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【AFP】イベントレポート:AFPカンファレンス2014

2014年3月23日から25日の3日間、米国テキサス州にある町サンアントニオで、第51回目となるAFPカンファレンス(AFP International Conference on Fundraising)が開催されました。AFPカンファレンスとは、世界中に170以上のチャプターと3万人を超える会員を持つAFP(Association of Fundraising Professionals)が主催する、年に一度のファンドレイジング大会です。マーケットプレイスには150もの企業ブースが出展され、北米を中心に、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、アジアなど、世界各地から4,000人近いファンドレイザーが集まるこの大会は、まさにファンドレイジングの最先端。
さらに今年は、日本ファンドレイジング協会の伊藤美歩理事による、サンアントニオ現地NPOツアーも実施され、素晴らしい先輩ファンドレイザーたちとの出会いがありました。初めて参加したAFPカンファレンスの、怒涛の4日間をレポートします。

General Sessions

General Session

ファンドレイザーになって3年目、ファンドレイザーという仕事に行き詰まりを感じている女性、ローリーの告白から始まる、舞台形式のセッションでした。
「ファンドレイザーに世界を変える力なんてないんじゃないか?」という彼女の悩みを解決すべく、ベテランファンドレイザーたちが、「ストーリーを語る」とはどういうことか、「ファンドレイジングの本質とは何か」を、熱烈に、時に体を張って、面白おかしく伝えるこの舞台からは、ファンドレイジングの長い歴史と同時に、これまでいくども苦境を乗り越えてきたであろう彼らの偉大さと、その彼らこそが世界を変えてきたのだという感動が伝わってきました。

Closing Session

「Measuring the networked nonprofit」の著者であり著名なブロガーでもあるBeth Kanter氏、社会を変えたい思いを形にするソーシャルプラットフォーム「Change.org」の創設者Ben Rattray氏、積極的なソーシャルメディア戦略を展開する「Save the Children」のCEO Carolyn Miles氏をはじめとする、豪華ゲストを迎えたクロージングセッションは、「非営利団体のソーシャルメディアの使い方について」がテーマ。
FacebookやTwitterの誕生は、個人の思いや声を世界に発信することを可能にしただけでなく、ネットとリアルの壁さえも取り払いました。ネット上の共感は、「視聴数」や「いいね数」だけではなく、実際の支援者数や寄付金額につながるようになってきています。ソーシャルメディアを使いこなすことで、取り組んでいる課題の解決にも、世界の変化にも、大きなインパクトを与えることができるという成功者たちのメッセージには、この世界はもっともっと良くなれるという力強い希望が込められていました。

Education Sessions

AFPカンファレンスでは、3日間で80以上のエデュケーション・セッションが開催されました。セッションは大きく8つのテーマ(キャリア開発、支援者との関係構築、最新事例とマネジメントの傾向、上級リーダーシップ、企業・財団との関係構築、マーケティング、大口寄付とキャンペーン、年間寄付とダイレクトレスポンス)に分かれており、多い時にはひとつのテーマで4つのセッションが同時に開催されます。オープンドア形式で、セッション中の出入りは自由ですが、どこの会場も立ち見が出る盛況ぶり。
参加者は、わからないことがあればセッションの途中でも遠慮無く手を上げて質問でき、現役ファンドレイザー、大学教授、コンサルタント、マーケター、ITベンター等、様々なバックグラウンドを持つ講師陣は、ジョークを交えながら質問に答え、更に会場に対して質問を投げかけて参加者を巻き込んでいきます。
英語がわからなくても、この空気感はわかります。日本からも、もっと多くの人が参加して、この空気を感じて欲しいと思う時間でした。

Reception & Party

International Attendees’ Reception

米国以外からの参加者が集まるこのレセプションでは、言葉の違いをもろともしない、各国ファンドレイザーたちのコミュニケーション能力に助けられ、様々な国からの参加者とフランクに交流することができました。
初めて出会った人たちと、同じ目標に向かっているんだという連帯感と、お互いをプロフェッショナルとして認め合う姿勢を持って話ができる、素晴らしいレセプション。この場に参加できた幸せと、日本やアジアにおける非営利セクターの現状についての関心と期待の強さを感じました。

After Dark Party

2日目の夜は、ホテルのホールを貸し切って盛大なパーティーが開かれました。
カンファレンスの主催者、参加者、ブース出展者など、関係者たちが一同に会する会場にはバーカウンターとDJブースがあり、ダンスホールではみんなで一緒にカントリーラインダンスを踊ります。
ふと隣を見ると、踊っているのは「The Power of Giving」の著者Harvey McKinnon氏。とても気さくな方で、すっかりファンになってしまった私は翌日早速本を購入。サインまでしていただきました。

NPOツアー

San Antonio Area Foundation

https://www.saafdn.org/
サンアントニオの町で50年前から活動しているエリアファンデーションでは、地域のNPOに対して「Support, Strengthen, Sustain(支えて、力をつけて、継続する)」という基本姿勢のもと、活動の成果を最大化するための様々な施策がとられています。
例えば、特定の課題解決のために、同じ課題に取り組んでいる複数の団体を集め、共通のゴールを設定するという試みがその一つです。時には、団体を立ち上げようとする人や小さな団体を運営している人に、すでに同じ課題の解決に取り組んでいる大きな団体への合併を進言することもあると言います。
全米第8位の大都市であるサンアントニオは、同じ市内でも、地域によって異なる課題を抱えています。その課題を、外部のコンサルティング企業と連携して慎重に分析し、解決することで最も大きな違いが期待できる課題を選びぬき「取り組むべき課題」を決定するのだそうです。
この試みにより、これまで高校中退者の減少や、動物殺処分の禁止に大きな成果を生んできました。長年成果を重視して地域課題に取り組んできたエリアファンデーションに、地域の支援者は「変化を生み出せる存在」としての期待と信頼を寄せ、遺贈を含む寄付の獲得につながっています。
彼らの「成果」へのこだわりから、「変化を生み出せる存在」でありつづけることが、支援獲得の成功の理由であり、エリアファンデーションの存在価値なのだと感じました。

San Antonio Symphony

http://www.sasymphony.org/
ランチには、地域での演奏会開催や、子どもたちへの教育事業に取り組んでいるサンアントニオシンフォニーのファンドレイザー、シンシアが同席して話を聞かせてくれました。
サンアントニオシンフォニーでは、演奏会の開催だけでは十分な数の支援者を集めることが難しく、教育事業にも積極的に取り組んでいます。シンフォニーは演奏会をやるべきだという意見も内外にありますが、音楽が子どもの教育に良い影響を与えるという理由だけでなく、幼少期から音楽に触れる機会を持つことで、将来のシンフォニーの支援者を育てることにもなるという理由から、実際にシンフォニーの演奏を聞く機会はもちろん、科学や数学と組み合わせて、まさに音楽を「学ぶ」機会を提供しています。また、より多くの寄付を集めるために、コンサートホールの椅子に名前を入れることができるプランや、楽団員が家に演奏に来てくれるプラン等、様々な特典をセットにした寄付メニューが用意されています。
「音楽」という接点だけに固執せず、教育との組み合わせによって接点を増やしたことや、特別感のある寄付特典を考えだしたことで、広く地域の人たちから支援を得られるようになったのだという彼女の話には、日本の団体も真似できる部分が多く、工夫する大切さを改めて認識することができました。

The Children’s Shelter

http://www.childrensshelter.org/
虐待やネグレクトを受けた子どもの一時保護施設であるチルドレンズシェルターでは、新生児から14歳までの子どもに対して、最長90日間の保護と、フォスターファミリー(里子の家族)やアダプトファミリー(養子先)のアレンジを行っています。
また、虐待やネグレクトにより受けたトラウマに対して、長期的なトリートメントプログラムを提供しており、虐待を受けた子どもが大人になって自分の子どもを虐待してしまうというサイクルの断絶に貢献しています。
施設は緑が多く開放的な作りになっており、工作室や図書室、ジム、学校など、目的にごとに建物が分かれています。また、その建物一つ一つに寄付者の名前が記されています。寄付者の中には企業の名前もありますが、個人財団の名前も多く目につきました。

Food Bank

http://www.safoodbank.org/
全米に約200あると言われるフードバンクの一つであるサンアントニオのフードバンクは、テキサス州南西エリアにおいて、食料の配給、教育、アドボカシーを通じて飢餓と戦うことをミッションとする団体で、エントランスには「Fighting Hunger…Feeding Hope」という文字が大きく掲げられています。
フードバンクの主要事業は、余った食料を回収して食料が不足している人や場所に再配給する、というもので、「収穫から口に入るまで」のすべての食料を扱います。規定外で通常の販路に乗らなかった農作物、鹿のような食べられる野生動物の肉、賞味期限間近の缶詰やスナック菓子、ソーセージなどの加工食品、カンファレンスなどで余ったランチパック(サンドイッチやフルーツ)など、実に様々な食料を回収、管理しています。アメリカでは、寄付された食品でトラブルが起きても食品メーカーは訴えられないという保護法があり、この法律が企業による食料寄付の後押しをしています。
他にもペットフードや、おむつ、文房具などの日用品も取り扱っており、それらがすべて超巨大な倉庫に格納されています。倉庫からは、直接トレーラーへの積み込みができる作りになっており、その様子はさながら大手流通会社のよう。しかし、その巨大倉庫にいっぱいの食料も、入ってくる食料がなければ10日で空になると言います。
フードバンクでは、Food(食料寄付),Time(ボランティア),Money(寄付),Voice(アドボカシー)の4つの支援を呼びかけており、回収する食料は金額に換算すると年間でおよそ100億円分。その管理や運営のために、約17億円の寄付と約5000時間分のボランティア支援を受けています。
サンアントニオのフードバンクでは、この主要事業を軸として、いくつかの革新的な事業や挑戦を展開しています。
一つ目はケータリングサービスです。地域のイベントなどにシェフを派遣してケータリングサービスを提供します。この事業では、使用する食材はすべて購入しますが、余った食材や料理はフードバンクが回収し、再配給することで主要事業と連携しています。
二つ目は受刑者の社会復帰プログラムです。窃盗などの軽犯罪で刑務所に収容されている受刑者を受け入れ、料理、倉庫管理、フォークリフトなどの職業トレーニングを行っています。スキルを身につけるだけでなく、人の役に立っているという実感を得ることが、社会復帰への重要なポイントになると言います。また、貧困や飢餓が犯罪の間接的な原因となっていることも事実です。受刑者が手に職をつけることは、貧困や飢餓から脱出することにつながり、飢餓と戦うというミッションを掲げるフードバンクにとって、重要な事業と言えます。
三つ目は工場排水の再利用です。近隣のサルサソース工場では、毎日大量の水が、野菜を洗うためだけに使われ捨てられていました。フードバンクはこの工場と交渉し、野菜を洗った排水をフードバンクの貯水タンスに送るパイプを設置。工場から捨てられた水を、倉庫の湿度管理や畑の野菜栽培に再利用しています。
他にも様々な取り組みが行われていますが、驚くべきは、そのどれもが、主要事業を継続していくために考えだされたアイデアから始まり、新たな事業として成立しているということでした。
終始笑顔で私たちを案内してくれたファンドレイザーのエリックは、本当に楽しそうに、熱心に仕事を語る方で、「この仕事が心から誇らいし大好きだ」と言う彼の言葉には、この言葉こそがこの巨大な事業を動かしているんだと思わせる力があり、心を打たれました。

まとめ

AFPカンファレンスと現地NPOツアーの全4日間を振り返って、何よりも印象に残っているのは、ファンドレイザーたちのコミュニケーション力の高さです。セッションのスピーカーはもちろん、現地NPOツアーで案内役をしてくれた各団体のファンドレイザーも、レセプションやパーティーで出会ったカンファレンス参加者も、例外なく最高のコミュニケーターでありストーリーテラーでした。彼らと直接話せたこと、ストーリーを聞けたことが、大変貴重な経験となりました。
また今回は、日本から8名が参加し、この経験を共有することができました。セッションの感想を共有し合い、疑問に思ったことを話し合い、理解できなかった英語も確認し合うことができたおかげで、一人で参加するよりも格段に理解を深めることができました。
素晴らしい仲間と、最高に刺激的な時間を過ごしたことで、新しく始めたいこと、進めたいことがたくさん見つかりました。一緒に参加した他のメンバーは皆、それぞれが、それぞれの立場で「SHIFT」をはじめていて、会うたびに新しい刺激を与えてくれます。来年は、もっと多くの方とこの経験を共有できることを願っています。

2014年4月 平尾 千絵

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