コミュニケーション
非営利型データ・ドリブンの活用 ~ 3階層で捉えた組織の現状把握
データ・ドリブンでは現状把握が大切です。把握の精度によって、組織活動の成果が大きく左右されます。例えば、コロナ危機に直面しながらもファンドレイジングの成果を上げた組織では、現状把握が効いたという事例もあります。
今回はその把握方法の一つとして、「全体」-「(全体と個々のアクションで)影響度の高い要因」-「個々のアクション結果」の3階層での捉え方をご紹介します。
1.全体を俯瞰的に捉える
まず何よりも、全体を捉えることです。それも簡潔に。例えば、特定期間の募金キャンペーンでは、目標に対して集まっている寄付額は今いくらか、それが過去と比較して順調に集まっているのか、今後も伸び続ける可能性があるのか、といったことです。
特に、経営層やファンドレイジングマネージャーは、定期的に(少なくとも1~2週間に1回)把握し、このままで良いか、何か手を打つべきか、などの意思決定を行うと良いでしょう。今回のコロナ禍において、いち早くその危険性を把握し、意思決定のうえ打開策を打った組織がコロナ前よりも寄付を増やした、という事例もあります。
全体を捉える上でのポイントは、「現在」「過去」「未来」の視点で見ることです。ここでの「過去」の視点とは、「現在」と比較する対象であり、前年対比などから”今のところ”順調かを見極めます。
「未来」の視点は応用編になります。「現在」及び「過去」の施策から想定金額を積み上げて”この先は”順調かを予測します。これがオーソドックスなやり方ですが、他にも「過去」である前年同月の31日間の寄付金額の動きをレポーティング(イメージは、1年前の○日は△円、翌日●日は▲円、という数字が31日分表示されている)して、1年前のこの日はこうだったけど、今年はこうなりそうなので手を打とうと思考する方法も効果的です。
2.影響度の高い要因(KPI)を捉える
事前に全体を左右するような影響度の高い要因(≒KPI)を見つけます。例えば、過去のキャンペーンにおいて、全体の2割の寄付者が寄付金額の8割を占めるという実績から、その2割にあたる高額寄付者の人数を要因(≒KPI)にする。また全体の6割をリピート寄付者(2年連続で寄付する人)が占めるという実績から、その人数を要因(≒KPI)にする、などです。
この要因(≒KPI)を定期的に(少なくとも1~2週間に1回)把握し、順調な要因とそうでない要因とを見分け、対応策を検討します。
特に、現場で実施しているアクション結果に加えて、組織の強みや弱み、また社会情勢などの外部要因の影響が表れやすく、経営層と現場層とが一緒に見て検討することが大切になります。
ここでのポイントは、事前に要因(≒KPI)を見つけておくことです。「データ分析」というスキルがことさら発揮されるのもここです。この部分だけでも話したいことがたくさんありますが、また別に書ければと思います。
3.個々のアクション結果を捉える
個々のアクションとして、メールや郵送などのコミュニケーションの結果を捉えます。
例えば、寄付依頼のメールを送る際に、ランダムに複数グループに分け、違う文面をメールして、結果を把握し、効果の高い文面を見つけます。また、特定の条件でグループを分けて、同じ文面でメールし、その結果を把握して、寄付率の高いグループ(=条件)を見つけたりもします。こうして得た知見から、効果の高い文面と寄付率の高いグループを組み合わせて、メールを送ります。いわゆる「得意技」を見出すようなものです。
特に、担当者ベースでは、いかに実行-結果把握-改善-仮説建て-実行…のサイクルを回せるかが大切になってきます。一方で、ここだけに終始すると危険性も出てきます。例えば、リピート寄付者の増減が全体に与える影響が強いなかで、新規獲得に偏って時間を費やしているとどうでしょうか。それはリピート寄付者が順調な状況下なのでしょうか、また経営層も本人も同意した目的下なのでしょうか。私もそうですが、ついつい目の前のことに捕らわれてしまいがちです。そのため定期的に上記1,2の全体や要因に対して、今のアクションが繋がっているのかを確認する工夫が必要です。
まとめ
このように、現状把握を「全体」-「(全体と個々のアクションで)影響度の高い要因」-「個々のアクション結果」の3階層で見ることで、これまでと違った(より確度が高く納得感のある)意思決定や(高い効果が見込める)施策実行につなげることができます。
さらに、例えば「リピート」をすべての階層で通関しているなど、3階層の整合性を取ることで、経営層から現場層まで一体となった組織活動が実現できる可能性も開けてくるでしょう。