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ソーシャルセクター向けの組織文化を作る―『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』で学ぶ

ソーシャルセクターで働くモチベーションを大切にしたいと考え、そのためには組織づくりも大切であると発信していますが、そんな私にある友人が紹介してくれたのが、『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』という本でした。NPO団体ではどうしてもリソースが限られており、組織文化の醸成という、時間もかかり成果も見えにくいものに取り組むには難しいと考えている人も多いと思います。友人も、そのような団体が本業を進めるにあたって足りないものを補っていくための活動をしており、学んでいる中でこの本に出会ったようです。

私もこの本から得た気づきと組織文化を作るための実践のヒントを、ソーシャルセクター向けにシェアしたいと思います。

まず動機(モチベーション)を二つに分けて考える

この本では、仕事の動機を直接的動機と間接的動機に分けています。

まず直接的動機があり、仕事自体の「楽しさ」「目的」「可能性」の3つとしています。間接的動機というのは、「感情的圧力」「経済的圧力」「惰性」です。直接的動機が仕事そのものから直接生まれるものに対して、間接的動機は仕事へ間接的に影響を与え、しかもそれは業績を下げる方向に働くものとしています。私が伝えていたPSM理論ではモチベーションを4つの指標で捉えていましたが、それよりも上位概念であり、実感としてわかりやすいものです。

パフォーマンスも二つに分かれる

またこの本では、パフォーマンスを適応的パフォーマンスと戦略的パフォーマンスと定義しています。突然のクレーム対応や、災害など突発的な事故に十何に対応する能力のことを適応的パフォーマンス、戦略を立てて計画したことを実施する組織の能力のことを戦略的パフォーマンスと呼んでいます。多くの企業や組織が戦略的パフォーマンスばかりを高めることに注力していますが、行き過ぎると創造性が必要な適応的パフォーマンスが落ちてしまうのです。現代では正解がなく、先が読めない時代ですので、まさに適応的パフォーマンスが必要であり、適応的パフォーマンスが組織文化につながっていくのです。

ソーシャルセクターでは、もともと取り組んでいる課題が複雑なこともあり、適応的パフォーマンスが受け入れられやすいようにも思います。

目的から始まっている団体がファンドレイジングに取り組むようになった時に、数字目標など戦略的パフォーマンスを重視し過ぎる傾向に陥っていないか、少し注意が必要かもしれません。

適応的パフォーマンスは上述の直接的動機から生まれるパフォーマンスです。直接的動機は内因性の動機とされ、自分の中に持っている行動の源泉となる思いです。この本の中でも紹介されている「モチベーション3.0」などでも取り上げられ、昨今重要視されているモチベーションです。内因性のモチベーションを大切にし、組織文化を醸成し、戦略的なパフォーマンスを上げていく、そんな循環が生まれることを目指すと良いのではないでしょうか。私がヒアリングした団体でも、組織に規則やルールを作るより文化を大切にして課題解決にあたっている団体もあり、すでに工夫されている団体もあるでしょう。

適応的パフォーマンスを上げるには

その適応的パフォーマンスを上げる方法として、いくつか策が紹介されていますが、すぐに取り入れられそうなのは次のようなものがあります。

それは、数値の目標を設定して達成を目指すより、「方法を考える」ということです。

例えば、「自社製品を2点購入する顧客の数を5%増やす」という戦略的目標の場合は、これを「自社製品2点を合わせて使う利点を説明する方法を、3つ考えだす」とするのです。

PSM理論でも、アイデアや裁量を活かす機会の多さがやりがいにつながる事例があり、近い策かもしれません。
(参考:PSMに基づき、アイデアを活かす場を作る https://fundrex.co.jp/lab/1897/

循環を作りたい

ソーシャルセクターにおいては、受益者のための活動と支援者とのコミュニケーションが活動として分かれていることもあり、戦略的パフォーマンスで見ても両方が必要となり、通常の企業と比較してさらに複雑な状況があります。だからこそ、ファンドレイジング上の目標などそれぞれの戦略的パフォーマンスを適応的パフォーマンスと融合させ、目的と楽しみが一致するようにして、長期的なパフォーマンス向上を目指す必要があるように思います。

内因性のモチベーションを大切にし、組織文化を醸成し、戦略的なパフォーマンスを上げていく、そんな循環を目指したいです。

 長谷川 綾 Linkedin

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