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IMPACT LAB

インパクトラボ

支援者のメールアドレスが少ない非営利組織のコミュニケーションを考える

先日、あるNPO団体の方から質問をいただきました。

〈質問〉

私たちの非営利組織では、支援者数が千人規模でいますが、メールアドレスがあまり取れていません。今のところ彼ら支援者とのコミュニケーションは郵送物が中心となっていますが、将来的にこのままで良いのか悩んでいます。

〈回答〉

ご質問ありがとうございます。

きっと、今の急速なデジタル化を考え、メールアドレスの取得は避けられない、その必要性を感じながら、この質問をされたのだと思います。ですので、今回は別の角度から回答をしてみようと思います。

郵送物の効果を上げる余地

まず、郵送物に磨き上げる余地があるかを考えてみてはどうでしゅか。例えば「タイミング」はどうされていますか。

『寄付白書2017』(編 日本ファンドレイジング協会)によると、私たち日本人の寄付理由として「毎年のことだから」が上位にあります。これは寄付が習慣になっているといえます。

つまり、毎年同じタイミングで郵送物を送ることが有効になり得ます。巷で見られる「歳末募金キャンペーン」のように、支援者の方に「あ、今年もやっているな」と思ってもらえたら成功です。きっと「今回もするか」と思って寄付してもらえる人が出てくるでしょう。

ちなみに、よくあるタイミングは6月と12月です。ともにボーナス時期であり、加えて年末は「寄付月間」や「ふるさと納税」とも重なり、寄付意欲と金額が上がる可能性が高まります。

ほかにも、書かれた文章や写真、開封したときの資料の順番、寄付依頼の有無といった「内容」であったり、年間に何回郵送するかといった「頻度」などについて自団体の郵送物コミュニケーションを振り返ってみると、磨き上げる余地はありませんでしょうか。

郵送物の限界

一方で、郵送物にも限界があります。例えば「頻度」です。

ファンドレイジングの用語には「セブン・サンクス」という、寄付した支援者には7回お礼を言いましょう、というものがあります。これは厳密に7回お礼を言うというよりかは、寄付後に7回ぐらいは接点を持つことで次の寄付に繋がりやすくなる、というものです。

この7回を、郵送物だけで実現するにはコスト的に難しくなってきます。そのため、低コストのメールが登場してきます(メールの強みはコストだけではありませんが、ここでは割愛します)。

これは一例ですが、このように組織の支援者コミュニケーションを戦略的ないしは俯瞰的に捉えてみると、郵送物だけでは限界に直面する場面が出てきてしまいます。

メールを含めたオンラインツールに向けて

さらに昨今は、日本でもオンラインツールの活用が爆発的に進みました。この流れは、仮にコロナが落ち着いたとしても、かつてのように戻ることはないでしょう。非営利組織も徐々に、これまで行っていた活動報告会などのイベント・セミナーを、オンライン実施へとシフトさせ、ノウハウを蓄積しています。

やや抽象的な話になりますが、これまで「リアルを中心」として、メールなどのオンラインが補完的な役割を果たしたコミュニケーションから、「リアルとオンラインとの融合」もしくは「オンラインを中心」として、郵送物などのリアルが補完的な役割を果たすコミュニケーションへと、変化していくのではないかと考えています。

変化の真っただ中である現在、ご質問いただいた「メールアドレスが少ない」状況においては、これまでの郵送物を磨き上げながら、組織の中長期的な観点で捉え、オンライン(メールはその一つ)について考え始めてはいかがでしょうか。

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