コミュニケーション
非営利組織の得意技「イベント」の効果をさらに高めるには
国内外問わず私たち非営利組織の多くは、イベントの企画・運営を得意にしてきました。事業や価値を社会や支援者に伝える手段として、またファンドレイジングの手段として広く浸透しており、その企画・運営における能力はかなり高いと思います。またイベントの種類も多岐にわたり、その数はおそらく数百を超え、日々新しい企画が生まれています。
今回はそうしたイベントを7つの類型に分け、それぞれの特徴を見ながら、効果をより高める方法について見ていこうと思います。
1.イベントには型がある~7つの類型
多種多様なイベントがありますが、今回それらイベントを7つの類型に分けました(※図の説明は後段に)。まずは、ぞれぞれの特徴について見ていきます。
〈非営利組織のイベント-7つの類型図〉
① 情報発信系
主にイベント参加者へ情報を伝えることをテーマとしたイベントになります。例えば、「現地駐在員○○が語る海外情報の今」といった事業報告会や、「教育系NPOトップランナー5人が語る日本の未来」といった普遍的なテーマに焦点をあてた講演会、シンポジウムなどがあります。
この特徴は、イベントの内容が組織のミッションや事業内容に近いことから、参加者として興味関心のある人が集まりやすい点です。
② 文化・芸術・スポーツ系
絵画や写真、音楽に映画、スポーツなどをテーマとしたイベントになります。例えば、「写真展~○○国の社会変動10年の歴史」や「○○映画祭2019」といった展示会などがあります。
特徴は、「①情報発信系」に比べるとイベント参加へのハードルは低く、ライト層が集まりやすい点です。また、スポーツ系であればチャリティーランなど小規模に開催できる一方で、写真展やコンサート、さらには映画祭といった大規模に開催する場合も多くあります。
なお、海外ではオーソドックスなファンドレイジング手法である「Pear to Pear(支援者が主体的に行うファンドレイジング)」は、この文化・芸術・スポーツ系のイベントと絡めて行う場合が多くみられます。
③ 飲食系
食事を中心としたイベントになります。いわゆるチャリティーパーティー(海外では”ガラパーティー”とよばれる)のようなファンドレイジング色の強いパーティーや、「○○ナイト~○○国の料理を食べながら語ろう」といったホームパーティー色のあるイベントなど。
特徴は、「②文化・芸術・スポーツ系」と同じように、参加するハードルが低い点です。
なお、チャリティーパーティーは、海外では一晩で数十億、国内でも数千万から億単位の寄付を集めるケースもあり、ファンドレイジングの手法としてかなり研究され実践されています。
④ 販売系
物品の販売を中心としたイベントになります。チャリティーバザーやフェアトレード販売会、チャリティーオークションなどがあります。
特徴は、イベント参加者の多くが、その参加している組織や活動のファン層、また商品に魅力を感じた関心層になります。
なおチャリティーオークションは、上記のチャリティーパーティーと組み合わせて行うとシナジー効果が高く発揮されやすいのも特徴です。
⑤ ホリデーイベント系
休日に屋内外で行われるイベントになります。例えば、「親子で参加しよう!○○が学べるオリエンテーリング」といった小規模のイベントや、「○○フェスタ in日比谷公園」といった複数のNPOがブースなどを出展する大規模イベントまであります。
特徴は、休日の遊びの延長で参加する人が多く、見込みとなる支援者と繋がり易い点です。
⑥ 体験学習系
事業の現場やスタッフとの懇親会など、参加者にとって”現場”に近づけるイベントになります。スタディーツアーなどがここにあたります。
特徴は、既存の支援者や事業に強く興味のある人向けになりやすい点です。
⑦ セレモニー・式典系
例えば、寄付者への感謝状の授与式や、活動に関する記者会見、また支援者を集めた感謝会などがあります。
特徴は、組織のブランディングの一環として企画されたり、支援者の方へ感謝を伝える場として開催される点です。
7つの類型図の説明
7つの類型について、それぞれの特徴でも触れましたが、非営利組織としてイベントを準備する際の「大変さ」という軸と、イベントに参加する人の「属性」つまり新規の参加者または組織や事業への興味関心が低いかどうか、という軸でマッピングしています。
もしこれからイベントを企画する場合には、組織のリソースをどの程度投入できそうか、イベント参加者のどの層にリーチできそうか、という観点で類型を活用すると良いかと思います。
2.イベントの目的を明確にすることが何よりも大切
次に、イベントの目的について見ていきます。イベントの効果を高める最大のポイントは「イベントの目的を明確化する」ことです。
非営利組織としては、そもそもミッションや社会課題の解決が最大の目的です。イベントにおいても、そうしたミッションなどを目的に据えるという話もよく聞きます。もちろん、その通りです。ただ、今回はもう少し絞って考えてみる、例えば、以下の3つの目的からチョイスして、目的を考えてみても良いかと思います。
目的① 資金調達
事前に目標金額を定め、その金額を達成するためのイベントと位置付けます。例えば、チャリティーパーティーやオークションなどが、この目的達成のイベントとして割と用いられます。
「お金」に焦点をあてているのが特徴になります。
目的② 関係性の構築
人との繋がりやその人の満足度、また習熟度などを目的にします。例えば、既存支援者の方々との繋がりを強化することを目的としたワークショップの開催や、ボランティアの方々のトレーニングを目的とした活動報告会の開催などです。
「人(との関係)」に焦点をあてているのが特徴になります。
目的③ 啓蒙/PR
社会への啓蒙、情報発信を目的にします。しばしば非営利組織でも行われているのが活動地域へのメディアツアーです。また、シンポジウムの目的をこれにすることもあります。
「情報(伝達)」に焦点をあてているのが特徴になります。
イベントの目的は、一つに絞ることはなく、必要であれば複数の目的を組み合わせて行うこともあります。
3.イベントの準備
非営利組織の多くは、イベントを定期的に開催しており、そのノウハウは非常に高いかと思いますので、ここでは要点だけまとめました。
① 目的/目標を決める
② 対象を決める
③ イベントの種類を決める
④ 予算を決める
⑤ 体制を決める
⑥ 日時と場所を決める
⑦ 企業スポンサーを募集するか決める
⑧ PR方法を決める
⑨ 寄付オプションを決める
⑩ アンケートとフォローアップの方法を決める
いかがでしたでしょうか。イベントを開催する際には、しっかりと目標を明確化し、組織の現状や戦略に基づいてイベントの類型を決めると、その効果がグッと高まるのではないかと思います。