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地域における「志」金循環によって、地域資源は活性化する

「日本初の都市型コミュニティ財団」として昨年に設立された世田谷コミュニティ財団(東京都世田谷区:水谷衣里代表理事 https://scf.tokyo/)が設立記念助成プログラム「ココロマチ」をスタートし、その公開審査会が6月1日に実施されたので、審査員の一人として参加した。

コミュニティ財団 の広がり

財団法人といえば、これまでは所管官庁の外郭団体的な性格や、著名な賞受賞者がその賞金を基にして設立したり、企業等の法人が本業以外に芸術振興や環境保全などに寄与するために設立してきたイメージがあったのではないだろうか。

そうした中で、人々の社会に対する意識が変化しつつあり、これまでは公共的なことは行政が担うべきであるという認識から、人口減少社会の中で行政予算も頭打ちの状況にあるが、地域の中には社会的な課題がたくさん存在して、行政サービスだけではすべてを解決することはできない。だったら、地域のためにみんなで負担してもよいから、よりよくしていこうと思いが集まり、これまでの財団とは異なり、地域の資金と繋がりの受け皿として、いわば市民立の「コミュニティ財団」が各地で急速に広がりだしていった。

日本初の都市型コミュニティ財団

全国コミュニティ財団協会(https://www.cf-japan.org/)に登録している団体は30あるが(2019年6月現在)、その中で「日本初の都市型コミュニティ財団」を標榜する世田谷コミュニティ財団は、「まちを支える生態系をつくる」をミッションに掲げている。先だって開催された1周年記念イベント「世田谷スプリングサミット」 (2019年4月21日) では設立後1年間の活動報告会として、数多くの会合を重ねながら、この地域に必要とされ、ふさわしい取り組みを進めるために、数多くの人々に出会い、話し合ってきたことが紹介された。

まさに地面の下で着々と根っこを降ろして地域の中で張り巡らして、やっと地表に現れた小さな芽が、これから大きく生育していくことがグラフィック的な手法で表現されていた。

今回の公開審査会では、世田谷という地域だからこそ「都市の農」の継続に寄与しようとした野心的な取り組みで、5つの提案者が審査会に出席した。事業計画の説明を4枚の写真ポスターの前で紹介するプレゼンのあと、審査員がそれぞれの提案者のところに質問に伺うという形式で、会場である二子玉川ライズ・オフィスの「カタリスト」の円形的なレイアウトの特色をうまく活かした進め方であった。

公開であるため審査員と共に市民が同様に質問に伺うのだが、中にはそこで「こういう事業をされている方を知っているので一緒にやりませんか」とか「自分のところはこんな活動をしているので連携しよう」といった感じでその場で名刺交換なども進んでいった。審査の結果として2つの団体への支援が決定した。

参考:https://scf.tokyo/3356/

市民が参加することで生まれる価値

しかし助成金だけではなかった。集まった市民の中でも地域の中で農をテーマにするだけでもこのような課題があり、またオリジナルな事業を展開している人々がいることを知り、世田谷の地勢や資源を活かし、世田谷ならでは取り組みになっていることを知っていった。

審査員とは別に、市民もそれぞれの提案者に対してコメントを紙に書いて貼りだしたが、寄せられた応援メッセージの内容が素晴らしかった。それはあたかも、自分が審査員になった気持ちで、メッセージを記すときに「自分はこの地域に何を期待しているのか」「何が実現できるとよいか」を問い直し、また改めて地域についての考えや思いを深めていくことになっていた。

助成金は限られた資源であり、全部に渡されるわけではないが、参加された提案者にとっては、新たな繋がりの発見や応援メッセージを得ることで、勢いを受け取り、次の成長の種を得たように思えた。また参加した市民も、そうした提案者の取り組みを自分自身に重ねて、世田谷という地域で進めるられる先駆的な事象があることを誇りに思っている。こうした積み重ねが地域に蓄積することで自分のところだけがうまくいけばいいというのではなく、自分と周囲が良くなることを考える人々を増大させていき、それがまた地域に住むことをますます誇りに思わせていく


「志」金循環とは、このように単なる資金循環だけでなく、そこに思いが込められていることを表現した言葉である。地域での「志」金循環が共感を軸として資金だけでない多くの循環を実感した機会となった。

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