調査 / レポート
3回目:ふるさと納税1000万円超ガバメントクラウドファンディング(GCF)®︎7選ー2年目コンサルタントのFR学習帳
はじめに
前回に引き続き、ふるさと納税ガバメントクラウドファンディング(GCF)®︎を取り上げます。
本記事では1000万円以上のふるさと納税を集めた自治体事例を7つご紹介します。
1.返礼品あり事例;佐賀県庁~佐賀県内の多様な地場産業を選べる~
(https://www.furusato-tax.jp/gcf/2223)
まず、返礼品ありのふるさと納税ガバメントクラウドファンディング(GCF)®︎事例を取り上げます。
ふるさと納税は住民税を納める市区町村に限られるように思われますが、本事例の佐賀県庁のように県が実施することも可能です。特に、県が実施するGCFだからこそ、佐賀県全土に渡る返礼品の幅の広さが特徴的です。なんと150を超える返礼品がありました。
ふるさと納税を寄付する人の立場からすると、返礼品が多いと選ぶ楽しさがありますよね。もちろん、ガバメントクラウドファンディングの目的は、地域の社会課題解決が目的であることを忘れていません。何を隠そう本事例の最大の特徴が目的への共感です。
目的は、不治の病1型糖尿病の子供たちに役立てる寄付であり、私も一児の父として“不治の病の子どもたちに「治るよ」と伝えたい”というメッセージに涙が流れました。
返礼品なし事例;文京区~ソーシャルとビジネスセクターが連携したコンソーシアム~
(https://www.furusato-tax.jp/gcf/2245?oldtop)
次は、ふるさと納税の返礼品がないGCFで文京区の事例をご紹介します。
このプロジェクトは、2017年から開始された6つの民間団体が共同で取り組まれているコンソーシアム型でして、官民連携、NPO、民間企業が経済的に厳しい家庭を支援する協働プロジェクトです。
返礼品がないふるさと納税は集まらないと言われますが、社会課題の顕在化と解決策の提示、さらに、一致団結して取り組む姿勢は、人々の共感を生むと教えてくれる好例がここにあります。しかも7年継続。
こうした毎年続ける強固な信頼関係のあり方も参考になる事例です。
広域連携の事例;鹿児島と沖縄県の7市町村~機会を逃さず粘りの全員達成~
(https://www.furusato-tax.jp/gcf/lp/amami-okinawa_heritage)
3つ目は、複数の自治体同士が手を取り合う広域連携の事例です。2021年に鹿児島県6市町村と沖縄県1町が協働でGCFに挑戦し総額約2900万円のふるさと納税を集めました。
注目すべき点は、総額だけではありません。7つの自治体がそれぞれ目標額を超える全員達成、まさに広域連携のベストプラクティスといえる事例という快挙です。成功要因のひとつに世界自然遺産に選ばれた外部環境にもありますが、それを逃さず実行し、諦めずに延長してファンドレイジングを続けたことも良い点といえます。
さらに、寄付の使いみちについても、どんな自然保護活動を実施するかどの市町村も具体的だったので寄付者の共感と納得を呼びました。こうした事例を参考に「ウチには地場産業がない」と諦めず、自治体同士が共創するふるさと納税GCFという選択肢もあることを知ってもらえたら嬉しいです。
シンプルな寄付メニュー;埼玉県春日部市~建設費キャンペーンの王道~
(https://www.furusato-tax.jp/gcf/2302)
4つ目は、建設費キャンペーンの王道、寄付者銘板の成功事例、埼玉県春日部市のGCFをご紹介します。
実は、私は、春日部市の隣にある杉戸町の出身でして学生の頃には自転車で春日部市にゲームセンターに行ったり、好きな子と映画デートに行ったり、春日部市は私の青春のまちでもあります。
余談はさておき。建設費キャンペーンは建物に特化したファンドレイジングのことで本事例のような新庁舎の建設や博物館、美術館などキャンペーンによっては複数の寄付メニューを用意することもあります。もちろん、本事例のように寄付銘板1つに絞ることも効果的です。
なぜなら、1つに集中することで寄付者が迷わずに済む、行政の事務コストを削減できるといったメリットがあるからです。また、本例のGCFにはプロジェクトページにも工夫があります。ビジュアルを活用してまちのコモンスペースで何ができるか表現され、設計コンセプトから寄付の使い道、施工スケジュールまで必要な情報を明記することで寄付者の不安解消につながります。
こうしたシンプルな寄付メニュー、細かい配慮の結果などによって約5600万円の寄付が集まる結果となりました。
多様な寄付入り口;徳島県美波町~現場に、英語に、企業版に、多様な市民に~
(https://readyfor.jp/projects/minami-re-caretta)
5つ目は、徳島県美波町(旧日和佐町)にある日和佐うみがめ博物館カレッタの事例です。
先ほどの春日部市庁舎と同じ建設費キャンペーンにあたりますが、ファンドレイジング視点で是非、カレッタの多様な寄付入り口に注目してもらいたいです。このGCFは、単にインターネットページを用意するに止まらず、インターネットが難しい方向けに代理寄付(直接寄付)を用意したり、来場者向けにも博物館に募金箱を設置したり、海外の方向けに英語ページも用意されたりしました。
プロジェクト途中では、企業版ふるさと納税の導入や新聞掲載もありました。その甲斐あってか、ラスト2週間まで目標金額50%に届かない苦しい状況でも諦めずに真摯に取り組まれ、最終日には1日で100名ほどの支援を一気に集め、トータル400名強の方々から約1300万円もの寄付を集められました。
私は、日和佐うみがめ博物館カレッタのプロジェクトが、まるで小さな卵を大切に孵化させていくかのようにみえて、実行者とその関係者の方々の不断の努力と実直な姿勢に感動しました。
少数精鋭で達成;長野県山ノ内町~課題解決であり価値創造ミライの姿をいまここに~
(https://www.furusato-tax.jp/gcf/2380)
6つ目は、未来のカタチの実現に向けた価値創造型の事例をご紹介します。
お恥ずかしい話、私もソーシャルセクターに入って2年目でようやく分かったことなのですが、非営利活動には、価値創造型と課題解決型が存在します。マイナスをゼロにする課題解決の前者と、ゼロをプラスにする価値創造をゴールとする2つが存在します。
長野県山ノ内町は、目指す未来のカタチを「孫が帰ってきたくなるまちづくり」と標榜し、実証実験をするための寄付を募るGCFに取り組まれました。温かいコンセプトでなんともホッとする情景が目に浮かびます。詳しく見てみると、本プロジェクトページにはどのように実現するか「書かない役場」「行かない役場」の実現を掲げられ、行政のデジタル化を目指すという有意義な未来のカタチが打ち出されています。
近い将来、行政手続きが簡素化されると住民も職員の方々も嬉しいですよね。結果として約1500万円も集まりましたが、支援者数は4名。少数精鋭、熱く共感された一人一人の熱量が伝わってきます。
ファンドレイジングにおいて、より多くの寄付者を集めようと考えがちですが、本例のように少数の寄付者の強い共感によるファンドレイジングも存在します。価値創造型に当てはまる非営利団体は、本例を参考に、広く多くの寄付者に伝えることが望ましいのか、少数に深い価値を自分ごとにしてもらえることがゴールにふさわしいか考えるきっかけとなると嬉しいです。
地域PRが寄付使途事例;(山梨県甲府市)~課題解決の糸口と丁寧な説明に共感~
(https://www.furusato-tax.jp/gcf/2380)
最後は、寄付の使い道・目的で迷い、お困りの自治体の方に朗報をお届けします。
地域のプロモーション、認知向上、PR関連での寄付を募ることに不安を感じている方はいませんか。ご安心ください。ふるさと納税GCFは良い仕組みです。
山梨県甲府市の成功事例がございます。山梨県甲府市のGCFは、プロジェクトタイトルにも寄付の使い道にも東京ガールズコレクションへの出演を筆頭にPR活用を明示した上で目標を大きく上回るおよそ2億9000万円の寄付を集めました。プロジェクトページを紐解くと丁寧に地域課題の背景や歴史に触れ、なぜTGC出演かについても具体的な数字を使って説明されています。
直接的な地域課題の解決でなくても、PRすることが肝要で丁寧に説明を重ねることで安心感を醸成することができます。寄付者も1万人を超え、共感数も大変参考になりますね。
終わりに
いかがでしたか。
今回は、ガバメントクラウドファンディング(GCF)®︎に関する事例を7つご紹介しました。
自治体も非営利組織も民間企業も個人も誰しもが、ふるさと納税を有効活用し、地域課題が解決される未来を、私はファンドレイジングコンサルタントとして皆さんと一緒に実現したいと思います。
※ガバメントクラウドファンディング及びGCFは、株式会社トラストバンクの登録商標です。
2年目コンサルタントのFR学習帳
▷ #03 ふるさと納税1000万円超ガバメントクラウドファンディング(GCF)®︎7選
▷ #02 ガバメントクラウドファンディング(GCF)®︎とは何ですか?事例付き基本編
▷ #01 ファンドレイザー必読!「寄付」に関わる横文字5選