コミュニケーション
ファンドレイジングの王道「キャンペーン」(後編)~準備の仕方と運用のポイント
前編(ファンドレイジングの王道「キャンペーン」(前編)~その種類と効果)では、キャンペーンの種類と効果についてみてきました。
今回は、その準備と運用について、見ていこうと思います。
2.効果的なキャンペーンの戦略
では、実際にキャンペーンを実施するには、どうすればよいのでしょうか。今回は「シーズンキャンペーン」について、見ていきます。
国内においては、これまで7月や12月はボーナスシーズンということで、そこに合わせたキャンペーンを行うことがありました。しかし最近は、12月を『寄付月間』と定めて寄付行為の促進をはかる動きがあったり、税額控除のメリットが受けられる認定NPO法人の増加や、同じく控除を受けられる「ふるさと納税」(※1)の爆発的な拡がりにより、12月のかけこみ寄付が増えています。こうしたことから、12月をピークとする季節性キャンペーンへの注目が今高まってきています。
2-1.準備フェーズ(1-4ヶ月)
まず、目標金額と実施期間などのキャンペーン全体の計画を立てて、実施に向けた準備を進めていきます。この計画と準備が、キャンペーンの成否を大きく左右します。仮に12月をピークポイントとした場合、計画と準備は早いところは6月から、遅くとも9月から始めます(年間のファンドレイジング計画や組織の経営戦略に組み込んでいる組織もなかにはあります)。
STEP① 計画立て
まず最初に下記を決めましょう。
- 目標金額
- 実施期間
- 体制
- ツール
- 予算
- スケジュール
STEP② 体制の準備
ファンドレイジング担当だけでなく、理事やボランティア、そして出来る限り他のスタッフも巻き込んで、組織全体で進めていく体制を創りましょう。実際には、理事や他のスタッフは忙しいので、声を掛けにくいかと思います。その場合は、事務局長などの責任者を説得してその威光を借りたり、お願いしたい仕事を細分化して一部だけを協力してもらうなど、可能な限り巻き込む努力をしましょう。
キャンペーンを単なる資金調達の一環としてではなく、組織を上げて取り組み、その過程を通じてスタッフ間や理事・ボランティアとの連帯感というか一体感を高めることを目指しましょう。そうすることで、信頼関係の強い組織へと成長させていけます。組織としては、例えば地域で毎年あるお祭りのような感覚で、キャンペーンを行えるようになるのが理想です。
STEP③ キャンペーンメッセージ(ストーリー)の作成
今回のキャンペーンを通じて支援者に何を伝えたいのか、そしてそれは支援者の共感を呼び込むメッセージになっているのかを踏まえて作成します。ここでいうメッセージとは例えば、キャンペーンを通してのキャッチコピーであったり、キャンペーンのwebサイトや広報媒体物で必ず紹介する寄付者のストーリーであったります。
STEP④ 対象となる支援者の選定とリストアップ
キャンペーンで呼びかける対象者を決めます。マンスリーサポーターを含むのか、関東地域に住む支援者だけにするのか、若年層だけにするのか、など。選定方法として「支援者分析」などがあります。選定した対象者はリストアップしましょう。
STEP⑤ コミュニケーション方法の選定(フォローアップ方法の選定含む)と準備
対象者に応じたコミュニケーション方法とその内容を決めます。また、寄付後のお礼方法も決めておきます。そして、決めたコミュニケーションの準備をしましょう。
2-2.実行フェーズ(2-3ヶ月)
上記の準備を経て、キャンペーンを実行します。実行時のポイントは下記になります。なお多くは10月ぐらいから、一部の準備タスクと並行して初めて行くとよいでしょう。
POINT1.対象に応じたコミュニケーションと寄付依頼
支援者の属性を踏まえて、カテゴリー分けして、それぞれに適切なコミュニケーションを行いましょう。例えば、マンスリー寄付者を対象に含めた場合に、彼らは毎月寄付していることから、なぜ今回のキャンペーンで追加寄付を求めているのか、その必要性をより丁寧に説明することが大切になります。手法としては、彼らへ郵送する寄付案内に、その理由を丁寧に書いた資料を1枚追加するなどがあります。
POINT2.段階的なコミュニケーションと寄付依頼
いきなり寄付のお願いをしないように気を付けましょう。過去に単発で寄付をされた方が、あまりNPOからの連絡がないなかで年末になっていきなり寄付のお願いを受けたら、困惑してしまう恐れがあります。そうならないために、例えば、10月に活動報告書を送付し、11月にイベントを案内し、12月に寄付のお願いをする、などといった段階的なコミュニケーションがあります。
POINT3.複合的なコミュニケーションと寄付依頼
寄付をお願いされても、その当人は忘れていたり、気が付かなかったりする場合もよくあります。このため、12月初旬に郵送物を送り、まだ寄付していない人には限っては12月下旬にメールでフォローアップするなど、複数のコミュニケーションツールを適切なタイミングで使い分けることで、嫌に思われない範囲で寄付の依頼ができます。
2-3.振り返りフェーズ
今回のキャンペーンを振り返り、翌年に向けた改善点などを検討します。
3.まとめ
キャンペーンの運用をみると、ファンドレイジングの知識・スキルが必要になる箇所が随所に見られます。例えば、対象者の選定においては、いわゆる「支援者分析」のスキルがあるとより効果的ですし、コミュニケーションは必然的に発生することから、いわゆる「支援者コミュニケーション」のスキルが求められます。また、組織のメッセージ等を棚卸する「ケースステートメント」スキルなど、多方面にわたってファンドレイジングの知識・スキルの有無が、キャンペーンの良し悪しに効いてきそうです。つまり、キャンペーンというのは、ファンドレイジングの総合力が試される手法と考えても良いかもしれません。