経営/マネジメント
社会をHappyにするプロボノマネジメント
個人的な話となりますが、私はプロボノをやっていたことがあります。
以前会社員をしていた時には、プロボノとして活動をしていました。NPO団体ではなく、ソーシャルベンチャー企業で、女性が一人で立ち上げ海外でモノづくりをしている会社でしたので、日本の業務の多くをプロボノチームでまわしていました。具体的には、プロジェクトマネジメントから、広報活動、経理まわり、輸入業務、顧客への発送業務など多岐に渡っていました。
プロボノなので当然金銭的対価はなく、ただ、その会社が大変なフェーズにあることをプロボノ参加者全員が理解し、会社が実現しようとしている世界観に共感して活動していました。実現したい世界が大きな目標だからこそ、お給料がなくてもお役に立てるなら手伝おう、という気持ちでした。今ではその会社はアルバイトや業務委託で業務をまわしていますが、一部の業務ではまだプロボノさんに手伝ってもらっているところもあります。
プロボノ参加側の気持ちとしては、本業とは別のところで、自分のスキルを試してみたいという気持ちと、対象の企業だったり団体だったりの世界観に共感して何か「支援したい」という想いから始まることが多いと思います。内閣府の「社会意識に関する世論調査(令和2年1月)」によると、「社会のために役立ちたい人」が63.4%というデータもあります。このような中には働いて身に着けたスキルを活かしたいという人もいるでしょう。マンパワーが不足しがちな団体にとっては、このような人のスキルをお借りすることは積極的になって良いと考えます。
ではそのために、気を付けることは何でしょうか。
ドキュメント準備
まず、受け入れにあたって最低限の書類は準備しましょう。次のものは必要になってくるかと思います。
- 申込書:連絡先など最低限の情報をあらかじめ聞いておく。ここに、希望業務や可能な業務時間を記載してもらいます。
- 機密保持契約:特に、個人情報に触れる業務がある場合は、勤務場所もしっかり特定した方が良いでしょう。
- ボランティア保険の加入:私の場合は特に加入していませんでしたが、通勤事故にも対応できるケースもあるので、加入しておいた方が良さそうです。団体としてボランティア保険に加入できるかは条件が異なってきますので、事前にご確認を。
受入業務について
ボランティアと違って、プロボノの場合は業務スキルを使って支援してもらうので、受け入れられる業務や希望する時間(週●時間の稼働)などを具体的に予め考えておくのが良いです。「プロボノ」とはもともとは弁護士など専門職の士業のスキルを支援することから始まっていますので、そのような専門業務はわかりやすいのですが、例えば以下のような業務でも受け入れが可能になってきます。
- 販売のサポート
- 広報
- 経理
- イベントマネジメント
単純作業でも手伝ってもらえることは団体としてはありがたいとは思いますが、継続的に単純作業だけをお願いするというよりは、思い切ってひとつの業務を渡してしまうのも検討して良いと思います。
気を付けること
ただ、受け入れにあたって気を付けるべきこともあります。
利益相反
例えば、プロボノの方の本業ではお金を得ている業務をボランティアでやっていただくと、本業の会社としては売上の機会を失することになるので、プロボノの方が勤めている会社から何か言われてしまうかもしれません。そのような業務をお願いする場合には、しっかり説明をする必要があります。実際にプロボノとして業務がOKになるかNGになるかは、ケースバイケースです。
バックアップ体制
プロボノはボランティアなのでどうしても業務完了できない可能性があります。その場合は、有給スタッフでバックアップできる体制は作っておくことが必須です。
スキルへのリスペクト
基本は団体への共感があって、支援の行動として活動してくれるものなので、スキルへのリスペクトは当然忘れないようにしましょう。
品質担保
一方でお金を払って業務をしてもらい、品質を担保することとは、分けて考える必要も出てきます。お願いした業務が一定の品質基準に達していない場合は、きちんと指摘する必要もあります。どこまでをプロボノで対応するかということを、考えておいても良いでしょう。
受入現場の体制
今まで有給スタッフで対応していた業務をプロボノにお願いする場合、対象スタッフの人が自分の仕事の意義に疑問を持ってしまう可能性も出てきます。団体の全体方針、業務の全体感、場合によっては財務の状況なども含めて、スタッフの方々にプロボノの必要性を認識してもらう必要もあります。
プロボノ参加のメリット
私自身がプロボノをしていた経験上、する側にとっても、お金を得られなくてもメリットがあります。
それは、
- 充実感
- プロボノ仲間とのつながり
- 本業とは違う新しい世界
- 起業を志し、経営を学びたい
- 転職を検討している
などです。
色々な事情で、働く場として社会課題解決の場を選べない人もいて、そのような人に、参加する場のひとつとして、プロボノという在り方があっても良いと考えます。受け入れ側も過度な期待や過少な扱いをせずに、最低限のリスクコントロールを行って、色々な人に参加する場として、プロボノを受け入れても良いかと思います。