経営/マネジメント
できるファンドレイザーの3つの仕事術
ある団体のファンドレイザーの方にお話を伺う機会があった。実は彼は自ら代表理事として活躍される一方、いくつもの団体理事を兼務、加えてファンドレイジングの業務も器用にこなし、時間は同じように一日24時間しかないはずなのに、多くの業務を並行して進められている多機能ぶりが素晴らしかった。2020年はテレワーク元年といわれ、働き方改革によって可処分時間が増え、公務員の兼業の解禁や「副業・複業」などダブルワーク、トリプルワークの人も多くなることも予想される中、了解いただいたので、その仕事術の秘訣を本稿で紹介する。
1)ToDoを書き出し、点検する
手帳タイプのノートを愛用されていた。実はスケジュールの調整もウェブサービスを活用されているが、あえて手帳に予定を書き写し一覧しながら見直しを何度もしているという。時間管理は予定を記入しているだけでなく、空き時間を確認していて、そこにやるべきことを予定しているという。先でもよいことは先の予定に入れて、今日こなさなければいけないリストを書き出すことで、頭の中から吐き出して、どれから進めるかの順番を検討するのだという。「あれもしなきゃ、これもしなきゃと思っているとそれが気になって頭がいっぱいになる」ので、とにかく書き出すことでいったん頭の中をクリアにして冷静にこなすことができるというのだ。少なくても毎日、確実に減らすことで、まったく手つかずから、少しずつでも減っていくことを自分の目で確認することで「書き出したリストがひとつずつ減っていくのが何よりも快感」だという。これが次にやろうという気持ちの原動力になるのだろう。
慣れないときには、たくさんやらなければならないことでリストがいっぱいになってしまい、マストリストではなく、ウィッシュリストとなってしまい全然減らないこともあったそうだ。そんな時には「毎日、確実にこなせることを3つ書き出して、それを終えるというくせをつけていく」のだそうだ。それも難しいことでなく「誰誰に話しかける」とか「周囲をそうじする」とか「メールを書く」とか作業の軽いものもいれておいたという。少し慣れてくると始業前に今日やることが全て終わってしまうと、一日のスタートがやる気に満ちて始まるのだそうだ。
2)「雑事を優先する」ことを意識する
大事な会議をしていたとしても、突然かかってきた携帯電話に出てしまい、思考が中断して、何のことを検討していたのか忘れてしまったということは、ないだろうか。私たちは重要度の高い仕事よりも緊急の仕事を優先してしまう傾向があるのだそうだ。それは間違いではないが、時として肝心なことが終わらないことにも繋がってしまう。そこでそういう傾向にあるのだということを意識して、集中が途切れないようにしているのだという。先の場合だと、電話に出ない時間帯を設定しておくのだそうだ。
また空いた時間にやればよい「埋め込みの仕事」をもっておいて、急ぎではないがこなさなければならないことを少しずつでも終わらせていくのだそうだ。特にミッションの異なる複数の団体の用事を取り組むことで、頭を切り替えて、気分転換にもなるだという。まさに雑事が緊急とならないように、あらかじめ時間があるうちに減らしていくのだという。
3)集中時間で瞬発力を磨く
さきほどの他の団体の業務で気持ちを切り替えることにも繋がるが、その瞬間瞬間に、その業務に集中するのは大変だろうと伺ったところ「毎日、挑戦している」のだそうだ。人の集中時間は2時間程度が限界と言われるが、「あと45分でこれをやってしまおう」と具体的に目標を立てて、取り組んでいっているのだそうだ。取り組みを終わらせたとき、特に早く仕上がったりするときには「新記録達成だ!」と自分の成長をたたえて、自分へのご褒美としてコーヒーを飲んだり、お菓子をほうばったりするのだそうだ。自分を認めるというのはなるほどと思った。
ただいつもそうしてばかりだと、さすがに疲れてしまうので、映画を見たり、小説を読んだりとほかのことに没頭する時間も大切にしているのだそうだ。このあたりにも原動力が隠されているようだ。
ファンドレイジングには「魔法の杖」はないといわれるが、こうした地道な積み重ねが成果を招いているのだろうなぁと思った次第だ。