調査 / レポート
なぜソーシャルセクターの信頼性は海外に比べて低いのか? ~公開データから見えたこと~
NPO・NGOにとって「信頼性」は事業を進める上で、またファンドレイジングをはじめとした財務や組織を強くする上で欠かせない要素です。今回は「(NPO・NGOの)信頼性」について、見ていこうと思います。
1.日本の信頼性は海外と比べて低い!?
世界各国の信頼性について調査している『 2021 Edelman Trust Barometer 』によると、日本のNPO・NGOの信頼性は低く、世界ではワースト2位となっています(図1)。
別の機関が調査している『World Values Survey』でも、日本のNPO・NGOの信頼性は他国と比べて低い結果となっています(図2)。
つまり、日本のNPO・NGOの信頼性は、海外と比べると低いことが考えられます。
2. NPOを知らない人が信頼性に関係している!?
先の『World Values Survey』の調査結果をよく見ると、日本では「わからない(Don’t know)」回答が22%と高い特徴が読み取れます(図3)。
ここから一つの仮説が考えられます。
「わからない」には、NPO・NGOの認知(知っているか、身近であるか)が関係しているのではないか
というものです。『World Values Survey』の調査結果では、その仮説を検討することができないため、別の調査結果をもとに考えていきます。内閣府が公開している『NPO(民間非営利組織)に関する世論調査』には「信頼性」の記載があります(図4)。
ここで注目したいのは「わからない」の回答が一定数いることです。そして、「わからない」と回答している人の9割が、NPO法人について「知らない」「言葉だけしっている」ということです。
つまり、「日本は世界と比べて信頼性が低い」という結果の背景には、「NPO・NGOをよく知らない」という人達が関係している可能性があります。
3.日本の信頼性は上昇傾向にある!?
日本の信頼性について、別の角度から見てみたいと思います。最初に触れた『 2021 Edelman Trust Barometer 』ですが、これは毎年公開されています。そこで過去にさかのぼって数字をひろってみると、NPO・NGOに限っては、ここ3年間は上昇傾向にあることがわかります(図5)。
つまり、世界と比較すると低いことは変わりないが、足元の経過年数でみると上昇傾向に入っていると考えられます。実は『World Values Survey』『NPO(民間非営利組織)に関する世論調査』でも似た傾向が見られました。
4.まとめ
ここまで、
- 日本のNPO・NGOの信頼性は、海外と比べると低い
- その背景には、「NPO・NGOをよく知らない」という人達が関係している可能性がある
- 一方で、日本のNPO・NGOの信頼性は近年上昇している
についてみてきました。
最後に、信頼性と認知度との関係を深掘りしてみようと思います。
『NPO(民間非営利組織)に関する世論調査』をもとに「信頼」と「認知」をクロス集計してみました(図6)。注目したいのは、「ア)(NPO・NGOを)言葉だけは知ってい」て「②どちらかといえば(NPO・NGOを)信頼できる」層が、全体の4割近くを占める点です。
図を見ていると、ちょっとしたことで信頼されない方向に行ってしまう怖さをはらんだ、なんだか心もとない感覚を覚えます。しかし今後、私たちNPO・NGOの活動によって、この層が「信頼できる」と感じてもらえる可能性も十分にあると言えます。
今回お伝えしたことは「信頼性」の一面(ないしは解釈)にすぎませんが、私は日本のNPO・NGOへの信頼性は、まだまだ発展途上にあるのではないかと思っています。いろいろな方法で信頼性を測り、そして高めていくことができるはずです。そして、その先にはNPO・NGOの成長があり、より良い社会に繋がっていくのではないでしょうか。
参考資料
『Edelman Trust Barometer 』( https://www.edelman.com/)
『World Values Survey』( https://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp)
『NPO(民間非営利組織)に関する世論調査』( https://survey.gov-online.go.jp/h30/h30-npo/index.html)
調査をされた関係機関の方へ 貴重な資料を作成・公開されていること誠に感謝申し上げます。