層によっては、特別配慮した方が良い場合もありますので気をつけましょう。

また、印刷物の紙質やホームページの対応デバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)も、ユーザーに対するメッセージになることがあります。ターゲットに合わせたものを選ぶようにしましょう。

接点

既存の接点で十分な場合は、違和感がないことを重視します。新しい接点が必要な場合は、新しい接点で有効に機能するかどうかを意識して全体を確認しましょう。

例えば、リーフレットを他団体のイベントで配ってもらう場合、配ってくれる団体と同じネットワークに所属していることを明記しておく方が良いかもしれません。ホームページに、団体名以外で検索して来て欲しい場合は、どんなキーワードでたどり着いて欲しいのかを洗い出し、そのキーワードをサイト内で使わなければ検索結果には表示されません。

まとめ

ツールの見直しは、組織の存在価値や生み出している変化を問い直す、とても重要な機会です。それらを「どう見せるか、どう伝えるか」まで考えるわけですから、当然、手間も時間もかかります。

すべてのツールを同時に改善するのは、費用的にも人材のリソース的にも難しいという場合もあると思います。しかし計画なくばらばらと改善を進めてしまうと、結果的にツール同士の連携や、全体の整合性がとれなくなっていた、ということにもなりかねません。一度にすべてのツール改善が難しい場合でも、今回ご紹介したように、全体の棚卸しや役割、見直しの方向性を確認したうえで進めていけば、ツール同士を連携させ有効に活用することができますよ。

コミュニケーションの全体設計には、ドナージャーニーマップを作ってみるのも役立ちます。ドナージャーニーマップについては、近々、また。

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