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インパクトラボ

人を動かす支援者コミュニケーションとは ~感情にフォーカスしたコミュニケーションを考える~

普段の仕事では、私たちの活動を応援していただいている支援者や、商品・サービスを購入していただいている顧客とのコミュニケーションは欠かせません。

このコミュニケーションですが、彼らを巻き込み、継続して協力・支持してもらうには、彼らに何らかの『感情』を持ってもらうことで、その後の行動につなげられることがあります。

今回は、このコミュニケーションと感情について、お伝えできればと思います。

1.7つの感情

日本では古くから「喜怒哀楽」がありますので、今回はこの軸を中心に整理してみました。(図の説明は後段に書きました)。まず、コミュニケーションの受け手が、以下の感情を頂いた場合について、見ていきます。

①喜び

相手への信頼や感謝などの前向きな気持ちに基づいたコミュニケーションをとることで、受け手は「頼りにされているから、何とか協力しよう」といった喜びの感情を抱き、行動します。一般的には他の感情に比べて一番ストレスが少ないことから、常日頃のコミュニケーションの基軸としやすいと言えます。

②怒り

「この”人”(ないしは社会、国家、思想、宗教など)を許さない」といった感情に基づいて行動します。特に、(仮想の)敵を持つことで、組織や集団の力を結集し強化する手法が古今東西で見られます。この状態は、客観的または他者の視点から見れなくなり、独善的な行動になるリスクもあります。

③哀(悲)しみ

「手を差し伸べて、助けたい」という感情に基づいて行動します。ただ、一般的には対外的な行動をとることは「怒り」に比べて少なく、また行動を起こしても、対象への変化を生み出さないと感じると、関心が一気に薄れていくきがちです。

④楽しみ(≒ユーモア)

発信者が楽しい気持ちでコミュニケーションをすると、受け手も楽しく感じることが多くあります。また、怒りや悲しみに繋がる話でも、ユーモアを含んだコミュニケーションをとることで、楽しい気持ちを抱き、行動を促進します。例えば、古くは風刺画などのように、面白さに内包し、気づきと行動を促したりもします。

これ以外にも、感情はたくさんあるかと思います。

例えば、以下の3つです。

⑤感動(畏敬)

自分が感じていた以上の偉大な存在(行動や思想、景色など)を目の当たりにし、圧倒されたときに抱く感情。このときは、自分とは異なる見方や考え方を理解しやすい状態になります。

⑥恐怖

戦うか、逃げるか、立ちすくむ(そして従う)か、の行動を促します。戦う方法がなく、逃げ道もない場合は、従わざるを得なくなります。

⑦誇り(自尊心)

自分の価値観や信念に基づいて、行動します。自分のためだけでなく、他人のために行動を起こすことも多々あります。 これらは、あくまでも一例です。

2.感情を考慮したコミュニケーション

この7つですが、その特徴と活用例を下図にまとめてみました。

怒り・悲しみ・恐怖(・感動)

図の上位にあたる怒りや悲しみの感情を受け手に抱かせるコミュニケーションは、その受け手に強いストレスを感じさせ、強制的に行動させてしまいます。また、ストレスが強いため、短期的には効果が出るものの、長く続くことは少ないと言えます(感情が強ければ強いほど、長く続く可能性は高まりますが)。

例えば、紛争や災害などの悲惨な状況に直面した人々の悲痛な顔を写した写真や彼らからのメッセージなどを直接伝える場合には、こうした怒りや悲しみの感情が抱かれることがあります。

このため、特に新規向けのコミュニケーションで考慮すると、受け手の関心を惹きやすく、効果が期待できます。また、既存向けコミュニケーションでは、いわゆる「マンネリ」を防ぐ意味では良い効果を期待できるかもしれません

喜び・楽しみ・誇り(・感動)

一方、下位にあたる喜びや楽しみの感情を受け手に抱かせるコミュニケーションは、ストレスが少なく強制力は弱いものの、自発的な行動を促し長期的な効果に繋がります

例えば、悲惨な状況に直面しながらも、一歩踏み出し始めた、前向きに歩む人々の笑顔を写した写真や、彼らからの感謝のメッセージなどを伝えると、受け手は喜びの感情が湧きやすいことがあります。

このため、既存向けのコミュニケーションで考慮し、基本的なやりとりのベースとして位置付けると、長く良好な関係性が築けます。また、口コミやP2P[顧客が顧客を勧誘する]などの支援者や顧客を主役としたコミュニケーションでは、自分が楽しいもの、好きなものを紹介する方が、される方も楽しく、その効果が期待できたりもします。

最後に

今回あげた感情は一例で、もっとたくさんの感情があるかと思います。また、同じことを伝えても、受け取る人によって異なる感情を抱くこともあります。そこにはきっと、思想や育った環境など様々な要因が複雑に絡み合ってきているからだと思います。

ただ、それでも多くの人を巻き込み事業を進めていくときには、こうした仮説をもとにコミュニケーションを考えてやってみるのも良いかもしれません。

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