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インパクトラボ

ファンドレイザーはたくさんの人とコミュニケーションをとるのが良いのか?

みなさんの組織では、寄付収益に占める大口寄付者の方の割合はどのくらいでしょうか。

私の経験上、寄付者の1割に満たない数の方が、寄付収益全体の半分以上の金額を占めていることが多い印象です。

例えば、あるNPO組織では、広く多くの人に支援してもらっている印象が外から見ても強く、働くスタッフも実際にそう思っていました。しかし実際は、1割の寄付者が収益全体の6-7割を占めていることがわかり、スタッフ皆が驚いたという話を聞きました。

そこで今回は、ファンドレイザーと大口寄付者との関わりについて見ていこうと思います。

大口寄付者が一人で対応できる数には限度がある

ファンドレイジングが先行している米国では、大口寄付者担当を設置することが多々あります。そうしたなか近年、大口担当が1人で対応する範囲が広すぎることで、様々な問題が起きています。例えば、ある大学基金の担当者は、1人で1,000人を越える大口寄付者及びその見込み層の方への対応を行っていましたが、期待されるコミュニケーション量に耐えることができなくなり、身体を壊してしまったそうです。

この事態を受けて、大学が寄付者コミュニケーションについて調査・分析をしてみたところ、今まで当然と考えていたことが誤りであったことがわかってきました。

  • 大口寄付者の3分の1が「寄付に対するやり取りをしたい」と考えている。残りの3分の2は、やり取りには消極的。
  • やりとりが必要な支援者に対して、大学として時間が費やせていないことでの機会損失が大きいこと。
  • 担当者として対応するドナーの数を制限することで、Win-Winの関係になれること。

この結果を受けて、大口担当1人のカバー数を150人に絞りました。そして、人数を大幅に絞ったコミュニケーションを続けた結果、1年半後には、寄付額を2倍以上に伸ばすことができたそうです。

対応する寄付者数を絞り、定期的に対象を見直す

今日の米国では、ファンドレイザー1人が対応できる寄付者の数について研究が進んでおり、大口寄付者対応においては、ファンドレイザー1人につき100人~150人という見解のようです。

また人数を絞ること以上に重要視されているのが、絞った対象者を定期的に見直すことです。あるファンドレイザーは、「少なくとも年2回は、大口対応を行うべき支援者について、維持する人と、他のチームに移す人を決めます」と話しています。

最後に

ポイントは、大口寄付者対応という丁寧で親密なコミュニケーションが必要な場面では、対象となる人が多すぎるとコミュニケーションが難しいという前提にたち、その上で誰とコミュニケーションをとれば双方がWin-Winになれるのか、コミュニケーションをとるべき寄付者を継続的に決めていくことが、組織としての収益向上につながること。そしてな、何よりファンドレイザーにとって、メンタル面でプラスの効果が得られる、ということです。

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