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インパクトラボ

助成金を受けたら、次にすべきこと ~スタートアップの団体だから、ぜひ実践したいこと~

前回、「 スタートアップに活用したい、助成金の申請ノウハウ」では、助成金のメリットデメリットの検討から始まり、組織内部での合意から、申請のポイント、とりわけなぜその助成金が必要なのか、どういった背景で申請に至ったのかなどについて紹介した。

助成金・補助金は「もらう」という言い方をすることが多く、申請書づくりに労力のかなりを割いていて、申請が通ると安心してしまい、そのあとの実行がおざなりになったり、実施した成果について目を向けることが少なかったりする。獲得できただけで「あーよかった」と安どするだけでなく、もともと自分たちになかった資源(助成金)を得られたのだから、この機会を団体としても独り立ちできるプロセスや能力を高めるチャンスとしてとらえなおそう

助成を受けながら、その事業実施を経験し、団体としての活動年数も積み重ねていくと、多くの現実的な課題にも直面していく。活動を始めて間もない頃は「思い付き」「場当たり的」でも何とか活動が成り立っていても、かかわるスタッフや支援者が増えてくると、必然的に組織として課題に対応する必要が増えてくる。せっかく助成金が獲得できても、なかなか良い結果が得られず、メンバーが自分たちの活動に自信をなくしてしまう場合もあるかもしれない。

こうした際には、困難を活動の「行き詰まり」として思い込むのではなく、成長する過程での「試練」として受け入れる事が大切だ。この事態を打破していくためには自身の団体を冷静に分析すること。助成団体は、助成先が事業を実施することによって、活動が充実し、掲げる使命(ミッション)の達成に近づくための「たしかな歩み」となることを願っている。助成金獲得を事業実施だけでなく、組織についても飛躍する機会としてとらえなおしたい。

そのためには、以下のような3つのポイントについて着目してもらいたい。

ポイント1:団体の中で、助成金事業の成果をしっかりと振り返る

それまではなかった助成金を受け取ることで団体・グループの活動はどう変化しただろうか。これは実際には、助成金がなかったら、その事業は行わなかった、或いは規模を縮小していたということで、想像しやすいかと思うが、ここで大切なのは、助成金を受け取った場合と実施しなかった場合とでは、役員やスタッフの意識は、どのように変わったかということだ。

多くの団体・グループは活動の機会を重ねるごとに団体のミッション(なぜその団体を設立したか、存在意義は)を深めていくが、それまでの財源だけで体験できなかった機会を助成金獲得によって、体感できることで、どのような意識の変化が生み出されたかをちゃんと見るのだ。それがなかったらと思うと、助成金は当たり前でなく、とてもありがたいものとして、改めて感謝の念も生まれてくるかと思う。

このように助成金を受けることで生み出された事業の成果は、団体の活動を、より広げ、より深めるための大きなきっかけとなっていることが多い。助成金事業が終了した時に、助成団体への報告書をまとめることが必ずあるが、たとえその報告書の項目になくても、自分たちで事業の成果と今後の課題をふりかえり、自己評価を行い、組織内部で共有しておくことをお勧めしたい。

このような企画(申請)・実施・評価のプロセスの積み重ねは、団体としての歩みを確かなものとして認識させると共に、そこから次の活動へのアイデア(挑戦)と、団体が成長するために必要な資源について再認識させることになる

助成金がないときに、小さくまとまっていた団体・グループが、助成金を獲得できたことで、より大きな活動ができるようになり、それをこなしていくうちに、一回り大きな存在になっていくというイメージをもちたい。

団体・グループで評価する5つの視点

  1. 事業を立案した当初に定めた課題は、どこまで達成できたか?達成できなかったものは何か?
  2. 事業実施によって、新たに団体として取り組む必要があると浮かび上がった課題は何か?特に組織内部で体制やスケジュールなど円滑に進めることができたか?
  3. 事業をきっかけに、活動に新たに参加したメンバーはあったか?また団体の存在を認知し、活動についての理解者や支援者に共感は広がったか?団体のミッション・活動の方向性などを話し合い、考えること関係は広がったか?
  4. 事業をきっかけに、課題や問題意識を共有できる団体、同じ分野や、関連する活動をしている団体を知り、連携、協力ができそうな関係ができたか?
  5. 事業を実施することで、今後の活動に活用できる資源(人・モノ・金・情報など)を開拓できたか?

ポイント2:助成金の成果を多くの人に知ってもらえるようにアピールしよう

助成事業終了後に、助成団体への報告書提出が必要となるが、その多くは、「助成金の使途内訳」「精算」が主となる。

しかしそれだけでなく、活動の成果をもとにして、団体・グループの力量や可能性をアピールしておこう。ただし、この場合、成果のみを一方的に強調するだけではなく、「ポイント1」で見つめたように、事業を通して浮かび上がった新たな課題や、これからの活動の方向性についてを示すことで、課題解決に貢献し続けていくことを通じてミッションを深めていく団体の、積極的な姿勢を示すことが大切だ。団体の実績と存在を助成団体に覚えてもらう、格好の機会ととらえて活用しよう。

こうした報告書の提出だけで助成金事業を終えてしまうのは、もったいない。ぜひ「ポイント1」でみつめた内容については、団体を支援している方々や一般の方々に向けて、広く紹介していこう。

ホームページなどで紹介することもあるが、助成団体への報告書とは別に、事業の成果をまとめた冊子を作成し、多くの人々に発信するのもアイデアの一つだ。中には例えば、定期総会の場を報告会として位置づけ、報告を行なう企画に取り組んでいる団体もある。助成金事業を通じて、団体が取り組む社会的課題そのものを「広く知ってもらう」貴重な機会となる。知ることは、考え、参加するきっかけとなるからだ。課題解決の現場を持つだけでなく、同時にそのことに知ってもらい、共感する人々を拡げていくことも両輪として、大切な活動になる

ポイント3:次のアイデアを発想しよう!

「ポイント1」で振り返った内容を、「ポイント2」で外部に発信していく中で、特に周囲の方々や新しい人々に説明していく中で、より自分たちの中で課題や本当にやりたいことが「すとーん」と落ちてきて、相手の反応と相まって、ミッションが深まるということもあるだろう。これも助成金申請がなければ体験できなかったことのひとつかもしれない。

その中でさらに「気づいたこと」「感じたこと」が頭の中に浮かんくる。こうしたアイデアを、メンバーが集まりながら出し合い、共有する機会を設けることが大切だ。ただし、この時「助成金を得るため」のアイデア出しだけにとらわれてしまうと、視野の狭い議論に陥ってしまうので、助成金を受けて活動してみて「私たちが、何のために活動をするグループ・団体なのか」「団体として掲げた使命(ミッション)を達成するために、次にどんな活動が必要か」を改めて認識していくこと。それは団体として成長し続けることでもある。

アイデアを出し合う場では、メンバー同士が、お互いの「ひらめき」や「勘」についても尊重しながら、自由で前向きに話し合うことが大切で、こうした雰囲気づくりを、メンバー一人ひとりが心がけながら、アイデアを出し合おう。メンバー一人ひとりが出し合ったアイデアは、すべて「できること」と前向きに考えながら「どうすればできるか」で発想しよう。はじめから「できない」と決めつけるのではなく「何が足りないのか」「足りないことはどうすれば補えるか」ひとつひとつのアイデアを最大限尊重しながら、積極的に考えることが求められる

団体・グループで評価する5つの視点

  1. すべてのアイデアは「できる!」と考え、実現に近づけよう!
  2. 「足りないこと」は何か。また、それらを補うためにはどうすればよいか。
  3. これまでの経験やノウハウから、活かせるもの何か。「活かせる」と考えた経験やノウハウは、(1)そのまま使えるものか、あるいは、(2)形式や方法をアレンジする必要があるか。
  4. 実施する上で、事務局体制や組織体制について、変更する必要はあるか。「人」や「資金」について、団体の自助努力でどの程度工面できるか。その上で、足りない分はどれだけか。
  5. 団体として、あるいは、地域の現状や社会の情勢から考えて、取り組むべきタイミングはいつか。

助成金はいつまでもあると思わず、それがあるうちに他の財源獲得に取り組む

助成金で実施できた活動の成果を広く伝える一方で、団体の活動を地域社会の中でアピールし、助成金頼みだけでなく、多くの人々に資金的に支えてもらうためにも重要な機会となる。助成を受けた翌年度は「今年度の活動費をどう工面するか」に意識が向きがちだが、これから「団体がどのように成長していくのか」「自分たちの目標を実現させるにはどうするか」について姿を描きながら、アイデアをふくらませ、それを協力者とともに具体化していくことが必要だ

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