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モチベーション向上とコミュニティマネジメント ~CRファクトリー著『コミュニティマネジメントの教科書』より~

ソーシャル業界では特徴的なモチベーション管理が必要であると考え、これまでPSM(PublicServiceMotivation)の理論などをご紹介してきました(https://fundrex.co.jp/lab/tag/psm/)が、今回は「コミュニティマネジメント」という面からお伝えいたします。

非営利組織では、経済価値で測れない非金銭的な成果を重視していることから、より一体感を強めるための組織マネジメントが必要です。今回ご紹介する『コミュニティマネジメントの教科書』という本は、コミュニティ運営の実践を10年以上培ってきたCRファクトリーで作成され、実践の書としてまとめられています。実践の例示も多く、参考にされた方もいらっしゃるかもしれません。

個々人のモチベーションとスキルを最大限に活かすためには、組織マネジメントが必要です。この本で言う組織・コミュニティとは、ボランティアを含めた組織や市民活動のコミュニティといった幅広く触れているものですが、NPO団体のスタッフの「モチベーションアップ」の視点に通じる部分も多いものです。今回は、その部分を抽出してみたいと思います。

序章 良い関係性がモチベーションを生み出す

早速序章からご紹介したいのですが、5ページ目にある、「良いコミュニティや関係性に恵まれたとき、人はほっと安心できて居心地が良かったり、自分らしく居られて快適に過ごせたりします。さらに、「何かやってみたい」「まわりに貢献したい」と意欲的・前向きになってイキイキすることもあるでしょう。」と記載されている通り、私がモチベーションにこだわるのはまさにこの点で、モチベーションさえあれば勝手に人は貢献する、と思っています。そして、「良いコミュニティや組織が、社会問題を予防したり解決する。」との通り、スタッフのモチベーションを向上、維持することは、社会課題解決につながっていくものと考えています。

第1章の基本理論では、「温度差と多様性」ということに触れています。

特にボランティアという立場の人をマネジメントするには、役割や人の多様性も増し、難易度が高いことです。ただし有給スタッフ間でも、業務についての想いやスキルについて温度差と多様性が存在することも、忘れてはならないものです。そこで「かかわり方のグラデーション」として、役割の設計を行うことが書かれています。

一方で、多様なかかわり方を認めるということは、成果へのコミットメントや評価という点では、より複雑さを増すものです。評価や報酬の制度設計には、難しいことが出てきます。それでもかかわる人の納得性を高める方が、組織が長く効果を上げるには重要であると考えます。

この章では、有名なダニエルキムの組織の成功の循環モデルも紹介され、関係の質→思考の質→行動の質→結果の質から関係の質へループしてつながる循環モデルの説明もされています。

組織の成果が上手く上がっていないときは、関係性の質に着目せよ、ということです。ダニエルキムの説の通りですが、結果や結果に直結する行動ばかり追い求めると、組織は疲弊するものです。関係性が向上し、思考の質が上がるということを、「モチベーションが上がる」と私は捉えています。

教科書の中では、この質向上のためには「相互理解と愛着」が必要としています。ここでも温度差があるもので、自己開示をしたい人とそれほどでもない人、多様な人がいます。一律にマネジメントするのではなく、多様性が存在する前提で設計していくことが必要なのです。

優れたコミュニティの因子はモチベーションを高める要件でもある

非営利組織のコミュニティマネジメントは難易度が高い、ということが見えてきたのですが、CRファクトリーではアンケート調査から統計的な分析により「良いコミュニティの要素」である3つの因子を浮かび上がらせ、紹介しています。それが、①理念共感と貢献意欲、②自己有用感、③居心地の良さ、の3つです。

モチベーションの観点から見ても、同様のことが言えます。①は、自分が大きな目標のどこに向かっているのかということを確認できるとやる気が上がるということが、心理学上でも言われていることです。②の面では、自分にできることで感謝され、一緒に働いている人や支援者の方・受益者の方に感謝されることが、モチベーション向上につながります。③は最近よく言われる心理的安全性でもあり、Googleでもっとも生産性に重要な点であるというリサーチ結果が有名ですが、素の自分でいられる場が良いコミュニティを生み、モチベーションを高め、生産性を高めると考えられます。

モチベーションが上がらないとき、それは個人の気持ちの問題だけでなく関係性からも影響しているかもしれないのです。

この本の後半は、実践的な施策・ワーク集に加え、データに基づいた重要性も展開されていて、幸福との関連なども紹介されています。強くあたたかい組織・コミュニティ創りが、これからの日本に不可欠であるとされています。

スタッフ個々人のモチベーションを上げるということで、働く人との関係性に着目し、コミュニティのマネジメントという視点でトライしても、良いのかもしれません。

実際のNPOの例示もあり、具体的な教科書としてとても参考になるものです。ぜひ手に取って見られてください。

参考:CRファクトリー( https://crfactory.com/

 長谷川 綾 Linkedin

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