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ファンドレイジングあるある~知らないうちに数字に振り回されて成果が出なくなる

ファンドレイジングでは、自然と数字に目が行くことがあるかと思います。例えば、寄付者の数や金額、また会員制度を設けている場合は継続・退会率など。こうした数字は、現状を把握したり、成果を考えたりするときに役立ちますが、気を付けないと、知らないうちに振り回されて、結果として成果が損なわれる危険性があります。

1.その数字は行動につながっているか

例えば、メールマガジンの登録者数です。ある団体の担当者は、名刺交換した人を必ず登録して、欠かさず金曜日にメールしていました。その結果、登録者数は数千にも上っており自然と執筆活動に力が入っていました。これは素晴らしいことですが、一方で気になる点もありました。

それは配信後について、受け手の支援者や、送り手の担当者自身の行動について、明確な指針がないことでした。「メールマガジンの登録者数」という数字を意識して、一所懸命に登録者を増やしてメルマガを配信しているのですが、その先の活用方針が不明確だったのです。

一般的なファンドレイジング戦略としては、メルマガ配信を通して支援者は団体の活動や社会課題への共感や理解が高まり、「お問い合わせ」や「寄付」などの次のアクションにつなげていきます。ここが不明確だと、「メールマガジンの登録者数」をいくら増やしても、団体の成長など次につながることへの実感がないままとなり、ただただ数字を眺めているだけと変わらなくなってしまいます。

似た例としては、webサイトのページビュー数やSNSのフォロワー数などが挙げられます。ページビュー数は「閲覧されている」という結果はわかるものの、その先のアクションとして例えば「寄付」までを意識していなければ、数字を眺めていることと同じになります。

ほかにも例えば、支援者データベースの登録者数があり、その数を一所懸命増やしても、活用されなければ同じことになってしまいます。

このように、行動につながらない指標を一般的には『バニティ・メトリクス(虚栄の指標)』(※1)と呼んでいます。

数字を見るときは、まず次のアクションや意思決定につながっているか、また組織やファンドレイジングの戦略に組み込まれているか、を意識してみることをお勧めします。

※1 『バニティ・メトリクス(虚栄の指標)』とは
直訳すれば「虚栄心の指標」。ツイッターのフォロワー数やフェイスブックの「いいね!」数、商品やサービスのユーザーレビュー数など。中身と関係なく数だけを競うのは無意味だということに、気づかないでいるさまが“vanity”(虚栄心、うぬぼれ)と呼ばれる。
[imidas] https://imidas.jp/america/detail/B-22-A-006-15.html より

2.数字に惑わされていないか

近年は多くの団体でマンスリー制度が用いられていますが、ここにも数字に振り回される危険性が潜んでいます。

よくあるのは「退会者数」です。例えば、去年度の退会者数100人だったところ、今年度は300人に増えていたとします。ファンドレイザーとして、せっかくサポーターになってくれた方が退会するのは寂しい気持ちになりますので、彼ら退会者の動向は日々の業務でも肌感覚としても自然と感じてきます。もしかしたら数字を見ながら「去年より200人も多いので、なんとかしなければ…」と考えこんでしまうこともあるかもしれません。

実はこの「退会者数」ですが、「退会率」(※2)でみると景色は変わってきます。一般的には「退会者数」が増えているということは、「会員数」も増えていることが考えられます。

例えば昨年度1,000人の会員数に対して、退会者数100人だとすると、退会率は10%の計算になります。明けて今年度は会員数が3,000人に増え、退会者も300人に増えたとします。ただし退会率は10%と、昨年度と同じ値になります。

このように退会者数が増えていますが会員数も伸びており、結果としての比率は変わっていないことがよくあります。もちろん、退会者数を減らしたいと思うのは良いことですが、仮に300人を100人まで減らすとしたら、退会率は3~4%を目指す必要があります。この割合は、難しい目標値だと直感するかもしれません(個人的には年間の退会率が5%をきっている団体は極めて稀な印象です)。「退会者数」だけを見ていたら、大変な目標に突き進む可能性がありました。

※2 ここでは 〈当該年度の退会率 = 当該年度の退会者数 ÷ 当該年度の会員数 × 100〉 と計算しています。

「退会者数」は一所懸命にサポーターを獲得して長期的に良好な関係を築こうとしているファンドレイザーとしては意識せざるを得ない数字です。そこに引っ張られてしまうのは当然だと思います。

しかし、ここは意識的に数字を注意してみる試みをお勧めします。「今見ている数字は、(サポーター制度の)一部を表す数字であり、そもそもこの数字がどのような意味を持っているのか、また他の表現方法がないか(例では割合をみた)」といったことを考えてみてはいかがでしょうか。

数字は、扱い方によって私たちの行動を大きく変える力があります。数字を正しく扱うことで、ファンドレイジングを加速させていただきたいと思っています。

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