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イベントレポート:博物館・美術館のファンドレイジングに何が必要か

2024年5月24日に開催されたオンラインイベント「日本の文化芸術振興や博物館・美術館のファンドレイジングを拡大するために いま、何が必要か」は、多くの方にご参加いただき、貴重な知見が共有され、活発な議論が交わされました。

博物館のファンドレイジングやクラウドファンディングの成功事例を通じて、博物館や守るべき文化の価値を再認識する機会となりました。以下に、その内容を報告します。

登壇者ご紹介

三好学 博物館明治村事務局長

廣安ゆきみ READYFOR株式会社キュレーター

イノウエヨシオ ファンドレイジング・プロデューサー

ファシリテーター 浅井美絵 フリーランスファンドレイザー

国立科学博物館クラウドファンディングの成功秘話

イベントでは最初に廣安さんから、国立科学博物館のクラウドファンディングの話が紹介されました。廣安さんは、具体的な数値を交えながら、クラウドファンディングの成功要因について詳しく語ってくださいました。

国立科学博物館のクラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/kahaku2023cf

国立科学博物館のクラウドファンディング

このクラウドファンディングは、多くの方がご存知の通り、開始から最初の2日間で全体の50%の金額を達成しており、最終的には9億円以上の金額が集まりました。その成功の背後にある戦略として、詳細な数字とともに次のポイントが挙がりました。

  • 準備と戦略設計の重要性:クラウドファンディングを始める前に、プロジェクトコンセプトの決定や返礼品設計のための仮設立て、広報プランの決定を行った。目標達成後からは、クラファン参加者を長期的ファンにするための設計を行っていった。
  • 90日間の支援の推移:最初のメディア発信による爆発的な伸びだけではなく、毎日ご支援はあった。日々Youtube配信などのコミュニケーションを行っていた。

ReadyForのnote記事にも詳細が書かれているとのことです。(https://blog.readyfor.jp/n/n3e5d6cfd590c

明治村のファンドレイジングの道のり

続いて、博物館明治村の三好さんが登壇し、明治村のファンドレイジング活動について語っていただきました。

博物館明治村(https://www.meijimura.com

博物館明治村

ファンドレイザーは、寄付者の満足度を上げたり、インパクトを数値化したり、色々なことを求められますが、やっ明治村では、組織内にファンドレイジングを導入し、マンスリーサポーター制度「みらい基金」をつくりあげる過程で、改めて明治村の存在価値に気付いていく道のりがありました。ファンドレイジングとしては、以下のポイントが見えました。

  • 自分たちの価値に気付く:ファンドレイジング活動を通じて、明治村が地域社会や文化に与える影響、社会的価値を明確化していった。そしてそれは、「設立説明書」に書いてあったことだと再認識した。
  • インナーとアウターへの共有:社会的価値を自組織内でも共有し、外部へ発信できる準備を進めていった。
  • まずはGIVE:「豊かな体験をお届けする」ことがまず重要。寄付の動機は、社会的価値への共感だけとも限らない。ご支援者の方のそれぞれの経験から、ご寄付につながることもある。

明治村の事例は、ファンドレイジングが単なる資金集めではなく、自分たちの価値を再発見し、支援者との関係を深める重要な機会であることを示していました。
※参考:明治村マンスリーサポーター制度「みらい基金」(https://www.meijimura.com/foundation/donation/

明治村マンスリーサポーター制度「みらい基金」

組織の価値発見と仲間づくり

イノウエさんからも次のようなコメントがあり、一段と学びが深まりました。

  • 自分たちがやっていることが外からどう見えるか自覚する必要がある。
  • 自分たちの価値を発見し、発信していくことが大切。
  • 寄付を呼び掛けるというよりは仲間づくりの意識を持つ。
  • 組織内部から自組織の価値について実感し、浸透させ、組織を成長させていく必要がある。

文化施設の今後のファンドレイジング

最後に、浅井さんが文化施設独自のファンドレイジングのポイントについてまとめまられました。

  • 文化芸術の分野は、他のジャンルと比べて価値の重要性をすでに体験している人が実はたくさんいる。そこが強みである。
  • 既存のその体験している人たちにどのように自分たちの価値を発信し、どのように一緒にやって行こうとするのかを、考えていく必要がある。
  • 組織の内部の人にも、その価値を感動を持って伝えていけるようにすると良いだろう。

イベント全体を通じて、具体的な実践事例が共有され、参加された方は大いに刺激を受けたことと思います。今後もファンドレックスでは、博物館や美術館など文化施設の発展にも貢献していきたいと考えております。


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