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組織が弱体化する「ミッション・クリープ」とは?~ミッションの良い効果と危険性を考える

非営利組織をはじめソーシャルビジネスを行う企業とって、重要な要素として「ミッション」「ビジョン」「バリュー」があります。いずれも、組織や事業を加速させるために、強力な効果を発揮する可能性を秘めています。

今回は、このうちの「ミッション」について、その効果とともに、隠された危険性をお伝えできればと思います。

1.「ミッション」(使命)の効果

「ミッション」は、その組織で働く人にとっては日常業務を行う上での指針となり、外部者からはその組織の存在意義として見られます。この「ミッション」には様々な効果ありますが、なかでも3つあげてみます。

良い効果① 【組織内】行動及び意思決定の指針となる

スタッフをはじめ、そこで働く人がとる行動及び意思決定の指針となります。例えば、仕事の優先順位を付けるときに「ミッション」に近いものを優先する、組織内での意見が割れたときに判断の軸として考える、新規にスタッフを採用する際に「ミッション」に沿って見定める、など意思決定の指針となります。

良い効果② 【組織内】組織の文化を形成する

スタッフ、理事、ボランティアなど関係者のモチベーションを左右し、その組織に誰が関わり続けるかといった人の定着性に影響を与えます。そして、組織としての共通の価値観や規範、信念といった組織の文化形成まで影響を及ぼします。

良い効果③ 【組織外】理解し共感してもらう

その組織を初めて知った人が、活動を理解し共感してもらえるかに関わります。また、すでに支援している人にとって、モチベーションの維持にも関わります。

このように、「ミッション」には、その組織に関わるあらゆる人のモチベーションを高め、その行動と意思決定の質を向上させる効果があると考えられます。

2.「ミッション」作成のコツ

「ミッション」は、それを読んだ人の記憶に残り、その人の気持ちや行動に影響を与え続けたいことから、その文章は「明瞭」で「簡潔」であることが大切だと思います。

では、「明瞭」で「簡潔」な文章を作成するときのポイントは何かというと、下記の3点のいずれかの切り口で考えると良いかと思います。

  • 原因/目的(why/who/what/where)-なぜ(または何/誰のために)
  • 行動(What we do)-何をするのか
  • 結果(Change for the better)-その結果、どのような変化を起こしたいのか

3.少しずつ人が離れ、そして最後に組織が滅びる「ミッション・クリープ」の怖さ

多くの非営利組織が成長していく過程で直面する課題の一つに「ミッション・クリープ」(ミッションとの乖離)というものがあります。

これは、組織やそこに属する人が「ミッション」から乖離した活動を行うことを指します。発生原因としてはしばしば、資金調達が困難な状況において起こりやすいと言われています。資金を得るために「ミッション」から離れた事業、例えば施設運営の受託事業を行う、関係のない商品のフェアトレード事業を起こす、まったく別の活動地で事業を展開する、などがあります。こうした活動は一概に悪いという訳ではありません。大切なことは、そのマイナス面に注意し、対策をとることです。

「ミッション」から離れた事業は、「ミッション」が組織に浸透していればしているほど、その活動に関わる人のモチベーションに影響を与え、離職の可能性を高めてしまいます。支援者から見たときには、組織の方向性が見えなくなることで、不信感を抱くリスクもでてきます。その結果、スタッフや支援者が一人また一人と去り、組織の存続が危うくなる可能性もあります。

こうしたことが起こらないために、内部または外部への丁寧なコミュニケーションをはかる必要があります。場合によっては、事業の見直しや、「ミッション」の修正などが必要になってくることもあります。

「ミッション」は、組織や活動をより加速する効果がある一方で、こうした組織や活動を弱体化させる危険性も秘めています。もし、組織について何かおかしいと思ったときには、「ミッション・クリープ」が生じていないか考えてみると良いかもしれません。

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