ICT / テクノロジー
世界最大のファンドレイジング大会に出展されるNPO向けソリューション3つのトレンド
毎年春に米国で開催される、世界最大のファンドレイジング大会、AFP国際カンファレンス(AFP International Conference on Fundraising)。これまでに3度参加し、一番最近参加した昨年5月の大会では、様々なセッションに行動経済学が取り入れられていて面白かったですよという話は、以前「行動経済学✕ファンドレイジング超入門」の記事でご紹介させていただきました。
今年で開催56回目、参加者4,000人以上、3日間のセッション数150以上と、世界最大の名にふさわしい実績を誇るAFP国際カンファレンスですが、マーケットプレイスと呼ばれるソリューションプロバイダーの出展ブースも、さすがの規模と内容です。出展企業数は、開催年によっても異なりますが、ざっと150~200。大会の開催期間は3日ありますが、その休憩時間だけではまわりきれない程の規模です。
AFPマーケットプレイスの3つのトレンド
今回は、2018年5月のAFPに参加した際、マーケットプレイスを見てまわって感じた、出展されているソリューションのトレンドをご紹介します。
この記事を読んで新しいソリューションのヒントを思いついた方は、記事の最後でご案内している、ソリューションプロバイダーのためのアイデアコンテスト「IDEAS for IMPACT 2019」へのご応募も是非ご検討ください。
1. モバイルファースト
マーケットプレイスの中でよく見かけたのが、簡単にウェブサイトが作れるサービスです。ホームページ用、クラウドファンディング用、オークション用など、用途に特化したサービスが展開されており、いずれも寄付の決済機能やショッピングカート機能のオプションがあるものが多いです。日本にも ペライチ、 Wix、 BASEなど、無料でも使えるサービスがいくつかあり、利用している組織も増えてきています。
このウェブサイト制作サービスを筆頭に、CRM、オークション、寄付者がファンドレイザーとなって寄付を集める「Peer to Peerファンドレイジング」など、ウェブに関わる様々なサービスのほとんどすべてが、モバイルでのユーザビリティを最優先にしていました。
生活の中でのモバイルとの接点の多さを考えれば当然の傾向ではありますが、気持ちと連動して行動に移されることが多い寄付は、モバイルとの相性が特に良いこともこの傾向に影響していると言えます。
【ソリューションの例】
▶ give by cell( https://givebycell.com/)
モバイル端末からの寄付に特化したソリューション。寄付者の気持ちが動いた時すぐに寄付ができる Call-to-Donate(電話で寄付ができる)や Mobile Give (テキストメッセージで寄付ができる)の他、ボランティアや関係者との連絡に使えるGroup Chat、イベントで使うEvent Appなどのサービス郡をまとめて提供している。
▶ greatergiving( https://www.greatergiving.com/en)
イベント用ウェブサイトのテンプレート、招待者・参加者へのメール送信機能、参加者のテーブルや席順のアレンジ機能、オークションの支払いデバイスレンタル、カスタマイズした領収書の発行など、オークションイベントの運営に関連する機能をワンストップで提供している。
2. インサイト機能の充実
上記のウェブサイト制作サービスや、次に紹介するマーケティングサービス、クラウドファンディングサービスなど、様々なソリューションで、効果測定が手間なくできるよう、簡易的なレポート機能がついているものが増えていました。Peer to Peerも主流になってきている中、難しい数字を読まなくても誰でもファンドレイジングの状況が把握できる機能が求められているという背景もあるようです。
一方で、レポートだけを目的としたサービスは、ありませんでした。「データの一元化」は一見便利そうで、日本ではニーズを耳にすることもしばしばありますが、次々に新しいサービスが登場し、そのサービスを利用する主体も多様化してくると、目的ごとにレポートを使い分けるという考え方やスキルも必要になってきますね。
【ソリューションの例】
▶ Qgiv( https://www.qgiv.com/)
寄付フォームつきのウェブサイトをオンラインで簡単に作れるテンプレート、Peer-to-Peerのためのウェブページテンプレート、店頭などで使えるクレジットカード決済端末など、オンライン/オフラインをまたいだファンドレイジングソリューションを提供している。
▶ crowdrise( https://www.crowdrise.com/)
テンプレートから簡単にファンドレイジングキャンペーンのウェブサイトが作れる機能、マラソンなどのスポーツイベントで寄付つきチケットの販売やファンドレイジングができる機能、Peer-to-Peerでファンドレイジングできるクラウドファンディング機能など、様々なオンライン寄付のソリューションを提供している。
3. マーケティングの自動化
2016年のカンファレンスでは登場したばかりという印象だったドナージャーニーが、マーケットプレイスでもセッションでも、当たり前に使われるようになっていました。
ドナージャーニーは、ソリューションにおいては必然的にCRMと連携する形で提供されます。CRMのプロバイダーは多く、名簿機能から進化したと思われるものや、マーケティングツールにデータベースを連携したものなど、その種類も多様です。CRMは進化も早く、ほとんどが先にご紹介しているモバイルファースト、データドリブンのいずれにも対応済みでした。
また、今日コンタクトを取るべき寄付者や、メールの文面で改善可能性があるポイントなど、 目的に応じた実用的なデータ分析機能が格段に進化しており、 担当者はツールの提案に従って作業することで効率的なコミュニケーションができるという状況の実現も、そう遠くはなさそうです。
【ソリューションの例】
▶ Engaging Networks( https://www.engagingnetworks.net/)
マーケティング機能が搭載されたCRM。ドナージャーニーがドラッグ・アンド・ドロップで作れ、メールの一⻫配信やDMの宛名印刷など、作ったドナージャーニーに必要なアウトプットも生成できる。
▶ Blackbaud( https://www.blackbaud.com/)
世界最大のNPO向けCRMプロバイダー。ログイン後のトップページに「今日コンタクトするべき寄付者」がレコメンドされる機能や、寄付履歴による期待寄付額の自動計算機能などが搭載されている。
ここでご紹介した以外にも、ライブオークションのためのアプリ、お金以外の寄付(本や服、家具から不動産まで)を受け付けるウェブサービス、ファンドレイジングできる動画サービス、富裕層のコンタクト情報を提供してくれるサービスなど、面白いソリューションがたくさんありました。今回ご紹介しきれなかったソリューションについては、また近々書きたいと思いますのでお楽しみに。
IDEAS for IMPACT 2019
私にとって2回目の参加となった、2016年、ボストンで開催されたAFP国際カンファレンスには、gooddo株式会社の下垣社長も参加されました。「NPO向けのソリューションプロバイダーには、これだけの可能性があるんだ」と、「これからもっともっと面白くなる」と、一緒にマーケットプレイスを見てまわった日から3年。
日本でも、もっと新しい、面白いソリューションが出てきても良いんじゃないかと、常々話してきた3年間を経て、この度、ソリューションプロバイダーのためのアイデアコンテスト「IDEAS for IMPACT 2019」を開催することが決定しました。
選考の対象となるのは、今回ご紹介したような、NPO・ソーシャルビジネスをはじめとする、ソーシャルセクターの方々が利用できる「ソリューション」のアイデアです。プラットフォーム、データベース、グループウェア、人材サービス等、ソリューションの種別は問いません。ソーシャルセクターの方々が「あると便利」「使ってみたい」と思うソリューションであれば、ファンドレイジングにつながる必要もありません。
最優秀賞には100万円の賞金をご用意しています。
締切は8月20日(火)23:59です。みなさまのアイデア、お待ちしています!